正しく見えた未来~取り残された人々01

おう、ひさしぶりだな。

あけまして、おめでとさん、と。

いや~、なかなか寒かったよ。

昨晩なんて、頬がつっぱっちゃってね。

お、悪いね・・・

今日も差し入れかい。

ホットコーヒーに・・・これは・・・肉まんか?

助かるよ。

暖かいものってのは貴重だからね。


さてと・・・。

肉まん食べながらで恐縮だけど、例の話を始めようかね。

うちらがあんたらと分けられている理由についてな。


前に話した感染症のあとのことさ。

ある履歴情報が証明書として発行され始めた。

あんたも知ってると思うが・・・そう・・・ワクチン接種証明書だ。

例の感染症に対抗するためのワクチンを接種していることの証明書として機能することが当初の目的だったが、そのうち全種類のワクチンが対象となった。

普通、証明書ってのは何かを保証するために証明する書類だ。

例えば、中学卒業証書だったら、初等教育課程を修了していることを保証するもので、その責任が卒業証書を授与した中学校にあることを示す。

別の例えでいえば、ダイヤモンドなんかの宝石も鑑定書という名の証明書があって、厳格な基準で鑑定できる鑑定士がその品質を保証するものだ。

ところが、だ。

ワクチン接種証明書に関して見てみると、何だか変なんだ。

たしかに、あらゆる証明書はその履歴だったりやってきたことの証しを記載してるものではあるし、ワクチン接種証明書もその点においては合っている。

しかし、他の証明書で保証できること、つまり恒久的なメリットが、ワクチン接種証明書には存在しないんだ。

ワクチンを打ったからどうだ、というのが存在しない。

それは証明書と言えると思うか?

俺は思わんね。

あんたの持っているカードに紐付いているワクチン接種証明データを見せてもらえるかい?

なるほど、28回もやってるのか。

例えば、だ。

もう廃止されてしまったが、昔あった運転免許証という証明書はだなぁ・・・

取得した直後は初心者のカードなんだ。

んで、1年経って違反とかしてなければ、一般のカードに格上げされる。

さらに3年経って違反してなけりゃ、優良カードに格上げされる。

これはそれぞれ、技能と知識はあるけど危ないかもしれないという証明、まぁまぁなれてきている証明、全然違反しないからこれからも違反しないかもしれない証明となるわけだ。

じゃあ、ワクチン接種証明に戻ってみてみようか。

28回打ったその記録は何を証明するものなんだ?

あと何回打てば何を証明できそうだろうか?

これは何もおちょくっているわけじゃない。

冷静に考えてみると、なんだかしっくりこねぇなぁって話さ。

じゃあ、ワクチン接種の効能から考えてみるかい?

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