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東京って普通に寒い

お酒を買いに出たときにふと、「寒いな」とおもってからつるつると考えとか書きたいことがたくさん流れ出してきて、忘れてしまわないうちに、思考をかき集めながら家に帰ってきた。

そう、東京も寒いんだな、とおもったのだ。
当たり前だ!と思うだろう、でも、私の地元は毎年ふざけているのかというくらい馬鹿みたいに寒くなる。これでもかというほど冷えて冷えて、雪をたんまり積もらせて、それからたらたらと曖昧に春がやって来る、という気候だった。氷点下の一桁代なら「まだあたたかいねぇ」なんて冗談のように半ば本気で言い合って、-20なんてのがくると「ついに本気を出してきたな」と皆嬉しそうに噂するような場所だった。そんな場所から都会にぽんと引っ越してきた女は、多少なりとも寒さへの自信があったのだが、東京ふつうに寒い。

今日の気温は14℃。
数字だけ見て舐めていたのだけれど、ダウンを着ても少し肌寒いくらいに外は冷え込んでいる。
東京に冬がきた!と騒ぐにはかなり気が早いけれど、私の地元はもうすぐ雪が降る頃なのである。
なんだか、自分が情けないような、寂しいような、よくわからない感情に囚われて、youtubeで「津軽弁 ネイティブ」と調べて無意味な安心感を得ようとしている。傍から見たらシュールでくだらないお笑いのように映っているかもしれない、でも私は至って真剣でこれがいわゆるホームシックというものなのかもしれない、といまも考えを巡らせているところだ。

私にとって冬と大雪は切っても切り離せないし、雪が降らずに冬が来ることが未だに信用できずにいる。雪が降らないのなら、都会の人にとっての冬とはなんなのだ。
朝になれば布団から顔だけを出し、凍った窓ガラスが目に入ると「やばそうだな・・」と覚悟を決めて布団を這い出て、うだうだ言いながら雪かきをして、やっとこたつで一息、と雪国の朝にはこれだけの情報量がある。嫌だ嫌だと散々言っていた寒さも雪も全て、離れてしまうと感傷に浸らせてくる一要因になるだなんて想像したこともなかった。
私は、このまま記憶が上書きされ続けて都会の人間になることが心底怖い。
私は地元に恨み辛みも含め、思い出の全てを残している。だから、あの場所にとどまっている私自身を忘れ去ってしまうことが怖いのだ。

嘘みたいに全員ださくて、コミュニティが狭すぎるがゆえの最悪な環境で、娯楽も特にないあんな場所で何年もたのしく生きていた私と言う人間のプライドがある。
あんなところで死なずに生きてきた自分を忘れないでいてあげたいから、何とかして地元の冬を見に帰ろうと思う。

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