閉じ込められた男
俺の名前はフリードリヒ・フェンファン・ゴッホだ。嘘だ。
なぜ俺はお前の心に話しかけられてるかって???
知りたいか???
知るか。こっちが聞きたいわ。
そんなことより、どうにかしてくれ。俺はこの通りを歩いているときに、肩がぶつかった婆さんに睨みを効かせた瞬間に、このポスターの中に閉じ込められちまったんだ。
目があった瞬間に、婆さんの目が光ったから、多分あいつ魔女だな。
油断したぜ〜〜〜。
最近は魔女が少なくなったって聞いてたし、街で遭遇しても何もしてこないらしいからラフにしてたんだよ。
そしたらこのザマだ。婆さんの肩が細くて、背が低いもんだから俺の胸のあたりに当たって結構痛かったんだ。
それで「んだ、てめえ!!!」って思わず前歯を出してキレちまった。
くそーーーーーー。。。。
てかその話は今どうでもいいんだよ。なんか知らんが「だれかなんとかしろ!ここから出せ!」って念じてたら、お前だけが振り返ったんだよ。
他のやつは一切見向きもしねえ。聞こえたのかもしれないが、こんな顔で閉じ込められちまったもんだから、無視されたのかもしれねえ。ちくしょう。
頼むぜ、お前さんよ。なんとか俺をここから出してくれよ。
え、そんなこと言われても困るって???
いや、そこをなんとか頼むよ。俺にぶつかった婆さん魔女を見つけ出して退治するとか、弟子入りしてお前も魔女になるとかよ?
そんな義理ないって???
......そう言わずにさ、頼むよ。もちろん礼はするよ。
信じてもらえないかもしれないけどな、俺の家はかなりの金持ちなんだよ。
資産家の一族なんだ。ほら、あれ、ヨーロッパで有名な一族とかって言われんだろ?それだよ、ロスチャイルド家!
到底信じられないって???フザケンナよーーー。ロスチャイルド家は狙われっからほとんど素性を隠してるし、街を歩くときは絶対にそう思われないように変装してんの!だから俺もこんなチンピラみたいな格好な訳。
それでも信じられんって?
・・・しょうがねーなーーー、分かったよ。
おい、お前。この俺が閉じ込められたポスターを剥いでくれ。連れて行ってやるよ、ロスチャイルド家によ。
俺がここに閉じ込められてもう1週間経ってるんだ。流石に家族が心配して探し回ってるはずなんだ。それに俺の爺さんは魔女好きでその辺の事情に詳しい。昔付き合ったことがあるとか言ってた。
とにかく!お前に道案内すっからよ、連れて行ってくれ。
それで証明してやるよ。ついでに頭金も用意すっから。まずは10万ドルでどうだ??
それでいいだろ???
いやでも、魔女倒せるか分からないって???
んなこと知るかよ、とりあえず声が聞こえるお前になんとかしてもらわねえと俺は一生このままだ。しかも下手すっとポスター剥がされて破かれたり、落書きされたり、腐るかもしれねえだろ。
そんなの恐ろしいわ。
なーお前、どうせ金に困ってるんだろ?このまま家に帰っても変わらないつまらない毎日が待ってるんだったら、こっちの方が面白いじゃん。
っていうか、金持ちになれるし、魔女になれかもしれないんやで???
「・・・。」
やっと決心してくれたか!
じゃあ決まりだ!
あー、おいそっと剥げよ!
破れちまったら、どうなるか分からねーんだからなっ!
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