正しく見えた未来~流行り病からの生還~03

このプルタブ、ちょっと固いな。

っとと・・・

勢いよく開いたもんだから、中身が吹き出しおったわ。

いや~、しっかし、この時期のホットコーヒーは染みるよなぁ。

おまえさんの気の利いたチョイスに感謝だ。


そんじゃぁ、続きを話そう。

あれから2年半が経った頃の話になるんだが・・・

徐々にワクチンというやつが普及していて、大人から子供までだいたいがワクチン接種済みになった。

そんな頃になると、まことしやかにあることが噂されていた。

そう、薬害だ。

みんなに使ったワクチンは最新式のワクチンで、けっこう古くから研究されていた手法で生成された。

しかし、だ。

死人が出た。

最初の頃は死人が出ても「因果関係が不明だ」とされ、ワクチン事業としては何の補償もせんかった。

だが、数百人、そして千人を超えてくると、そうも言ってられなくなってきた。

最初に補償確定となったのは90代の婆さんだ。

ところが、補償の理由は「因果関係が否定できないから」なんだよな。

どういうことか理解できるか?

これはなぁ・・・

医学や科学では「メカニズムをハッキリさせられないから、関係ないとも関係あるとも言えません」っちゅうことなんだよ。

政府は専門家をかき集めて「専門家会議」やら「分科会」なんてものを開催して政治的判断の理由にしてきた。

もちろん、みんなに接種を勧める時の政治的判断にも使ったんだ。

当然だが、勧める時は「科学的知見」とやらで裏付けできていると説明していたわけだ。

ところがぎっちょん!

誰も何もわからんかったわけだ。

特定の条件下における作用については論文なんかでわかったんだろう。

それは事実だとは思う。

だが、一般条件下における作用については論文で考察されていなかったんだろうな。

接種後翌日に自宅で死んだとか、接種して数時間で死んだとか、老いも若きも男も女も死んだわけよ。

しかも、だ。

全て遺体で発見されてくるもんだから、経過をみることなく結果だけが増えていく。

その死までの経過は証言なんかの状況証拠しかない。

だから、専門家と呼ばれた者達は推測するしかない。

推測するって言ったって、これまで自分達が見てきたものに類するようなデータも何もないわけだから、もう適当なことを言って時間が解決することを祈るしかない。

適当なことを言うっていったって、立場や政治的な見方ってのが危ぶまれてはいけない。

あいつらは考えたんだ、必死にな。

んで、出てきたのが「因果関係不明」という言葉なわけだ。

その言葉が一人歩きをし始めるまで、そう時間はかからなかった。

なにせ、省庁のホームページに記載されたり、分科会議事録のまとめサイトに記載されたりといった形で世に出てしまったからだ。

一般人から見たら、偉い専門家があらゆる手を尽くして全ての観点から見た結果の「因果関係不明」なわけだ。

しかし、実際はそんなたいそうなもんじゃない。

専門家集団の脳みその範囲で見れるだけのちっぽけな世界の観点で見てわけわからんから出た「因果関係不明」ってことさ。

もちろん、この本当の意味での「因果関係不明」ってのを理解している一般人も少なからずいたし、数名の大学教授達や、臨床医なんかもいた。

だが、彼らの発した言葉は「陰謀論」としてフィルターされ、世間には届かないように封じられた。

それでも抗って世間に危機を伝えようと頑張った者もいた。

そんな彼らを専門家や政府は「反ワクチン」や「陰謀論者」と呼び、邪教徒だと世間に説明したのだ。

極めつけの言葉は何だったかわかるか?

「科学的でない」だ。

一方で、人口統計やらなんやらの社会数字でワクチンの良さを語る医者なんかも出てきた。

そうした医者は「これが科学だ」と言いながら、自分達の見方に誤りがあるなら科学的なエビエンスでもって反証するのが反対意見者達の責任だと言った。

だが、落ち着いて考えてみてくれ。

自分達が誤っているかもしれないということについて、他人に尻拭いをしろなんて、ずいぶん無責任なことを言ってるじゃないか。

ちなみにだが、この頃になるとこの最先端ワクチンの悪いメカニズムが徐々に明らかになってきていた。

まぁ、少しマユツバものだったり、本当に限られた条件での検証結果だったりといったものも少なくはなかったがな。

それでも、数字に振り回されているような自称科学者達よりはよっぽど理にかなった内容のものではあったことは、みんな理解していた。

デマや迷信みたいな情報を食い止めてみんなが路頭に迷わないようにしようという意気込みは倫理的に正しいとは思う。

だが、そこまでしてデリケートに扱うべきと考えていながら、大きな声を使って本当に正しいかもわからない情報を流布することは、倫理的に見てどうなのかなと疑問を感じたよ。

この時点でおよそ3年ほど経過していたが、結局はなんにもわからなかったんだ。

お、そういえば・・・

科学科学と大きな声で叫んでいた者達は、この世界的な問題をどうやって解決にもっていくか理解していないようだった。

この問題の出口はとてもシンプルなんだ。

そう、おまえさんももう理解しているだろう。

全ては政治的判断によって終いとなる。

そこに科学は関係ないんだ。

当然、科学者や専門家と呼ばれる者達からの意見を吸い上げることはするだろう。

だが、結局は政治家が方針を出すだけで全てが終わる。

そういうものなのだ。

そこに正しさがあろうとなかろうと、政治家だけが出口を決めることができる。

あの時代は、そこのところを理解している者があまりにも少なかった・・・。

さてと・・・

今夜は冷えるな。

おまえさんも早く帰って暖まりんさい。

ああ、コーヒー、ありがとな。

また何か聞きたくなったら、連絡くれや。

ん?

俺か?

俺はいつもの寝床に帰るさ。

なにせ、俺はカードを持ってないからな。

ああ、いいんだいいんだ。

気にするな。

あ、そうだ・・・

次はカードの話をしてやっても良さそうだな。

楽しみに待っとけよ。

んじゃあな。

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