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珈琲の大霊師264
それは、牧場と言うには開放的過ぎた。柵が無く、全ての家畜は放牧されていた。
丘の上にはなだらかな傾斜が広がり、背の低い草木がその肌を飾っていた。そこに、牛や山羊や羊が好き勝手に闊歩している。全部で30頭程の群れのようだ。
一見無秩序に見えるが、よく見ると犬が上手く立ち回って彼らを誘導してるのが分かる。
「ボクの故郷でも、山羊は飼ってた気がします!あ、羊もいたかもしれません」
モカナが嬉しそうに目を輝かせる。モカナの故郷が山だとすれば、家畜に飼うのは想像に難くない。
犬がいるなら、飼い主も近くにいるだろう。そう睨んだジョージが、群れの中に目を凝らすと、三角の変わった帽子が見えた。
麻の服に、動物の皮で作ったらしい三角帽子、日に焼けた栗毛の青年。
ジョージ達が近づくと、犬が警戒するように走ってきたが、青年がすぐに気付いて呼び戻した。
「ジル!」
ジルと呼ばれた黒毛の牧羊犬は、すぐさま踵を返し、犬と入れ替わるように青年が近づいてきた。
「ふ、麓の人ですか?」
「麓と言やあそうか?俺達はガクシュから来たんだ。ちょいと、ここら………いや、あんたに聞きたい事があって来たんだ」
おっかなびっくりといった様子で、体を縮こませる青年を与しやすしと見抜いたジョージは、途中で方針を切り替え、青年への集中攻撃へと舵取りした。
「麓の連中のな?作る野菜がどうしてあんなに美味いのかなぁと思ってな。あんた、知らないかい?」
闇雲に知ってる人物を探しても、答えに辿り着かない時がある。それは、答えが集団で秘匿されている場合である。
そういう時は、一番切り崩しやすい所から切り崩す。
青年は、何故か昔自分がオオカミの群れに囲まれた時のことを思い出したのだった。
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