生真面目息子、涙の理由
夏休み。小3息子の宿題はそれなりにある。
というか、自分の頃よりだいぶ多い。
算数ドリルやら漢字の書き取りやら音読やらローマ字やらリコーダーの練習やら。あー、あとは自由研究もある。
算数ドリルと漢字は毎日やらないと片付かないのでやっているが、家ではなかなか集中力が持続しない息子、9時から始めて昼までかかる。
ダラダラ宿題をする息子を見て、いつもなら「早くやっちゃいな〜」と言うだけなのだが、なんとなく今日は気分が良かったのか、
「休み休みやったらいいよ」
と声をかけた。
私も集中力が全くないので、何事もひとつのことにじっくりと取り組めない。
本を読み、スマホを見て、家事やってストレッチして、それを同時進行でちょこちょこやってる。仕事をしていてもそんな感じ。
なので、漢字の書き取りをガツッと終わらせたら少し休み、計算ドリルに取り組んだらどうか。休み休みやらないと集中力は持たないよ、と声をかけた。
すると息子が泣き出した。
息子の涙の理由は想像がつく。でもそれは、なるべく本人の口から聞きたい。
自分の感情は自分の言葉で伝えられなければ意味がない。
「なんで泣いてるの?」と訊いてみた。
息子、沈黙の後、「わかんない」と答える。
しばらくやりとりするも、何と表現すればいいのか分からない様子。
私「それは、嫌な気持ち?いい気持ち?」
息子「それだったら、いい気持ち」
私「いい気持ちも、いっぱいあるよね。楽しいとか、嬉しいとか、安心した、とか」
息子「安心した気持ち」
私「じゃあどうして安心したのかなぁ?」
息子「うーん、わかんない」
またしばらくやり取りしてみたけれど、どうにも分からないらしい。
息子の感情について、なるべく断定したくない。息子の感情と私の見立てに差異があっても、息子は否定できないだろうから。
曖昧に「うん」と答えてしまうだろうから。
私「おかあさんのさ、“こうじゃないかな〜”って思ったことを言っていい?」
息子「うん」
私「息子が疲れてるのに、『勉強が全部終わるまで休めない、全部やらなきゃ』と思いながらやってるところに、おかあさんが『休み休みやりな』って言ったからじゃない?」
息子「うん、それそれ」
息子が「頑張ってやらなきゃ」と思いながらやっていることは分かっていた。
集中力が持続せず、やらなきゃいけないと思いつつやれないことも。
息子は生真面目なのだ。
決まりごと、ルール、「やらなきゃいけないこと」には従う人だ。
学校でもそうだ。
息子は学校のルールに従う。やらなきゃいけないことを生真面目にやる。
それは生真面目な性格だから、というだけではなく、周囲の大人に喜ばれるためでもある。先生が大好きなのだ。
息子は決められた係を毎日真面目にこなす。もともとやっていた係の他に、別の係も兼任している。
その係が忙しく、メンバーを増員することになったため、自ら立候補したのだ。
息子は先生のために働くことが大好きだ。
息子は先生のお手伝いをすることが大好きだ。
それはとても素晴らしいことだと思う。
そして、息子は忙しそうだ。
係の兼任で、息子の休み時間は潰れてしまう。
遊ぶ時間も、ぼーっとする間も無く、係として立ち働く間に休み時間は終わってしまう。
私は「係は他のメンバーもいるのだから、あなたひとりでやることないんだよ」と話す。
「でも○○さんが、やらないんだよねぇ」
と、息子は生真面目に仕事をこなす。
「宿題は休み休みやってもいいんだよ」と言われて泣く息子に、私は話した。
「あのね、係のお仕事も、息子ひとりでやらなくてもいいんだよ。
『やらなきゃいけない』と思いながら全部やってたら、お仕事いっぱいで疲れちゃうでしょ。
毎日疲れてたら、学校が少しずつ重荷になっちゃうでしょ。
そのために、係はひとりじゃなくて何人もいるんだからね」
「今日は係の仕事をやらない、って決めてもいいんだよ。『昨日やったから、今日は○○さんやって』って他のメンバーにやってもらってもいいんだよ」
「先生に相談してもいいんだよ」
息子はまた泣き出した。
生真面目に頑張っているのだ。
夏休みになってから、息子が早起きになった。
毎朝、5時半とか6時に目が覚めて、ひとりで本を読んでいる。
学校がある日は7時になっても爆睡している。
私は休みならいくらでも寝ていたいタチなので、なんでそんなに早く起きるんだろうと不思議なのだけど、同じようなタイプの夫によれば、「休みは心が軽いから起きられる」のだそう。
なるほど…
息子はたぶん、係活動が少し負担なのだ。
ルールや「やらなきゃいけないこと」にプレッシャーを感じている。
そのプレッシャーがない休みの日は、心が軽いから早起きできるのだ。
「あのね、自分の気持ちは自分で言葉にできるようにしなきゃダメだよ。
学校の道徳では、人の気持ちを考えるけど、まずは自分の気持ちだよ。
自分の気持ちを自分で分からないままだったら、人の気持ちなんて想像できないんだよ」
「だから、『今、自分はどんな気持ちかな』ってちゃんと考えて言葉にする練習をしないとね」
息子と話すことの中身が高度になっているな…。母も日々修行。