「おだやかの民」が武者震いで一生を終わらせないために
「挑戦」という言葉が苦手だ。「戦い」を「挑む」?ムリムリ。
そもそも競うことが好きじゃない。
「勝つ」ことによって自分が誰かを「負かす」なんて、「自分が負かした人」がいる世界で暮らすなんて、申し訳なさすぎ。というより怖すぎ。
盛者必衰って私習ったよ、燃やされるでしょ、城。
敗北は悔しいより前に虚しいし、人の成功は喜びたいし、
選ばれなかったところには執着せず、ご縁がなかったですねと笑いたい。
そう、悔しさがモチベにならないのだ。
人生には身もすくむ緊張感の中で本領発揮しないといけないタイミングがある。ある、けど……
イヤ!!逃げたい!!やっぱ帰ります!!!!!
でもこのままじゃ……武者震いで一生が終わる……!
もしかして「挑戦したいことはあるけど、ハラハラすることや争いごとが苦手で一歩先に進めない」と、私と同じ悩みを持つ人って結構いるのかも…?
そう、私たちに名前をつけるなら「おだやかの民」。
我々にもやりたいことはあるし、人生進めたいわけで……!
今回、そんな民でも挑戦を続ける抜け道はないかと自らの経験を通して考え、5つに分けてまとめてみた。
どこかにいる「おだやかの民」のお役に立てたら嬉しい。
\「おだやかの民」でも続けられる挑戦のコツ5選/
1. 意志に頼らず、寝起きの自分を仕留める
2. モチベ保険をつくる
3. ライバルではなく仲間、勝ち負けではなく貢献
4. 自己肯定感を成果で左右させない
5. 決断の合言葉「どうする自分が好きか?」
そして…「おだやかクライシス」の対策
1.意志に頼らず、寝起きの自分を仕留める
「年も明けたし、今年の抱負を10個書いたぞ!これ壁に貼って頑張ろ!」
……気づけば半年後。もはや景色となった貼り紙を視界の隅で無視しつつ、夕方を迎えていた私。1日が全然始まらない。新しいことを始めるとかのレベルじゃない。
あれやばい、このまま一生終わるわ!
さすがに危機を感じたので何がやばいのか整理したところ、どんなに決意しても寝てる人間は何もできないということと、寝起きはやる気ないに決まっている、ということに気づいた。
つまり寝起きでトイレに来た自分、ここをピンポイントで仕留めればいいのでは?という案(案?)が浮かんできた。朝一番に見るトイレットペーパーホルダーの上に「細かすぎる生活指示書」を貼ったのだ。魂の5%くらいをトイレットペーパーホルダーの上に分けておき、自分が起きるのを待ち伏せするという作戦である。
この指示書、自分を起きるたび何もかも忘れていると思うことが肝心。歯磨き、洗顔、保湿、コンタクト、カーテン開ける、お茶飲む、着替え……全力アシストの激甘メモ。朝これを見たら無心で、書いてある通りに動く。
そこに、「今日も1日頑張ろ!」や、「気が重いけど…」などという感情の動きは一切必要ない。ふと鏡の中で保湿している自分と目が合い、あれ?勝手に1日始まってる?その瞬間、心がちょっとだけ弾む。
起きて、準備して、やるべきことの前にスタンバイできたらそれだけで挑戦の半分くらい終わってる気がする。マジで。
「挑戦を始めるまでの単調な作業」は眠い時には覚えていられないし、寝る方を優先したくなる。これを自覚し、思い出す補助輪をつける。
それが習慣になれば「挑戦のルーティン化」も夢じゃない……かも。
今まで私の行動、「顔洗お〜!」「着替えよっと!」「でかけよっと!」とその瞬間のやる気に頼ってたことが判明。だからこそなんのやる気も出ない日は「あの決意はどこへ…」と布団で苦しんでたよ。もともと意思弱いの自覚してるのに、その意志に頼ってたってどういうことなの、私。
意思に頼らない、指示書に頼る。こんなことに気づくまでが長かったなぁ……。
挑戦って派手に聞こえるけど、超地味なんじゃん!!
2.モチベ保険をつくる
「見られていないところでこそ技を磨き、来るべき勝負に備えるぞ…!」
……そんなことは無理だった。見られていなければサボる。暗いところに置かれた人間が眠るのと全く同じ原理、という結果が自分調べで出たので、どうにかして「見られている」状況を作ることにまず注力することにした。
決まった場所でもいいし、オンラインの集まりでもいい。
そこに「会いたい!」と思える人を能動的に作ってしまうのが「モチベ保険」である。相手に迷惑がかからない程度に心にしまっておくのもよし、友達になってしまうのもよし。継続して通いたい場所に心を許せる人が1人いるだけでストレスはかなり軽減される。
人間以外のモチベもあり。自分をおびきよせるお菓子とか。
とにかく今日のやる気を過信しないこと。我々は少年漫画に出てくるモチベが無限に続くキャラではないので、明日この心の炎が燃えてない可能性が70%くらいある。「やるべきこと」に対して無の感情になっても、そこに行きたいと思える理由を作っておく。
つみたてだと思って人間関係を丁寧にやっておくと、飽きたな〜しんどいな〜やめたいな〜と思い始めた頃に、すっかり心がその場所に頼ってた、それがモチベ保険。(ちょっと怖い)
注意:私はこの技の最大級チートである疑似恋愛モード【そこの誰かを好きだと思い込むことで身だしなみを整え遅刻を防ぎ意識高く過ごし成長っぷりを見せつける】を使って美大受験を乗り越えたけど、自分の心を見失うのでやめた方がいいよ!!
利害関係抜きに「寂しくなるからやめないで」と言ってくれる人がいるのは強力な命綱。「もし私がやめたいって言い出したら止めて」と、周りにふれまわっておこう。
3.ライバルではなく仲間、勝ち負けではなく貢献
「ふ〜ん君って思ってたより強いんだね。楽しくなってきた♪」
…楽しくない楽しくない楽しくない。いや怖い、いますぐ逃げたい。
だれかをライバル視した瞬間心が萎縮する我々は、まずウチらって敵じゃなくて仲間じゃねってところから考えてみる。
みんなでダンスフロアで踊ってるとイメージしてみると、ダンスバトルは緊張するかもしれないけど、参加者がいるからそのフロアが存続している。
踊り続けてる人がいるおかげで手も抜けないし、レベルも上がっていく。
休憩してる時には盛り上げてくれる。
「勝ち負け」って言葉が苦手な人は、「貢献したい」はどうだろう。
このフロアを盛り上げる手伝いをしたい、人を楽しませたい、泣き止ませたい。新しいやり方もうまくいった、などなど。
「負けた…」と思ったら、相手の貢献で自分もなにか恩恵を受けてないか、考えてみる。
例えば、自分の弱点がよくわかったとか、後に続きやすいとか。皮肉じゃなく本気で「あざっす!」と思えたら最強おだやかメンタルの完成。
ちなみに真似された!という方、それはあなたのライバルではなくファン、むしろ子孫!
子孫の方が繁栄するよね〜。でも先駆者はいつだってレジェンド!
前例を作れたなって思えたら今後も善い生き方を見せ、お手本となってゆくのだ。
というわけで、競合やライバルは「同じフロアを沸かす仲間」説である。
わざわざ苦手な闘争意識燃やさなくていい。それぞれのフロアを盛り上げてこうぜ!!
4.自己肯定感を成果で左右させない
「自己実現のために夢を追いかけよう!」
………そんなモチベは私たちにはない。できればずっと寝てたい。
ちなみにこの発想でいくと、挑戦の失敗=自己実現の失敗。
つまりアイデンティティの崩壊。
自己肯定感が地に落ちてしまう、これはヤヴァイ!
(この崖っぷちリスクが大好物で続けられる人はそれはそれですごい)
挑戦する対象と自分の価値を切り離して考えてみる。
うまくいったからってえらくなるわけじゃないし、
失敗しても自分の価値が暴落するわけじゃない。
例えば一緒にいる人。
挑戦を続けるうちに、人間関係も変わっていくかもしれない。
自分はこんな成果を出したよ!あなたはこんなことができるからすごいよね!と、いっときの成果をものさしにして惹かれ合った同士は、
結果を出し続けなければ離れることになるかもしれない。
お互い何にもしてなくても一緒にいたいと思える同士、
負け続きでも帰れる居場所、ホームスイートホームを作ろう。
脳内で、いまの価値基準が全然伝わらないイマジナリーおじいおばあを用意して、その存在だけはずっと自分の味方でいてもらう。
「あんたが何してるかよくわからんけど、元気でやってるならそれでいいよ」と定期的に言ってくれる人を心に住まわせる。
思いっきり「やるをやる」場所と、肩肘はらない場所。
両方のバランスをうまく取っておくことが、挑戦につきものの「失敗」や「挫折」を乗り越えられる鍵になるかも。
あなたの成果は、あなたの全てじゃない。だからやみくもにそれを使って人とコミュニケーションしなくていいんだよ!!
なにこれ、セルフメンタルケアかな……?
5.決断の合言葉「どうする自分が好きか?」
「あなたはどうしたい?決めていいよ。」
……えーっと正直どっちでもいいです!!!あなたがいい方でいいです!!
むしろ違う意見が出てきてぶつかる方が絶対絶対いやで〜〜〜す!!!!
「これがいいと思うんだけどどうかな?」「こっちで大丈夫そ?」と、上目遣いで提案されると0コンマ1秒で「ハイ!!」と尻尾振ってついていく、根がフォロワーな私たち。
子供のころ「決めさせてもらえなかったコンプレックス」が癖になっている。優しく、でもちょっとだけ強引に誘導されたい、この煩悩で地獄まで連れて行かれそう。
しかしこの煩悩、恐ろしい副作用がある。それは秘技「人のせい」。
自分で選んでないから、失敗すれば全て強引に決めた人のせい。あの時誘われてなかったら、あんなタイミングじゃなかったら、あんな言い方されてなかったら……
でもね、「ハイ」って言ったのじぶんなんだよね〜!!
そんなおだやかの民にも決めねばならんという瞬間が訪れる。
私がいつも思い浮かべているのが「どうする自分が好きか?」という言葉。
どうする「べき」なんかじゃ考えられない人、分かれ道で悩んだ時は全パターン想像して、この自分が好き〜♡という方を選ぶ。
成功した自分!など結果のイメージと自己肯定感が結びつくのは前の項目で書いたようにキケンなので、結果ではなくそこに向かう過程で判断。
たとえ誰かにがっかりされても、失敗しても、笑われても、自分だけはその選択をした瞬間の自分が好きだった。それが「人のせいにしないおまじない」になるかも。
以上が、おだやかの民でも続けられる挑戦の工夫5つ、なんだけど……。
ここにきて「おだやかクライシス」に陥りました
思い出したことがある。
美大予備校で絵が少し上達した時、私より遥か先を行く人に言われた、
「うわ〜、悔しい〜!」という言葉。
その時の衝撃と、浮かんできた大きな疑問が忘れられない。
えっと、悔しさって、そんな簡単に表現できるものなの?
しかも、悔しいと思った私本人に伝えられるって、一体どういうこと……?
さらに先日、別の同じもの作りをしている友人に
「あなたのこの作品が良かったと伝えられるようになるまで1年かかった」と言われた。その時の真剣な顔も、脳裏に焼き付いてしまった。
かれらの顔は、真剣で、おだやかなんてものじゃなくて、悔しさを表現するのは全然簡単なことじゃなくて、その気持ちにどれだけ本気で向き合ってきたかということが、ありありと伝わってきたのだ。
あれ……?ここまでかなり優雅ぶってきたけど、もしかして、悔しさと向き合うってことは、つまり負けを認めるってことで、私はそれをしないように……して……??(息継ぎ)負けたと自覚したら、心がぶっこわれるかもしれなくて、そんな薄っぺらいプライドで自分を保たせてたことに気づいてしまうのが怖くて、もしかして私、悔しさを感じるかもしれないフラグが立った時点で、全力回避してきたんじゃ……???
悔しさがモチベにならないのは、悔しさを素通りしてきたから……?
「フロアを沸かしてくれてありがとう!」「素敵なダンスだね!」と感心したり応援するばかりで、気づいたら長いこと観客席から動いてなかった。
「あなたはこれができるからすごいね!」と近づいてきた人の期待だって裏切りたくないし、たまたま出せた成果で褒められて、鼻の下伸ばして自己肯定感上げてきたのは自分じゃないか。
「おだやかの民」のため、いかに平和的に人生を進めるかについて書いてきたけど、これってもしかして、負ける可能性を最初から消去法で選ばないようにしてきた、最強の負けず嫌いのためのライフハックなんじゃないか……??
🕳
……ん?なんか今、深淵を覗いたらヤバイもん見た気がするけど、あれ?何も見てないよね?
フ、フタをしよう。今まで丁寧に書いてきた記事に盛大にセルフツッコミを入れて終わらせるような爆弾投下はやめよう。待って!行かないで!自分そういうのじゃないんでって顔しないで!!私だけ真性負けず嫌いだった〜みたいなオチやだよ!!!
ま、うん、そだよね、(咳込み)この世には悔しさと正面切ってぶつかれる、人もいるみたいだな……うん……頭抱えるなぁ……
でもさ?負けを認めたくない、発生させたくない、速攻土俵から降りたくなっちゃう、真剣に戦ってる人の脇でヘラヘラしながら「も〜そ〜ゆ〜のやめよ〜よ〜笑」なんて言っちゃう、私みたいな、人……!!たとえ臆病!弱虫!逃げ腰!真性負けず嫌い!……って言われたとしても、そんなやつが、それでも人生を進められる方法って、きっとあるよね。ねぇ、あるよね……??(書いてて苦しくなってきた)
ちなみに私「嫉妬をエンジンに頑張る人ってすごいなって思うけど大変そう〜笑」っておだやかマウント取ってる人には「オイ!必死でやってる人を!ばかにすな!!」って思うし……。
いやっ同族嫌悪とかじゃない、ない。えっおだやかマウントに対してさらにマウント取ってるって?もうダメかも、おだやかさって逃げなの?そんなのやだよ〜!!
やめたくないことをやめないために
だって、無理して強くいようとして苦手な嫉妬に真っ向からぶつかって心を壊してしまうことは、本当にあるもん。一度壊れてしまった心は、つなぎ合わせることはできても、元には戻らないことを知ってるんだもん……っ!!
悔しさに向き合おう!向き合えるメンタルを作ろう〜!強くなろう!!
そんな予定調和で救いのないことを言うつもりはないから安心してほしい。
悔しさに向き合ってこなかった人とかさ、そういうの疲れちゃった人とか、やわらかい心の持ち主なんよ、逃げとかじゃなく、自分のハートも他人のハートも傷つけないように、全員を大切にできる、優しい優しい人なんよ………。悔しいって感情が好きじゃないって人もいるしさ、好きじゃないので持ちません、そういう選択もあると思うんよ……。
だから、さっきの私みたいに、「じぶんは悔しさにも向き合えない人間なんじゃ……?」とおだやかクライシスに陥らないでほしい。先に陥っておいたから、私が。
何にどれだけ悔しさを感じるかとか、どんな風にバネになるかなんて、結局本人にしかわからない。
嫉妬しようとしなかろうと、やる気があろうとなかろうと、私たちがすることはどんな風に始めて、やめないように工夫するか、きっとこれだけだ。
やめたくないことを、やめないために。
今日のモチベに関係なく始める仕掛けと、やめない仕掛けと、
挫折した時の絆創膏を自分の中に用意しておく。
そんな工夫でもしかして、挑戦は続けられるかもしれない。
書くだけなら簡単って言われたらそれまでかもしれないけど、
じつはこの記事も、そんな工夫のおかげで完成したんです。
ヤッタネ!✌️
(文/イラスト:はましゃか @shakachang )
※この文章は、チームブリヂストンがnoteとコラボして開催する「#挑戦している君へ」コンテストの参考作品として主催者の依頼により書かせてもらったものです!ありがとうございました!!