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わたしのペンネーム


ここでいう「ペンネーム」とは、翻訳書を出すときの名前(訳者名)のこと。わたしのそれは結婚前の本名である。

翻訳学校時代の同門からなる翻訳仲間を見てみると、わたしのように
・結婚前の名前を使っている人、
・普通に本名そのままの人、
・本名のアナグラム(文字/音の並べ替え)にしている人、
だいたいこの3パターンのいずれかに当てはまるようだ。

いまは副業可の会社も珍しくないようだが、20~30年くらい前までは、勤め人にはたいてい「副業禁止」というルールが課せられていた。なので会社バレを防ぐため、勤め人との二足の草鞋をはいている翻訳者はアナグラム派の人が多かった。

また、会社バレということでなくても、周囲に翻訳をやっていることをあまり知られたくない人はアナグラム派だったかもしれない。

さてわたしの場合、初めての訳書が出たときには勤め人ではなかったので、普通に本名そのままでも問題はなかった。

でも、迷わず結婚前の名前にしたのは、それが単なる翻訳者志望の若者だったころの自分の名前だからだ。

あのころのわたしへ、よかったね、また訳書が出せたよ。
背中を押してくれた友だちへ、聞いて! また訳書が出せた。
応援してくれた家族へ、訳書出ました。
叱咤激励してくれた恩師へ、どうにかまた訳書を出すことができました。

おかげさまで、なんとかいまも翻訳を続けられています。ありがとうございます。

訳書が出るたびにそう思う。

だから、当時のわたしを知っている人に気づいてもらえますようにと願いながら、あのころの名前をペンネームにしている。




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