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つまらない書物
読む前にしっててほしいこと
別にこの文章は数少ないフォロワーでも、この世の中に溢れている自称読み物好きの人でもない自分のための書き物です。
共感してもらえたら嬉しいけれど、個人の解釈や感想を大きく含みます。
その点を留意した上で読み進めてください。
音楽の話
今回は好きな曲についての話をしようと思っています。理由は自分にバンドをやっていた経験があり、音楽について話すのが好きだから。
でも音楽って人によって受け取り方とか好き嫌いが顕著に出るので勧めにくいし、深く話しにくい。同じ熱量で話せる相手がいないので、ひたすら文字に起こして熱を逃したいだけです。
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クリープハイプ‐「ATアイリッド」
夢の中で会った貴女に恋をしました
寝言とおっしゃられても もう夢中なのです
最近よく会いにくる眠そうな人は仕事はしてるのかしら大丈夫かしら
貴女に会えるなら僕は眠り続けます
今日も風邪をひいてます
えー、そんなこと言うけどさ会うのは良いけどさ
目覚ましは呼んでるよ
夢見る僕の良い人はきっといつかは消えてしまうのでしょう
そんなのわかってますでもここが良いのです
瞼のむこうよりは
部屋中の時計は壊してニワトリはいない
やわらかなベッドの中で二人きりです
いいかげんに目を覚ましなよ電話が呼んでくれるうち
に
夢見る僕の良い人はきっと愛想つかしてるのでしょう
そんなのわかってますでもここが良いのです
瞼のむこうよりは
確かめたくて頬っぺたをつねって少しも痛くなかったけど
湖ができて あふれ出したよ瞼のむこうがわに
夢の中で会った貴女に恋をしました
寝言とおっしゃられるように まだ夢の中です
この曲は3rdシングルの「憂、燦々」にカップリング曲として収録されている曲です。意外にも作詞は尾崎世界観(Vo,Gt)さんではなく、長谷川カオナシ(Ba)さんです。
長谷川カオナシさんの歌詞は「かえるの歌」や「グレーマンのせいにする」などの様に妖怪のような不思議なイメージの曲が多い印象があります。
しかしこの曲は夢の中でしか会うことができない女性への淡い恋心を歌っており、凄く大衆受けしやすい印象を受けます。そんな中でもカオナシさんの曲という雰囲気を明らかに纏っているこの曲が僕はとても好きです。
ちなみに、この曲は瞼を意味する英語の「eyelid」と新世紀エヴァンゲリオンに登場するATフィールド(超強い盾みたいなもの)をかけており、夢の世界と現実世界を隔てる壁が瞼だということです。とどこかのインタビューでカオナシさん本人が語っていました。
この曲の魅力を構成や歌詞から言語化してお話したいと思います。
独白から始まる二人の会話
この歌の中での登場人物は「僕」と「貴女と呼ばれる女性」の2人です。
この二人の会話をカオナシさんと尾崎さんで分けて歌うことで演じています。貴女に会うためなら全てを捨て、邪魔する物を取っ払って彼女と居ようとする「僕」とそんな彼の向こう見ずな態度を心配する「貴女」。
どちらの視点もあることで男女問わず心に染みる歌になっていると感じます。
寝るという行為に重なる言葉
言葉遊びがとても秀逸で毎回脱帽させられるクリープハイプの歌詞ですが、この曲にもそれが含められています。5つほど絞ってお話してみようと思います。
1つ目
「寝言とおっしゃられても もう夢中なのです」
この歌詞全体が夢の中での出会い、恋であることとよく使われることわざの「寝言は寝て言え」を掛けているものだと思います。ここで言う寝言は本当の寝言と戯言という意味での寝言の2つを指していると思われます。
そしてそれに続いて「夢中」という言葉が使われています。夢の中の女性に夢中という最高にかっこいい言葉遊びが見せつけられており、何度も聞くうちにずっと好きなフレーズになりました。
2つ目
貴女に会えるなら僕は眠り続けます
今日も風邪をひいてます
典型的な仮病の嘘ですね。
彼女に会うために会社か学校かを休み、寝てまでして彼女に会いたいということでしょう。私達のリアルな生活での話を歌詞にされると親近感が湧き、心奪われますね。
しかし、休んで寝続けても翌朝になれば目覚ましが鳴り現実に戻されてしまう。そんな彼は1つのことを恐れるが故に寝続けています。
その理由が続きで語られています。
3つ目
夢見る僕の良い人はきっといつかは消えてしまうのでしょう
そんなのわかってますでもここが良いのです
瞼のむこうよりは
「僕」は彼女が自在に操ることのできない夢の中に出てくる存在であるために、いつ消えてしまうか分からないけれどいつか来る彼女が消える日に怯えています。
そしてそんな彼女に縋ることが良くないことだと分かっていても、瞼の先にある現実から逃れようとして、寝続けているということです。
このやるせない恋心がたった2つの文で表現できるカオナシさんの脳みそが気になって仕方ないです。
4つ目
確かめたくて頬っぺたをつねって少しも痛くなかったけど
湖ができて あふれ出したよ瞼のむこうがわに
夢かどうかを確かめるために頬を抓るという行為は物凄くよくある表現です。ただ普通は不思議な出来事や信じがたいようなおかしなことが現実で起きたときに使ったり、余りにも嬉しいことが現実で起きたときに夢じゃないことを確認するために使うのがよくある技法ではないでしょうか。前者では痛くて涙が出てしまうし、後者は痛いよりも嬉しさが勝り、涙が出るでしょう。でも、この曲では今の状態が実は現実であることを祈って頬を抓っています。そして痛くないという事実が彼女の存在が夢だということを改めて突き付けてくる。
その悲しさで涙が出る。
この斬新な表現であるはずなのに、受け入れさせてくるような言葉が本当に素晴らしいと思います。
5つ目
夢の中で会った貴女に恋をしました
寝言とおっしゃられるように まだ夢の中です
1つめと同じ文が続くと思いきや、最後が「まだ夢の中です」と変わっています。彼女に夢中であること(幸せな気分でいること)を、夢の中にいるという表現で表しています。
ただのおしゃれな掛詞だった歌詞を改めて意味を持たせる作詞はファンとしては本当に尊敬以外の気持ちが出てきません。(元バンドで作詞していた身からするとこんなキレイにまとまった歌詞を書かれると悔しいですが)
このように素晴らしい構成と歌詞によってこの曲は形作られています。
自分の中ではクリープハイプの曲の中で1位2位を争うぐらいに好きな曲なのですが、中々人に勧める機会がなかったので紹介できて良かったです。
今日話したかったメインはここまでです。
続きは妄想のような解釈が垂れ流されているものになりますので読みたい人だけ読んでください。
超余談
ここからは僕がこの曲をちゃんと意味を理解して聴けるようになった頃の感想を話していこうともいます。
当時の僕が聞いたときには、キャバクラなどに通う男とキャバクラ嬢の話だと思ったんです。
この考えは自分の中で定期的に「馬鹿げている」という意見と「そうかもしれない」という意見がせめぎ合うので余談に書くことにしました。その意見の根拠は以下の通りなのですが、
曲の序盤での女性の口調から感じる雰囲気
夢や時計、ニワトリなどが隠喩に見える
ベッドという表現から感じるもの
この2つが主な理由です。
男の何の仕事をしているか分からない様子や女性の口調から感じる印象や夢という抽象的な表現はかなり夜の雰囲気を漂わせますし、時計やニワトリといった二人の関係を阻害するものに関しても何か別のものを示しているのではないかと考えてしまうのです。一番下は僕がエロガキなだけかもしれませんが。
男性側の気持ちが強い且つ、女性との間で恋心が実る可能性がほぼありえないストーリーに、大体当てはまるような歌詞だからこそ、色々と考えてしまうのかもしれません。オタクとメイド喫茶の店員さんとかでも成り立ちそうですしね。ただタイトルに込められた意味を考えるとそのままの意味で捉えるのが一番いいのだろうなと感じてしまいますね。
考えなかったら何も生まないのでこの意見も1つの経験として書いておいてよかったです。
最後に
ここまで読んでいただいてありがとうございました。ここまでで3300字くらいあったらしいので本当に読んでいただけて嬉しいです。また気分が乗ったら書くので気分が乗ったときに読んでください。ではまた。