おしりの悩み ~痔ろうとボク~ vol.2
<あらすじ>
前回、天一のラーメンを食した後
激しい腹痛に見舞われたカゲピ―。
そのまま肛門周囲膿瘍を発症。
おそるおそる、初めての肛門科を受診。
そこには想像を絶する、痛みがあった。
この物語は、とある体験記を元に作成しています。
痔瘻に悩む方を始め、おしりに不安を抱える人々の
お役に立てたら幸いです。
それでは続きからどうぞ。
第二章:痔ろうの発症
出血
ゴムゴムのおしりになったボクに、ダメージはなかった。
看護師さんが丁寧にガーゼを当てがってくれる。
どうやら暫くは出血が続くらしい。
肛門周囲膿瘍は膿が溜まっているわけですから、痛みが出るんです。
溜まれば溜まるほど痛みは強くなります。
そのため、切開して穴を開け膿を出せば痛みが緩和されます。
痔ろうが出来ている可能性もあります。痔ろうは膿の通り道です。
痔ろうは自然治癒はしません。”手術”が必要になります。
一旦、抗生物質を出しておきますので様子をみましょう。
痔ろう・・なんて厄介そうな病気なんだ。。
この時のボクは、自分はもう治ったつもりで他人事だった。
とりあえずその日は、通院を理由に会社を休み
パチンコへ向かった。
排膿されたおかげで、しこりもずいぶんと小さくなっていた。
翌日、昨日の切られた部分を触ったところ
確かに何かおしりに何かできてる。おできのような?感じ。
でも思ったほど痛くない。
多少の痛みはあるが、さほど気にならない。
信じられないくらい、おしりが軽い!
ここ数日の重りと痛みが失せ、気分は晴れやかだった。
とはいえ、まだパンツにしみる程度には
膿と出血が見られたため
昨日もらったガーゼを当てがい、出社した。
午後、上司とミーティング中に事件は発生した。
椅子に座って30分過ぎたあたりだろうか?
なんだかおしりに感じる違和感。
少しだけおしりを浮かし、ズボンの上から手を当ててみると…
…ぬちゃッ!
という感触が指先に伝わってきた。
これは…間違いない…血だ・・っ!!
ボクはハッと気づき、上司の話を遮りその場に立ち上がった。
指先だけじゃなく、手のひらで抑えてみる。
とても冷たい感じが全体に広がった。
手のひらは赤く染まっていた。
よく見れば手のひらだけじゃない。
座っていた黄色い椅子は、
ボクの血液を吸えるだけ吸い、太ったヒルのように
赤茶けた色に変色していたんだ。
ただならぬ、ぼくの様子を見た上司は
ことの状況を察し、会議を中断した。
ハンカチを運転シートに敷き、ボクは急いで帰宅した。
このスラックスもお釈迦かな…。
ナプキンは正義
さて、問題がある。
傷口自体は、実はそんなに痛くないのだが
出血量が意外にも多かったこと。
じわじわと量が出続けているようで、座っていると
寝ている時よりも特に酷くなっていたみたいだ。
この溢れる出血を抑えるためには・・アレしかない
会社からの帰り、家には立ち寄らず、
ボクは薬局へ寄った。
さり気なく陳列コーナーを除くと
CMで放送されている聞き馴染みのある商品から
あまり聞いたことのないメーカーのものまで
多種多様、いろんなタイプが並んでた。
あまりに無知だったボクはお店の人に訊ねる。
こういうとき、悩みや恥ずかしさから、キョドらないことが大事。
薬局には博識の方が常駐されているので
自身の現在の症状と状況を伝え、
どのようなタイプがオススメなのかを
速やかに決断し立ち去ることが重要なのである。
あ、誤解のないように言っておくけど、
ボクはおしりで悩むみんなの気持ちを代弁するために
アドバイザーとして様々なキャラを演じているだけだから。
要らない詮索はしないでね? ね?
薬剤師である人におすすめしてもらったのは
『ロリエ_ふつうの日用_20.5cm』 だった。
すばやく会計を済ますと
車内の後部座席へ駆け込んだ。。
10年の歳月
肛門周囲膿瘍から大出血期間を経て、10年の月日が流れていた。
あれからおしりの状態は
どのようになっていたかというと・・
相変わらずだった。
あの日以来、大きな出血を迎えることはなかったものの、
実は定期的に
痛い→ 膿たまる→ しこりできる→ 排膿する→ 苦しみの解放
このローテーションを繰り返しており、切開されたおしりの横穴は
ここ10年の間一度も塞がることがなかった。←
最初は違和感感じてたけど、そもそもおしりなんて
中心部でないかぎり、さほど触ることもないため
あまり気にしなくなっていた。で、気づけば10年です。
まぁ、たまーに爆発したり
排膿期間が長かったりと、なんやかんやはあったけど
自分で対処できるレベルだったんだ。
それがなーんにも出来なくなってしまったのが
2023年の5月初旬のことだった。
(なんか今回の違和感は、いつもより長い…?)
遠い記憶に重なる、ずんずん響く重い痛み。
触ると、しこりがパンパンに膨れ上がっていた。
しこりがここまで膨れるのは久しぶりだった。
その理由はすぐ分かった。
排膿が進んでいない・・!
そうなのだ。
この10年の間、あれだけ定期的に開放と閉門を繰り返していた
横穴ちゃんが全く機能していないのだ。
穴が塞がらないこと自体に、疑問を抱いたこともある。
いつまでこの穴は開いてるんだろう…?
でも膿が出るからいいことなのかな…?
このまま横穴は塞がらないのかな…?
そんなに大きくないからいいけど…人前には出せないよ…?🙅♀️
みたいな感じで。ちょっとだけ気にしていた。
今回はどうやら門が完全に閉じられてしまい、
いつの間にか自動ドアと化していったドアが、頑なに開かないのだ。
嫌だなー。
でもいつ排膿されるかもわかんないし、、病院…行くかぁ。。
10年の月日というのは残酷なもので
ボクがあれだけ「死の痛み」と評した切開の痛みを
あろうことか、忘れていたんだ ー。😱
我が名は”痔ろう”
なんだか10年前にも来た覚えがある。
当たり前である。
間違いなく、ボクは来ていた。10年前、ココに。
病院内は10年前と変化はなかった。
相変わらずお年寄りをたくさん抱え、忙しそうな病院である。
同年代の人に肛門科に通っていると思われたくないので
丁度いい塩梅だ。
今日の診察目的を伝えると、10年前のカルテデータは
ちゃんと残っていたようで、話が早かった。(診察券は紛失したけど、、)
10年前、ぼくのおしりを切り開いてくれた先生との再会だ。
そういえばこんな眼鏡をかけてた気がする。
ボクの記憶がほとんどリセットされてたけど、
先生はまるで昨日診察をしました、と言わんばかりに
流暢で丁寧な説明をしてくれた。
「病状が続く」ようなら来院して欲しかった
痔瘻とは膿の通る「道」ができること
これは「道」が出来ていると考えて間違いない
「肛門周囲膿瘍が頻出」する高さから見て可能性が高い
痔瘻は放っておくと「ガン」になるリスクもある
痔瘻は「手術」でなければ治らない
要約すると大体こんな感じだ。
つまりボクは、肛門周囲膿瘍が発症した時点で
実は痔ろうも発症していた可能性が高いってこと。。
先生曰く、肛門周囲膿瘍の発症者の8割近くは
痔ろうも併発してるんだって・・(先に言って欲しかった…)
とっくにボクのおしりは病魔の巣窟になっていたんだね…
そんな訳で10年の時を経て、痔ろうと向き合う闘いが始まります。
このお話は、次回へ続きます。
応援…してね?