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君はなぜ国連職員を目指すのか?
1.はじめに
今回はこのタイトルでnoteを書きたいと思います。今回もある大学で国連セミナーの講義に呼んでいただいたので、その準備noteです。実は似たような内容の一部をnoteを1か月ちょい前に書いたのですが、その時の講義の内容のメインは僕の国際的な廃棄物管理で、そのアイスブレーク的にお話ししたのが「なぜ君は国連職員になりたいのですか?」。今回はこっちが主軸になってくる講義なので改めて、このタイトルで色々と思いを書いてみたいと思います。
2.「国際」へのあこがれ
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国連セミナーシリーズの授業に出ている皆さんは、将来国連職員になりたいと思っていたり、国際的な仕事に興味があると思います。なぜ、皆さんは国連職員になりたいのですか?なぜ国際的な仕事に就きたいのですか?
国際的、International、という響きは、日本人にとって憧れであったり、素敵な感じであったり、なんだか普段とは違うステージと思うことがあると思います。100%日本人の私ももちろんそうでしたし、未だにその感覚はあります。でも国連職員として仕事していると、その考えは日本人的な考え方であることをつくづく実感します。この日本人の感覚は、そもそも島国である事、現代文化のベースを築いた江戸時代約250年間は鎖国であり、全ての文化が国内で生まれたものである事、それが日本人の体に隅々まで、そして精神の奥底までにしみ込んでいるのが今を生きる私たち日本人だと思います。
でも、この日本人感覚の国際的感覚は、世界標準からするとかなり独特です。皆さんの中でアメリカに行かれた方いると思いますが、アメリカは普段の生活がそもそも国際で、国際だから特別、と思う人はいないし、欧州でも様々な状況はあるものの、基本的には外に開かれた文化を持っている国々が多いです。それと国連職員はもちろん、私が一緒に仕事する政府関係者や専門家は、国際であることが普通のため、特段、これが国際的な仕事である、と言う認識はしません。
でも、日本は違いますよね。国内と国際をきっちり線で分ける。僕は普通に勉強している、私は国際関係の勉強や仕事をしている、と言った感じです。日本のありとあらゆる組織には、国内部門と国際部門がきっちり分かれていますよね。たとえ国内の仕事であったとしても、わざわざこれは国内の仕事です、と言い切らなくても、国際的に開かれたものにするだけで、その仕事の価値も上がっていくと思います。この日本の良き慣習をSDGs時代は物壊していく事が必要です。でも間違わないでください、日本の素晴らしい文化はそのまま生き続けなければなりません。それを保ちつつ、国内に閉じないことが重要です。
3.自問自答から抜け出せるか?
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さて、もう一度質問します。なぜあなたは国連職員になりたいのですか?なんで国連職員になりたいと思ったのですか?国際的な仕事だから?開発途上国支援だから?世界をまたにかける仕事ができるから?なんだかかっこいいから?などいろいろあると思います。皆さんは何で国連職員を目指しているのですか?
もう一つ別な質問をしましょう。今あげたいくつかの回答例の場合、国連でなくても良いのではないでしょうか?国際舞台には、国際的なNPOが多く存在していて、貧しい国の現場で人道的な活動や教育活動、環境改善活動など様々な活動を実施しています。また、民間企業も、自身のビジネスを展開していくために現地の社会的価値を高めていくためのプロジェクト活動を実施している例もあります。さらに、インターネットを通して開発途上国のNPOや個人のプロジェクト活動を支援できることもできます。国境を越えたSDGs活動や地球規模課題解決への仕事は、国連だけの仕事ではありません。それでもなんで皆さんは国連職員になりたいのですか?
では少し質問しながら掘り下げていきたいと思います。
①なぜ国連職員になりたいのですか?→開発途上国支援の仕事がしたいから。
②なぜ開発途上国の支援の仕事がしたいのですか?→貧困に直面している人たちを助けたいから。
③なぜ貧困に直面している人たちを助けたいのですか?→日本人のような先進国の受忍だけが幸福になるのは不平等だから。その不平等さをなくすために国連職員として開発途上国を助けたい。
無理やりまとめた感はありますが、質問はエンドレスになるかもしれませんし、永久ループにはまる可能性があるのですが、究極な目的の一つは、開発途上国の人たちも幸せな人生を送ってほしい、ということではないでしょうか?幸せな人生は80億人いれば80億通りの幸せな人生があると思いますが、それぞれの人たちが自分自身で考えて自分自身の人生をより良くし、幸福になる事、これが人間としての究極的な目的ではないでしょうか?人間として、そして国連職員として他人に対して利他的に自分自身の持っているすべてを出し切って、それを必要としている人たちを支えていく、その思いが自分自身の本質となった瞬間が、国連職員としてのスタートラインを切ることができます。
4.ではどうするか?
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学生のうちは、単純に、国連職員になりたいからというシンプルな理由で、国際的に関するありとあらゆる知識や経験を身に着けて、語学力も磨く、と言うのを目的とするのは良いと思います。でも、国連職員になることを自分の人生の目標と固定してしまうと危険です。国連職員はあくまでもツールの一つであって、国連職員の究極的な使命は、世界中の人たちを幸せにすること、です。それを自分自身の中で掘り下げていき、勉学だけでなく自分の中も磨いていく事が重要です。
それに国連職員は新卒では絶対になれません。社会が求めているニーズに応えられるような職歴も必要です。学部卒業後、一般社会に出て世の中のために働くこともいいですし、大学院に進学するのも良いでしょう。NPO就職もいいと思います。それと外務省や環境省などの省庁に入るのも非常に良いと思います。いずれにせよ、国連職員になるには職歴も重要です。
私の時代は違いましたが、今であれば、例えば30歳になるまでは自分の思うように過ごしてよい、と決めてもいいかもしれません。でも好き勝手に
と言う意味ではなく、30歳になったら自分自身を世の中のための奉仕に身をささげよう、と目標を定めて、その一つが国連職員にはなりますが、30歳になるまで必要最低限の勉学・職歴・それを組合わせた経験を磨いていく、と言うのも良いと思います。
5.日本人は超恵まれている
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もう一つここで重要なお話しをしたいと思います。その話のスタートはこの言葉から:「日本人に生まれただけでものすごく恵まれた環境を手にしている」。とは言うものの、それは色々あります、日本国内でも。コロナが直撃して2年半、皆さんも学校に行けずオンライン授業ばかり、本当であれば楽しいはずのキャンパスライフがオンラインライフに、バイトも行けなかったりバイト先が潰れたい。多くの大人たちも悩んでいます。給料は増えない、つまらない仕事ばかりの毎日、コロナの影響で事業の今後が見えない、明日にもつぶれそう、などの閉塞感が漂っているこの数年間。確かにそうなんです、日本国内にはこの思い空気が漂っています。
でも、です。それでも日本はものすごく恵まれています。日本人全体の給料の平均は手取りで約320万円、世界トップ5%に入っています。つまり世界人口80億人のトップ4億人の一人です。世界平均の給料は約年間20万円程度、日本人平均給料は世界平均の16倍もなんです。もちろん物価ベースが違うのでそうは言われてもと思うかもしれませんが、でもなんです、世界から見れば日本は超トップクラスの生活を送れる国なんです。日本人の平均給与であれば、贅沢をせずに毎日を普通に楽しむ暮らしは十分できます。その普通の生活ができるのは世界で20人にたった一人、それが我々なんです。
日本で生活していると、この幸福があたりまえに感じでしまいますが。実際はそうではありません。この幸福に恵まれた私たちであるからこそ、このお返しとして何かしなければなりません。だからこそ、国連職員になろうが、普通の日本人であろうが、私たちは日本人として生まれた瞬間から使命を持っています。それは「私たちが一番全力でできることをいいことを、それを必要としている人たちに届けること、直接奉仕すること」、です。それをするための一つの手段が国連職員であるには間違いありません。では、皆さんが一番得意で全力でできるいいこととは何ですか?それが見つかるまでは国連には入れません。言い換えると、それが「なぜ国連職員になりたいのですが?」の答えになります。
6.なぜ国連職員になりたいのですか?
なぜ国連職員になりたかったのですか?私の答えは、自分の専門として磨き上げてきた環境問題を地球規模課題として解決したかったから、です。
ちなみに、僕は大学生時代には国連職員になろう、とは1ミリも考えたことがありませんでした。僕は理系の人間だから将来は研究者になりたい、と何となく思っていました。人生どうなるかわかりませんね。ありとあらゆる瞬間の選択肢の結果として、国連職員としての僕がここにいます。
自分自身でこの問いを掘り下げていってください。どこかで行き止まるところがあると思います。それが、世の中があなたに求めている事です。世界があなたを求めているものです。それを全力で直接他人に奉仕することができす職場が国連です。
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