SHADOWTIMES 2012/10/18 Vol.1
《shadowtimes》Post.1
「ひと夏のレッスン」港千尋
気温はまだまだ高いけれど、朝晩は過ごしやすくなってきた。これからは、日毎に柔らかくなる光のなかで、夏の思い出を整理したり、秋に入る準備をしたりする時間。もちろん秋の味覚も待ち遠しい。
「カッセル ドクメンタ会場近くの公園。夏の日差しもすこし和らいできた。」
「メイン会場「フリデリチアヌム」の夕暮れ」
夏の思い出…といえば、今年は5年毎にドイツのカッセルで開かれる現代芸術フェスティバル「ドクメンタ」と見る機会があった。戦後まもなく始まって、すでに13回目になるそうでカッセルの町に入ると、いたるところにdOCUMENTA13のロゴが見える。頭文字を小文字に、その後を大文字に逆転したのは今回が初めてだが、いろいろな意味で「反転」あるいは「転換」を起こそうという企画者たちの目論みが、ロゴにも表されていたのかもしれない。
「中央駅の映画館「バリシネマ」。青写真のようなポスターは、福島の放射能汚染を正面から扱った映像作品「Radiant」。今回はイギリスがベースのグループ「otolitho」制作のこの映画の制作に協力、出演している。 」
転換というのは、たとえば今回はカッセルと同時にアフガニスタンのカブールやエジプトでも同時期に展覧会を開催し、それぞれの地域のアーティストとの協同制作を促すようなプログラムが目立った。それはやはり「アラブの春」にはっきりと表れたような、歴史的な変動を受けて、西欧の巨大国際展として何ができるかを考えたひとつの結果なのだろう。さらに言えば、あらゆる地域で進むグローバリゼーションに転回点はあるのかどうか、あるとすれば現代アートはそれをどのように考えているのか、という問いもそこには含まれていると言えるだろう。
ここから先は
¥ 200
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?