未来を変える読み物:環境は楽しい
サブタイトル:「国連の廃棄物スペシャリストに聞きました。~レジ袋の有料化でゴミ問題は解決できるのか~」、で聞かれてみた。
今回は、このサブタイトルで記事を書いてみたいと思います。最近、お仕事を一緒にさせていただいている楽天さんからの依頼で、EARTH MALL with 楽天の「未来を変える読み物」のインタビューに参加しました。楽天さん、ありがとうございます、このような機会をいただきまして。ちなみに、私個人のミッションステートメントの一つは「未来を考えて、・・・」があります。この・・・の部分は内緒です。
もしかしたら知らない人がいるかもしれませんので、EARTH MALL with 楽天を簡単に説明します。一言で言うと、サステナブルな商品が買えるサイト、です。詳細はこちらで。ここには、暮らしにやさしく、地球にもやさしく、でもなぜか私たちの心がハッピーになるものを買うことができます。未来を変えるお買い物、皆さんもぜひ楽しんでください。
さて、私のインタビュー記事は近日中に公開されます。ここから先はインタビューの時に、僕があれこれ考えていたことを皆様と共有します。なお、インタビューは「愉快な気分になりますが、役に立つことはありません」を掲げている「デイリーポータルZ」の記事を基に行われました。このサイトは、「愉快な気分になりますが、役に立つことはありません」、と説明がありますが、そこに核心が隠されてます。そういう柔軟さがあるからこそ、あらゆる知識が創造されていると思います。遊びと言う非効率な中からは、新しい創造が解き放たれています。
では、デイリーポータルZの記事をベースに、以下、私が考えたことです。
「チューボーと行徳富士」
ゴミを埋めたててできた人工の「山」が東京湾にある。この記事を読むと、国土地理院の難しそうな地図を見ると、東京湾にはぽっかりと人間が作った地形がある。これは、チューボー、正式名称は中央防波堤埋立処分場で東京23区から出るごみ処分場。そこを見学しに行ったというのがこの記事です。興味深いことに、ここは標高30メートルだそうです。僕も見学に行ってみたいです。それともう一つ千葉にあるのが行徳富士、富士山ではないが、こちらも人口の標高37メートルの山。ここは産廃と残土の山、無許可搬入の結末だそうです。人間の心の現実を垣間見る風景ですが、日本にもいくつかあるでしょう。
実は、僕の職場のある花博記念公園鶴見緑地は、かつては、大阪市の埋立処分場でした。なんと偶然な。歴史を見てみると、1941年に過密都市対策の一環として現在の公園エリアの都市化計画が決定、1970年に本格的な造成整備に着手し、1971年からごみや地下鉄工事等の採掘残土による埋め立て工事を開始。1972年からは整備工事が開始され、市民園芸村や大芝生などの併用を開始、その後乗馬苑や子どもの森などの整備も始まる。その結果として、市内で最高峰となる鶴見新山(1983年の完成当時は45メートル。現在は39メートル)も誕生。次の写真はこの鶴見新山から撮りました。花博のタワーの奥にあべのハルカスも見えます。いい景色なので、皆さんぜひ来てください。
1981年に8年後の大阪市制100周年記念事業として「国際花と緑の博覧会」開催の検討が始まり、1983年に承認されました。そして1990年4月1日から9月30日の旗艦で「国際花と緑の博覧会」が開催され、総来場者数2300万人を超える、当時と特別博覧会市場最高の記録を打ちだてました。この「国際花と緑の博覧会」のレガシーとして日本政府が誘致したのが、我がオフィスの国連環境計画 国際環境技術センター (UNEP)です。国土地理院の地図を比べるとこんな感じです。
私は2015年から勤務しておりますが、この長い歴史の先に、今私がここで廃棄物の仕事をしている、と言うのは、感慨深いのと、その重みを感じます。大阪府最大の緑地公園なので、週末は「日本は平和だなぁ」と思う風景が見られます。季節ごとに花も植え変わっており、いつもきれいな公園です。その魅力は、こちらやこちらで見てください。
中央防波堤埋立処分場や鶴見緑地公園の都市計画は、行政が定めた計画により廃棄物や残土を埋め立てた、いわゆるフォーマルな処分場でしたが、行徳富士は、不法投棄事件、いわゆるインフォーマルな処分地です。日本でもこのようなケースは多くあり、いわゆる大規模不法投棄事案(原状回復に1億円以上必要なもの)と呼ばれるのが数なくとも17か所はあります。一番知られているのは、豊島問題です。大規模と呼ばれないものは、昨年度は155件もあるんです。主な原因は産業廃棄物ですが、もし皆さんがポイ捨てしたらそれも同じです。ポイ捨ては立派な犯罪ですからね(大阪市の例)。
「昔は捨ててたうまいもの」と「捨てる部分を食べてみる」
ホルモンやトロの部分は保存技術が進む前は捨てていたという。と、大根の葉、もやしのひげ等。普段捨てている部分を工夫して食べてみる。
正直申しますと、これは少々難しい問題です、僕にとっては。なんせ、食に興味がない、のです。
まずは、私も大好きなトロ。トロはテクノロジーが進んだインフラがあるからこそ、今は安心して食べられるおいしい食材ですよね。この記事にも書かれている通り、トロは腐りやすいので、生ではだれも食べない、歴史帝に見ても猫マタギだと呼ばれていました。江戸時代になってようやく、江戸前の握り寿司職人さんが、濃い口しょう油に漬けたトロヅケしたのが始まりというのが、一般に知られている食としてのトロの始まり。
諸説あるけど、ホルモンは、この記事を読むと、なんと食の都、大阪が発祥とのこと。なんでも、戦後貧しいころのとある大阪の洋食レストランで、今まで捨てていたこの部位を使えないかと思い、放るもんか→ほるもん→ホルモン、と変化してきたとのこと、知らなかった。他の説としてはドイツ語での医学用語のホルモン、と言うのもあるらしい。こちらのホルモンは、生理活性物質を意味し、「スタミナ料理」としてイメージアップを試みたとか。
もう一つ、パンの耳。職場の近くで僕も良く行くパン屋さんでも、サンドイッチ用に切り落とされたパンの耳がたしか一袋50円で売っています。デイリーポータルZの記事で紹介されているパンの耳の甘辛煮はしたことはありませんが、一応僕もラスクは作ったことがあります。ラスク、またはカリカリ。個人的には50円以上の価値はあると思いますよ。
もう一つの記事の「捨てる部分を食べてみる」にも共通することは、日本人なら誰もが持っている「もったいない精神」ではないでしょうか?捨てるのはもったいない、なんか使えないかな?工夫してみよう、と言う和の心でもあると思います。
私のような環境系の業界人にとっては、これらの試みは食品廃棄物・食品ロスを削減することに繋がる重要なサステナビリティアクションと認識します。環境省の推計によると、2017年の食品廃棄物は約2,550万トン、このうち本来食べられるにも関わらず捨てられた食品ロスは約612万トン。単純計算で日本人一人一日当たり約550グラムの食品を捨てているという事に!!もう一つ環境省のデータを見ると、家庭系食品ロスの発生量は284万トン(以下の図参照)。直接廃棄は100万トン、過剰除去が65万トン、食べ残しが119万トンもあります。残りは事業系の食品ロスです。
世界のデータを見てみましょう。国際連合食糧農業機関(FAO)の統計では、年間約13億トンもの食品廃棄物が捨てられており、都市ごみ全体の約60%も占めている。この13億トンと言う量は、人間が消費するために製造された量の1/3もの量。経済的な損出は約1.3兆ドル(約130兆円)。1分あたり約2500キロも捨てられている計算になる。この量は、日々飢餓状態にある約8.7億人の人を救えるに十分なカロリー量である、と言うのが事実。
日本はなんて恵まれているのでしょうか?少なくとも食品廃棄物や食品ロスを減らす努力をしなければなりません。ぜひ井出先生のこの本を読んで、考えてみましょう。目からうろこが出る技ばかりです。
僕は何ができるだろうか?仕事のプロジェクトとしては、例えば、食品ロスを減らすために、まだ食べられる食材からサステナブルな料理を提供するシステムのプラットフォームはどうであろうか?参考となるのが、農水省が実施している、「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」の事例集のように、基本は各飲食店で使い切り・食べきりを実施することに加えて、それを店舗間で譲り合う事で新たなメニューを作れないかという事。例えば、ショッピングモールのレストラン街やスーパーで発生する食べられない部位や食品ロスを活用したサステナブル食堂。高級料亭が集まる高級エリアで発生する使わない部位や食品ロスからサステナブルな創作料理を作るフレンチレストランとか。多くの社会的課題等があることは認識しますが、国連職員としては「つなげる」と言うのも一つのお仕事なので、このアイデアもこれから考えてみたいと思います。私も参加している農水省の新たなプロジェクト、あふの環ではどうだろうか?農水省さん。
「大事なゴミを見せあう会」と「奥多摩の山で昭和のゴミを発掘してきた」
この記事は読んでいても特に面白いと思った記事。人によってモノの見方と価値が異なる、という事が良くわかる記事です。皆さんもご自宅や職場の引き出しに入っていないだろうか?ひそかなコレクション、たまりにたまったコレクション、捨てようと思うけど捨てられないもの、今風で言うと断捨離、ができないもの。
ここでも書いてあるけど、大事なごみって後から思えば歴史的な貴重な情報となることがあります。例えば、大阪市立科学館には昔の家電製品が展示してあります。皆さんのご家庭にブラウン管テレビや古い扇風機とか眠っていませんか?もしかしたら貴重な資料かもしれません。
ちなみに廃棄物管理を仕事している僕が今欲しいのは、日本では既に販売されていない、飲料用色付きペットボトル。なぜか?今後のプレゼン資料として写真に収めときたいのと、今後の資料として。通常であれば東南アジア出張は頻繁にありますが、コロナ禍で今年はなさそうなので、次回行ったときあれば購入したいと思います。でも僕以外の人にとっては、ただのごみ(リサイクル資源として認識してほしい!)ですね。
ごみを集めて観察も面白い記事です。ちなみに僕はここに紹介されているプルタブと缶本体が別々の時代で育った世代なので、懐かしく感じます。お中元の中に森永ネクターがあると大喜びしていた記憶があります。でもちょっと待ってください。廃棄物関係者にとっては貴重な資料になりますが、そもそもこれらはポイ捨ての立派な犯罪です。でもネットでちらほら調べていると、1960年代当たりは、どうやらハイキング中で出たゴミを埋めて帰るのがマナーだった、と言う情報も出てきます。本当かどうか、都市伝説かどうかわかりませんが、当時は夢の島にゴミを捨てていた状況からすると、土にゴミをきれいに埋めて帰る = 山の中の即席”夢の島” = 夢の島のゴミを捨てる = いたって普段と同じこと、との考え方だったのかもしれません。
今から言えますが、1960~70年代の状況はこうだとしても、環境・サステナビリティと叫ばれる2020年でもポイ捨ては減りません。外国人同僚とか友人には、日本の町はきれいね、と言われるのですが、目を凝らすとポイ捨てが多く見かけるのは残念です。なお、私たちUNEPは、山岳地域における廃棄物管理に関する報告書も作成しました。
ここにも記載していますが、山岳地域はそもそも廃棄物処理施設を導入するインフラ(電気、道路、スペース等)が整っていない、観光地・登山エリアではツーリストの増加に伴い、ホテルやレストラン等のサービスが充実していているが、廃棄物処理に課題が残りつつけている、不法投棄等で水源や自然が破壊されている、などが現状です。
さて、最後に一つだけ紹介。我が家には小学生の二人の息子がいるのですが、彼らの夢中になっているのがエアガンのBB弾集め。確か二人とも幼稚園に行くころから、公園でちっちゃなボールを集めだしたのがきっかけ。それから数年経ち、今では公園に遊びに行く=BB弾を集めに行く、となっています。それを集めてどうこうするわけでもないのですが、本人たちにしかわからない価値観で集めています。数はたぶん数千個。国連で廃棄物管理を担当しているお父さんとしては、「BB弾はプラスチック製で、そのまま残り続けると自然を破壊するよ。プラスチックごみを拾ってえらいね」、と言い続けています!(^^)!