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【実録】子供に会社を継がせるために社長がした5つの取り組み

中小企業経営者の多くが望むことは「子供に自社を継がせる」だといいます。
株式会社クレタ(北海道で軽自動車専門店を3店舗展開。年商30億円)の創設者、石亀一昭社長もその1人です。
1人息子の裕晃氏は当初は会社を継ぐつもりはなく、北海道大学に入学し、研究者の道を志していたそうです。
石亀社長は息子の意思を尊重しながらも、ゆくゆくは会社を継いでほしいと考えていました。しかし、本人にそのように言うことは一切なかったそうです。今回は、どのようなアプローチを試みたのかご紹介します。

石亀社長は息子の裕晃氏を後継者にしたいという想いはありましたが、決して強制するわけでも、息子に直接跡を継げと言ったこともありません。
やってきたのは、自分が経営している会社がどんなところかを知ってもらうための機会を設けること、会社の将来を一緒に考えることの2つです。

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そして、上記の5つのステップを経て、息子の裕晃氏は会社を継ぐことになりました。裕晃氏は現在、営業部長として会社を引っ張る中心的な存在となっています。


会社の成長と子供に会社を継がせるためのアクション年表

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ステップ①自動車業界で働くこと決めたきっかけは、取引業者の招待旅行

石亀社長は、取引先からタイへの視察旅行に招待されたとき、当時大学生だった息子の裕晃氏を行かせることにしたそうです。
裕晃氏が将来の進路についても考え始める頃に、ゆくゆくは会社を継いでもらえることを期待しつつ、まずは「同業の経営者が多く参加する場で良い刺激を受け、自社の業界についてより深く知ってほしい」と考えたのです。
とはいえ、いきなり大人ばかりの場に誘っても断られると思い、誘い文句を用意しました。
「普段の生活ではまず会えない、レベルの違う人が参加している。そのような人と話せる機会は良い経験になる。また、一緒に行く社員を元気づけて欲しい」
その言葉が響き、裕晃氏は旅行に参加します。そして石亀社長の狙い通り、裕晃氏は「この旅行は、自動車業界に入ろうと思ったきっかけになった」といいます。
この旅行ではバンコクの郊外に行く機会がありました。そこは、つい最近電気が使えるようになったエリアで、子供たちは自分で作ったキーホルダーを売って生計の足しにしているという貧しい場所でした。裕晃氏はその姿に、これが現実なんだ、と感じたそうです。
車を持つことで移動距離が広がれば、生活が変わり、経験できることも変わっていく。車は人の将来の可能性を広げる、多くの人が自動車に乗れる世界を創りたい、そう考えた裕晃氏は、自動車業界で働くことを決めたそうです。

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ステップ②海外ビジネス視察ツアーに親子で参加し、ビジネスに対する考えを共有

次なる一手は2014年に船井総研が企画した、海外ビジネス視察ツアーです。石亀社長と裕晃氏は親子で参加しました。
このツアーは1週間かけて、アメリカの東海岸(ニューヨーク・ボストン)の優良企業などを視察するもので、親子は長い時間を共有しました。忙しい石亀社長は、普段は子供と一緒にいる機会もあまりないため、このツアーは一緒にビジネスを学び、価値観を共有できる貴重な機会だったそうです。
「同じものを見て、子供が何を考えているかを知ることができ、良い経験だった」
と語っています。
また、このときに視察した教育関連のTeach For America、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学などから、後述する、自社の事業理念作成の根幹となるものが誕生しました。
その後、裕晃氏は大学院を卒業、自動車業界で働くことを決めていましたが、クレタに入社するのではなく、自動車メーカーに就職します。

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ステップ③自社を継ぐ最大要因となる、社の理念・クレドを一緒に作成

2016年、クレタは成長して規模が大きくなっていたことから、石亀社長は改めて理念、ミッション、クレドが必要だと感じ、船井総研が企画した「2泊3日の理念・クレド作成コース」に申し込みました。
自動車メーカーに就職してた裕晃氏は、休みを取り、石亀社長と一緒に参加しました。「理念を作ることで、クレタが何を実現するために事業をしているのか明確になりました。この理念を作っていなければ、会社を継いでなかったかもしれない」と裕晃氏は言います。
このときに出来たのが「軽自動車の販売を通じて地域社会の教育水準のレベルアップを実現します」という理念です。詳細はこちらをご覧ください。
この理念・クレド作成を通じて、「何をやりたいか、自分の一生の仕事としてやりがいが見えてきた」と裕晃氏は感じたそうです。

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ステップ④同業他社の優良企業を見学し、将来像をより具体的に

裕晃氏はその後も、自動車メーカーに勤務しながらも土日の休みで同業の優良企業を見学しています。
石亀社長が、非常に業績が伸びている企業数社を見学させてもらえるよう便宜を図り、会社見学の場では会社を見るだけでなく、その企業の社長や将来の後継者と話すこともできたのです。
そして、下記のことについて聞くことで、多くの学びを得ることができたそうです。
・どうやって業績を伸ばしていったのか
・後継者の息子は、なぜ会社を継ごうと決めたのか
・息子は会社を継ぐにあたってどんなことをしているのか
・事業承継の計画はどのように立てているか

こうして自社の将来像のイメージ等を固めていったのです。


ステップ⑤会社・仕事を見せて自社理解を深める

これら4つのステップを踏むための足掛かりとして、石亀社長は、裕晃氏が小学校3年生くらいから、継がせるための種を撒いていました。土日などは、会社に来させるようにしていたのです。
裕晃氏は、「会社が成長していく姿に好感を持てました。社員たちが活き活きと一生懸命に働く姿を見て、仕事に対して良い印象を持ちました。その雰囲気が心地良かったです」と語っています。
小さい頃から社員と接することで、馴染みやすい土壌を整えていたのです。

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ついに会社を継ぐかどうかの決断

2018年、裕晃氏に大きな転機が訪れます。
勤めている自動車メーカーより、「エンジンを製造しているタイの工場に出向しないか?」と打診されたのです。
これは、将来を期待されている人材が受ける人事でした。大きなチャンスの一方で、一度出向すれば赴任期間は長いものになります。
自動車メーカーに残るか、会社を継ぐかを決断する必要がありました。
メーカーに残り、学生のときに思った、発展途上国の人たちがより多く使えるような安価で優良な車を作る道を選ぶのか、会社を継いで父と一緒に作った理念のもと「軽自動車の販売を通じて地域社会の教育水準のレベルアップを実現」を目指すのか。
悩んだ結果、裕晃氏は「自分しかできないことをやろうと思った」と、会社を継ぐことを決断したのです。


2020年3店舗目を出店!会社を継ぎ、事業を通じて地域社会に貢献する

2019年裕晃氏は自動車メーカーを退職し、クレタへ入社。
今年は新たに3店舗目を出店するなど、営業部長として、会社の成長に大きく貢献しています。
石亀社長によると「息子が入社して良かったことは多くあります。歳も近いですし、前職での経験も活かしながら新卒の育成・活躍をしてくれています。また、私が苦手なデジタル化の促進でも力を発揮してくれています。息子のおかげで、ZOOMやチャットワークなどが普段から使えるようになりました。
私はカンの経営でしたが、裕晃はデータドリブン経営です。例えば、売れる曜日を分析して、売れる曜日に有力な営業マンがいるようにして成果が出やすくするなどをしています。他には、理念経営の浸透など、社長の私ができないことを補完してくれています
「クレタは、軽自動車販売専門店として、北海道の軽自動車の普及を目指します。軽自動車は、低コスト・低燃費で日常の維持費の負担も軽く、その分他に使えるお金(可処分所得)が増えます。可処分所得を最大限にして、夢や目標の実現のために使えるような、北海道を実現していきます」
同社の理念を実現するために、息子と二人三脚で走り続けます。

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