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今年の反省 未来の反省

多分これが今年最後の投稿になると思います。なぜ書き始めたというのは、自分の情報を今までとは違う形で情報発信しようと思ったのがきっかけ。なんせ、今までは僕が参加する会議やご依頼いただいた講演や講義等で話す程度でした。とりあえず書き始めて、戦略も何も考えず書き始めて、シナリオも特段なく1話読み切り式でスタートして半年。なんだかんだで40本ぐらいの記事を書いていました。意外にも多くの皆さんにアクセスいただいていました。ありがとうございました。

この半年で、考えていることを文章に書くすばらしさやその重要さを再認識しました。頭の中で考えるのがあまり得意ではないのですが、文字に起こすとその時に考えていたことが、もちろん、そのまま残りますし、頭の中でそれが変化しても文字を見れば、そうか、前はこんなこと考えていたんだ、と思えますし。これは当たり前なのですが、そもそも小学生時代から国語が超苦手な僕にとっては、この年で再認識できる良い機会となりました。

それと仕事柄、英語で文章を書く時の方が多いのですが、母国語の日本語の難しさ、表現の多さ、そしてなんといっても意外に難しい「伝え方」も再認識しました。そして、誤字脱字、多分あちこちありますが、今後頑張ります。

後の反省点としては、40個の記事を客観的に見ると、なんだかぱっとしないタイトルと記事ばっかり、と感じます。僕の専門分野を軸に書いているし、後半は講演や講義の下準備資料をそのまま載せた、というのもあり、内容に大差がない、のは事実です。

来年は一つの物語りとなるように皆さんにお伝えできればと思います。

と言いつつ、今回の記事も某大学での講義下準備です。ここ数回ほぼ同じ内容となっておりますが、将来の僕自身の参考文献として、この場に残しておきたいと思います。

1.UNEPとは 

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国連環境計画(United Nations Environment Programme、UNEP)とは、様々な国連機関の中でも環境に特化した国連機関です。国連の仕事は、皆さんが想像されるように、地球規模課題対策の最前線に立っており、193か国の加盟国とともに様々な地球環境問題に取組んでいます。UNEPの事務所は世界各地にあります。本部はアフリカ大陸のケニアの首都、ナイロビにあります。その他には、プレトリア、アディスアベベ、パリ、ジュネーブ、コペンハーゲン、モスクワ、北京、バンコク、サモア、ワシントンDC、ニューヨーク、パナマ、ブラジリア、モンテビデオなど、世界各地に事務所があり、約700名ほどの職員が働いています。日本人職員は約20名程度です。

2.UNEP IETC

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私が勤務しているのはその中でも廃棄物管理が担当で大阪に事務所を構えている国際環境技術センターです。場所は市内の鶴見緑地公園内にあります。大阪市内に事務所はありますが、仕事しているフィールドは地球丸ごと一個です。主な仕事は、廃棄物問題に関する途上国支援です。仕事の内容については本日の講義の中で説明します。なお、私の上司はアメリカ人、部下はスウェーデン人です。ジュネーブやナイロビにいる上司や同僚とTeamsで連絡を取り合う毎日です。

3.経済学 x 哲学

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私は環境に特化した国連機関、国連環境計画(UNEP)で働いています。国連の仕事は、皆さんが想像されるように、地球規模課題対策の最前線に立っており、193か国の加盟国とともに様々な地球環境問題に取組んでいます。もちろん、地球環境問題に関する科学的・政策的・学術的な専門知識を基に、各国の政府関係者や専門家の方と、多岐にわたるプロジェクトを実施しています。

私は、日本でいう理系の人間で、高校から理工系、大学は夜学でしたが工業化学、そして大学院で環境科学・環境工学、それ以降は工学を中心とした化学物質・廃棄物管理の知識をつけてきています。でも、このような専門知識に加えて、地球環境問題に挑むためには違う分野の知識も必要です。

今私が勉強しているのは、経済学と哲学の掛け算です。地球環境問題というのは、約250年前の産業革命から加速度的に発展した資本主義経済のつけとも言えます。この250年間において、数億年もかけて蓄積した化石燃料を燃やし続ける社会を構築し、化石燃料を富に変換しましたが、その負の影響が地球環境問題です。つまり、この250年間の資本主義の結果として、日本や欧米の先進国でGDPが40~50倍に増加、世界平均でも約9倍増加しています。しかしそこには負の影響もあります、経済格差問題そして地球環境問題です。ではこの250年間の資本主義を中心とした人間社会はこれでよかったのか、地球環境問題をどう解決すればよいか、という問いに対して、哲学的なアプローチが必要です。この哲学的なアプローチに関しては、後ほどお話しします。このような考え方は、日本的に言うと文系ですが、各学問から得られる知識を自分で掛け算することが重要です。

4.私たちの未来はどこにあるのでしょうか?

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私たちの未来はどこにあるのでしょうか?それは誰が作ってくれますか?大学でしょうか?政府機関でしょうか?国連機関でしょうか?未来というと誰かが作ってくれそうな気がしますが、全ての未来は自分たちの手の中になります。皆さんはどんな未来を作りたいですか?

宇宙が誕生してから138億年後の未来が今日です。地球が誕生してから46億年も未来が今日です。ホモサピエンスが誕生してから約20万年後の未来が今日です。そして皆さんが誕生してから数十年後の未来が今日です。当たり前ですが、すべての出来事がつながっている一番先端に私たちは生かされています。

5.プラスとマイナスの結果

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今私たちが手にしているすべてのものは、過去の歴史を物語っています。例えば、今私はTeamsを使って画面を通して皆さんにお話ししています。これは過去数十年かけて開発していたテクノロジーが私たちの生活に入り込んでいる結果です。これは技術開発というプラスの結果です。しかし人間の歴史のマイナスの結果を表すものもあります。その一つが気候変動問題を代表する地球環境問題。私たち人間はその時々の時代で求めるものが違います。今から約250年前から始まったいまだかつてない人間の大進歩、産業革命は人間社会に巨大な経済産業を誕生させ、巨大な富を生み出しました。人間が地球を支配するという新世紀、アントロポセンと言われるくらい、地球における人間の影響力が絶対的なものとなりました。過去数十年のそれぞれの瞬間で考えられたもの、必要なもの、開発されたものの中から生き残った技術、つまり私たちが未来を追い続けてきたこの瞬間の結果を私たちは使っています。でも地球の歴史からすると、人間が科学技術を開発したのはたった250年間。地球の歴史46億年を1年に凝縮した地球カレンダーで言えば、わずか2秒間です。

6.そして奴が来た

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さらにそこから20年経ったのが、2020年の今日です。地球にしてみれば、過去250年間声を出し続けてきましたが、人間だけがその声を真に受け止めませんでした。多分、地球が大声を出し始めたのでしょう、新型コロナウイルスを通して、人間の皆さん、本当にそれでよいのですか、と。地球が声を出し始めたのも、人間が科学技術を開発しだした250年頃前から、つまり地球カレンダーではたった2秒間の出来事です。地球が誕生してからの歴史を考えると、今の現状は大事故と言えるでしょう。

過去のすべてが全部つながっている。そこに私たちは生かされている。過去の人たちがその時その時でみることができた未来を目指してきたのが、この2020年の人間社会です。少なくとも日本にいれば豊かな生活を送れますが、それは過去数億年に蓄積した太陽エネルギーをたった2秒間で使い果たすような消費社会。

7.未来はこうなる

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私たちの未来は私たちの手の中にあります。未来は私たちが創る事ができます。でも何もせずこのまま行くと、私たちの未来はこうなります。

・2030年代:地表の氷が解け続け、海面が最大20cm上がる。90%サンゴ礁が絶滅の危機を迎え、60%は既に絶滅している可能性あり。気候変動のより農作物の収穫率が下がり、さらに1億人の人が最低貧困層(1日の生活費が150円程度以下)に陥る。大気汚染等で年間25万人もの人が命を奪われる。

・2040年代:世界の平均気温が1.5℃上昇する。バングラデッシュ、ベトナム、タイではより多くの洪水が発生する。全人口の8%(約7億人)は飲料水にアクセスができなくなる。夏場、北極圏内から氷と雪が完全に消える。海水面は30cm上昇する、という事は日本でもそれを実感するようになるので、台風や豪雨時により大規模な水害が起こりやすくなる。

・2050年代:20億人の人々は、年間30日程度、気温が60℃になる激暑を耐えなければならない。世界中で大気汚染がひどくなり、大気汚染から身を守るために世界中の多くの人は日々マスクをつけなくてはならなくなる。世界各地で洪水が多発し、約1億4千万人の人々が住居の移動をしなくてはならなくなる。日本でもより強力な台風や豪雨に見舞われ、国内でもさらに大規模な水害が発生しやすくなる。

・そして、2100年以降:世界全体では気温が少なくとも3.2度以上上昇する。日本を含めた北半球ではそれ以上の気温となる。海水面は1メートル程度上昇する。東京や大阪でも水没してくるエリアが多くなる。サンゴ礁はほぼ絶滅。大部分の昆虫も絶滅し、それらにと共存していた農作物も育たなくなる。地表の40%が砂漠化、スペインの南地方とポルトガルは砂漠化する。アメリカでは九州の面積の8割ぐらいが毎年山火事になる。

このまま何もせずに過ごせば、これが私たちの未来です。

8.コロナで人間活動はストップしたのか?

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今年の3月から6月にかけて、新型コロナウイルスで人々の動きが止まったので、二酸化炭素排出に減少傾向が見られました。今年の4月や5月には、普通であれば真っ黒な空が消えて青い空が見えたとか、今まで見えていなかった遠くの山々が見えるようになった、という記事を見た方もいると思います。このままいけば、気候変動問題も解決するのではないか?このままいけば、と言った楽観的な考え方もあったのは事実です。

それは新型コロナウイルスが今までの経済社会を止めたこと、人間の動きを止めたこと、都市がロックダウンになったことから、化石燃料の使用量や二酸化炭素排出量がこのまま下がるのではないか、ということです。でもそれはつかの間の妄想にしかすぎませんでした。ロックダウンで経済社会が止まると大打撃を受けたのは私たち自身。少なくとも日本の完全失業率も上昇中、少なくとも200万人もの方が現在失業中です。世界でもこの影響は共通して出てきており、国の収入レベルに関係なく、低賃金労働者、女性、非正規雇用者に直撃しています。例えば、ILOの報告によれば欧州さえも男性の賃金の削減割合よりも女性の削減率が高かったという報告もあります。またコロナの影響により人道支援が必要な人が2億人以上も増えたとの報告もあります。予防接種を受けられない、家を持っていない、衛生状況の良くない環境に住んでいる人・働いている人などの貧しい人たちに顕著に負の影響が出ています。やはり経済活動を進めなければ、という強い経済対策を打ってきているのがここ最近の現状です。

9.そのギャップは大きすぎる

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では気候変動問題に対して何をするべきでしょうか?現状を一言でいうと、いまするべきことと、今していることの間に大きなギャップがあるということです。そのギャップを埋めるために、例えば、明日らか消費電力を削減するために、スマホやパソコン、ネットワークの接続を半分に減らすことはできますか?

これは少々極端な例ですが、今まさしくこれに近い発想を用いなければ気候変動問題に対応することは全くできません。つまり目的を達成するための科学的な根拠による目標と私たちの普段の暮らしに大きなギャップが存在しています。数字で見るとそのギャップは明らかです。パリ協定に2℃を達成するための数値、そしてその後のデファクトスタンダードとなっている1.5℃を達成する数値、そして多くの国が必要と感じている経済発展計画をこのまま進めていった場合の二酸化炭素排出量のギャップは大きく開いています。つまり、世界は気温上昇を1.5度未満に抑える軌道から大きく外れて、化石燃料の生産を続けている、このままいくと、2030年には1.5度未満に抑えるために制限するべき量の倍の化石燃料を生産することが予想されています。

また、今年の2020年は別の意味で歴史的な年だったとも言えます。それは、人間が作り出した人工物の総重量が地球上で生きている全生物・植物の重量を越えてしまった年です。名実ともに地球は人新世、アントロポセン、つまり人間の活動が地球に対して膨大な影響がある時代を証明しています。つまり、天然資源を掘り進めて人工物に変えて、地球が持続可能であるティッピングポイントをはるかに超えて、地球の人工化が加速度的になっています。

10.脱炭素化社会・循環経済をどう進める?

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気候変動対策には、今ある全てのインフラをグリーンテクノロジーに変えていかなければなりません。そのためには今後世界レベル30年間で約1京円の技術開発・インフラ設備投資がいると言われています。この約1京円というのは、この250年間のつけです。ちなみに、日本の一般会計国家予算は約100兆円、つまり100年分の金額に相当する環境技術投資が必要です。数字が大きすぎてもはやよくわかりませんが、とにかく莫大なお金が環境問題の事後処理として必要であるには間違いありません。事後処理はお金がかかるのです。

少なくとも日本や欧米はデファクトスタンダードとなっている2050年の脱炭素化社会に向けて今後シフトしていくのは間違いありません。つい1週間ほど前に開催された国連気候サミットにおいては、主要先進国の各首相が脱炭素化に向けた演説を行い、各国における脱炭素化に向けた目標を明確にしました。

菅首相は2050年までに、温暖化ガス排出量を5実質ゼロにする目標のもと、次世代太陽電池やカーボンリサイクル、水素などの技術革新を推進すると強調。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は「30年までに国内総生産(GDP)あたりの二酸化炭素(CO2)排出量を05年比で65%超削減する」との新たな目標を示した。従来の「60~65%減」から引き上げた。「1次エネルギー消費に占める非化石燃料の比率を25%程度に引き上げる」などとも表明した。習氏は9月の国連総会の一般討論演説で、CO2排出量を60年より前に実質ゼロにすると宣言している。

EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長が、EU27か国は2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年に比べ少なくとも55%削減することで合意したと表明するなどしました。

なお、Appleのティム・クック最高経営責任者も参加し、「政府とビジネスは協力し、来年からより強固な気候変動対策ターゲットを目指すべき」と述べた。

気候変動問題は待ったなしです。特に主要先進国とGAFAなどを代表するグルーバル企業が手を結んで、脱炭素化社会を実現しなければなりません。

11.楽しいそして社会貢献

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ここで皆さんに聞いてみたい質問があります。まず最初の質問、なぜ多くの人はスポーツをするのですか?二つ目の質問、なぜ皆さんはボランティア、特にスポーツボランティアに興味があるのですか?

色々な答えはありますが、共通の答えは、楽しいからだと思います。スポーツボランティアに興味があるのは、楽しいに加えて、社会貢献をしたい、してみたい、という気持ちもあります。

ちなみに、私は基本的に体を動かすのが大好きです。小学生時代は少年野球、中学校は陸上部、高校から自転車競技をはじめ、かつて、自転車ロードレース競技の全日本選手権にも出たことがあります。今は、週末、のんびり大阪市内をサイクリングしています。これも私の中に、サイクリングすることは楽しい、だから誰にも何も言われず自分の時間を楽しんでいます。

皆さんもスポーツをするときは楽しい、その瞬間、皆さんの目も輝いていると思います。

この楽しい、社会貢献をしたい、という気持ちは、実は地球環境問題を解決するために一番重要なことなんです。

12.めんどくさいそして環境汚染

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環境問題はなぜ起きたか。一言で言えば、環境はめんどくさいです。だってそうでしょう、毎回ごみを捨てる時は、少なくとのここ大阪では、プラスチック、PETボトル、紙ごみ、段ボール、ガラス、生ごみなどを分けないといけない。役所が決めたことを守らないといけないのはめんどくさい。全て混ぜて捨てられれば、さぞかし楽だろう。と思うのが、2020年を生きる私たちの本音かもしれません。少なくとも、ここ日本は、世界的な平均値から見て、廃棄物管理は進みすぎています。日本や欧州ぐらいです、ここまで徹底的にごみを分別するのは。それでも、毎回めんどくさいですよね、ごみの分別は。言い換えると、ルールを守ることがめんどくさい。

ではスポーツはどうでしょうか?ほぼすべてのスポーツにルールが存在しています。ルールがあるからこそ、言葉の壁を越えてみんなで楽しむことができるのがスポーツです。楽しいからルールを覚えることも守ることも苦になりませんよね。ではなんで環境はめんどくさいのか、ごみ分別はめんどくさいと感じてしまうのか?それは一言に受け身だからです。なんだかわからないけど、大阪市で決まっているから、紙ごみとプラスチックごみを毎回分けなきゃいけない、めんどくさいなぁ、となります。これを、気候変動問題対策のために、僕は、毎日、徹底的にごみを分別するんだ、そして社会貢献をするんだ、と思った瞬間に、その目はスポーツを楽しむときの目と同じ輝きになりませんか?地球環境を守る事、その精神は、スポーツをする時、スポーツボランティアする時の精神と全く同じなのです。

この「めんどくさい そして環境汚染」を「楽しい そして地球を守る」とするにはどうすればよいでしょうか?

13.ここで哲学

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スポーツやスポーツボランティアになぜ興味があるのか、なぜそれを進んでするのか、という問いは、どのように地球環境問題を解決するべきかという問いと同じ思考になります。つまり、地球上に住んでいるすべての人間、約76億人が地球環境問題対策を自ら楽しく毎日することができれば、時間はかかりますが、様々な地球環境問題を解決することができるでしょう。

ここで一つ哲学的に考えてみたいと思います。ユダヤ系でのちにアメリカに亡命した20世紀の著名な思想家、アンナ・アレントがこの問いの答えを簡潔に導き出しています。人間の活動には3種類あります。①労働、②仕事、③活動。聞く限りは同じことを意味しているように聞こえますが、実はここに真意が隠れています。①労働:いわゆる資本主義経済における雇用形態。誰かに雇われて自分の時間を差し出し作業を繰り返し賃金を得る、人の指示でやらされているもの。生きるために必要なこと。②仕事:クリエーター的な仕事、自分の知識やアイデアを基にゼロからイチを創り出すような仕事、自分で問いを立ててそれに答えていく、楽しいしごとになる。生きるために必ずしもマストではないが、人の生活を豊かにしてくれるもの。③活動:いわゆる社会貢献のための活動、自ら困っている人を助ける、ボランティアに参加する、社会をより良くしたいという考えから活動につながる事。

実際はどうでしょうか?日本の人口は約1億2万人程度です。日本の労働人口はその半分程度の6500万人ぐらいです。この6500万人の多くの人は、①の労働になるのではないでしょうか?そのまま人生を過ごすと、経済社会の歯車にしかすぎず、自分の人生の中に楽しさを見つけられないかもしれません。でも現実はそうなんです。でも、その中で何か楽しいことをする、それがスポーツやスポーツボランティアかもしれません。だから、日常の労働環境ではできない、②仕事、③活動をすることで、自分の人生を楽しくする必要があるのではないでしょうか?だからスポーツを楽しむ、スポーツボランティアを楽しみながらする、という人もいると思います。

では、この考え方を地球環境問題に応用できないでしょうか?楽しみながら社会貢献、つまり活動をする。これが僕が今考えている問いの一つです。

ちなみに国連職員は②仕事と③活動が混ざった職業です。仕事が楽しい職場です。みなさんはどのような仕事につきたいですか?

14.直線から循環へ

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さてここから、私が実際に現場等で関わっているごみと資源管理の話しをします。先ほどのビデオとこの映像、これらが世界の廃棄物管理の標準です。ごみ管理に関しては、日本はおかしいぐらいに進みすぎています。

ここ日本がモノがあふれています。生活するうえでは資本主義経済の恩恵を受けていると言えますが。地球環境の観点から考えると、本当のところはどうなのでしょうか?

今のキーワードは、2050年であるべき姿の脱炭素化社会、それを目指すために必要な循環経済です。循環経済というのは、地球を掘ることなく今使っている資源を人間社会で回していく、つまり今までの資本主義社会から循環型経済主義に変革していくことが求められています。このように直線から循環への社会の変革が本当に起こるのでしょうか?廃棄物管理関係のデータを見ただけでは、到底、世界的には2050年までに循環経済社会への変革は遂げられません。ではどうすればよいでしょうか?それを考えるためにもう一つのデータを見てみましょう。

15.天然資源採掘量 vs リサイクル量

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2019年において、私たちは約800億トンの天然資源を採掘し、約700億トンを使用し、約500億トンの廃棄物を排出しましたが、リサイクル量は100億トン、採掘量と比較するとわずか12.6%です。このシナリオで2050年までを想定すると、リサイクル量はあまり増えません。逆に人口増や経済のボトムアップが進むため、資源採掘量や使用量は今後も増えていきます。既に私たちは地球1.75個分の資源を毎年使用しているので、私たちの経済社会を直線から循環に変えない限り、ますます地球の声は大きくなるでしょう。

では今度は一般廃棄物の今後の処理処分形態をグローバルレベルで見てみたいと思います。2020年に排出される一般ごみの量は約21億トン。2050年には約26億トンまで増加することが見込まれています。今後30年間で廃棄物管理システムの向上や技術の導入・高度化が行われ、単純埋立の割合は減りますが、そもそもの排出量が増えてしまうため、結果として単純埋立量も増えてしまいます。リサイクル率も増えていきますが、30年経ってもわずか4%の増加しかなりません。

16.世界の一般ごみ処理状態

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では今度は一般廃棄物の今後の処理処分形態をグローバルレベルで見てみたいと思います。2020年に排出される一般ごみの量は約21億トン。2050年には約26億トンまで増加することが見込まれています。今後30年間で廃棄物管理システムの向上や技術の導入・高度化が行われ、単純埋立の割合は減りますが、そもそもの排出量が増えてしまうため、結果として単純埋立量も増えてしまいます。リサイクル率も増えていきますが、30年経ってもわずか4%の増加しかなりません。

このまま何もしないと、2050年になっても同じ議論をしているでしょう。脱炭素化社会を目指さなければならない、循環経済を導入しなければならない、と。このデータを見たうえで、自分の生活の中で何か削減できそうな資源はありますか?皆さんが毎日捨てるごみを考えてみるとこの質問の答えが隠れています。プラスチックごみ。これが普段の生活の中で一番簡単に減らすことができるごみです。日本でも始まりました、レジ袋有料化。今まで当たり前のように使用していたプラスチック製のレジ袋が、今年7月から有料化になりました。皆さんも、もちろん使っていますよね、マイバック。消費社会においてお客様のサービスや利便性のために行っていたレジ袋無料サービス。資本主義社会の大量生産・大量消費・大量廃棄物時代では至って当たり前でしたが、今目指さなければならない循環経済においては、明らかにおかしな状況です。だってたった1回だけ使って捨てる、というのは資源の完全無駄ですよね。

17.もう使っていませんよね、これ

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さてこれ、プラスチック製レジ袋。皆さんはもう使っていませんよね。今年の7月から日本でも始まったプラスチック製レジ袋の有料化。ではなんでプラスチック製のレジ袋が有料化になったのでしょうか?この質問をすると、大体以下の3つの答えが返ってきます。①法律でそうなったから、②資源を無駄に使わないため、③地球を守るため。皆さんの答えは何でしょうか?

今まで日本人は年間約300枚前後のレジ袋を使用していました。大体一日1枚もらっていたという感覚です。分母を地球丸ごと1個で考えると、なんと、年間5兆枚、1秒間に16万枚も使用していたことになります。問題なのが、この5兆枚の使用時間の平均がわずか12分。その12分後にポイ捨てすると、自然に分解されるまでに1000年もの時間がかかります。そしてポイ捨てされた約3億枚のレジ袋が毎年海に流れ出しています。

18.海洋ごみ

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海に行くと長い時間をかけてこれらのプラスチックが粉々になり、いわゆるマイクロプラスチックになります。今私たちが食べている魚介類には微量ながらもマイクロプラスチックが混入しているという報告もあります。また、年間、私たちはクレジットカード1枚分、約5グラムのプラスチックを食物から食べている、とも言われています。人間がポイ捨てしたものが、まわりまわって人間に返ってきています。人間は食物連鎖の最上位、ということは、地球上全ての動植物が人間が捨てたこのプラスチックで汚染されていることになります。

もう一度質問します。なぜレジ袋は有料化になったのですか?法律で決まったから、という人はいないと思います。

19.プラごみデータ

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ここでプラスチック関係のデータを見てみましょう。年間約21億トン排出される都市ごみのうちプラスチックごみは約11%の約2.1億トンぐらいです。この2100万トンのプラスチックごみのうち、プラスチック製レジ袋は約16%、つまり約3400万トン。数字で見れば、プラスチック製レジ袋をやめてマイバックにすることで減らせるプラスチック量は、単純に言えばこれだけ。プラスチックごみのわずか16%にしか過ぎないのです。この16%を皆さんはどう考えますか?この議論は少々後に行いますので、皆さん考えてみてください。ちなみに、ここ最近気候変動に並んで喫緊の地球規模課題となっている海洋ごみ問題ですが、プラごみの海洋への流出は約600万トンぐらいです。

今私たちが日々取り組んでいるマイバック全廃棄物量のうち、全部削減できたとしても微々たる量。皆さんどうお考えですか?

レジ袋は微々たる量だから無視してよい、ということでは決してありません。ここにプラスチック製レジ袋をなぜ有料化にしたのか、という本当の意味が隠れています。それは、プラスチック製レジ袋というのは環境問題の中でも一番身近にあるもの。それをやめることによって、他の環境にやさしい行動をとってみようと行動変異を起こすことが、本当の意味です。

ここで先ほどの哲学の二つ目と三つ目が重要になります。二つ目はクリエーター活動、三つめは社会貢献の活動です。レジ袋有料化というのは、皆さんが持っているボランティア精神を呼び起こすためのものです。法律だからしょうがない、では何も起きませんが、レジ袋以外で何か自分にはできないだろうか?レジ袋をやめることでもっと他に社会貢献できることはないだろうか?

20.こんなことからアクションを起こす

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マイバックを持つことで環境問題に興味を持ってもらうこと、そこからマイボトルを持つとかペットボトルの飲料水を買うのをやめるとか、車に乗らず自転車にするとか、このように自分自身で問いを立てて自分でできる答えを見つけて、それを実行していくようにするためのはじめの一歩が重要です。例えば、皆さんの友人の100人の学生さんがそれぞれのアクションをする、1億2千万人の日本人すべてがアクションをする、76億人の人が毎日何らかの環境にやさしいアクションをする、これが地球規模課題を解決するために一番重要なんです。地球環境問題を解決するためのミラクルなマジックはありません。だからこそ、みんなで自分の生活を見直して、環境にやさしい行動を毎日続けることが必要です。皆さんもマイバックを持つということから、自分の生活全体を見直してみませんか?もうすぐクリスマスシーズン。今年はプラスチックを使わないクリスマスを送ることに挑戦してみてはどうでしょうか?

21.未来を考えると楽しい、それは地球環境問題の解決の一歩です。

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私たちの未来はどこにあるのでしょうか?その未来は誰が創ってくれますか?未来は自分たちで考えることができます。でも未来を創る前に、過去の結果としての現状を理解しましょう。その現状を理解するためには、小さな小さな地球の声に耳を傾けなければいけません。地球はいつも何かをささやいています、人々に向けて。

でもそれは突然大声になりました。人間の皆さん、本当にそれでよいのですか?この声を正直に正面から受け止めることが、未来を創るはじめの一歩です。その声を自分の問題とすること、自然と一体化になること、そして未来の人間社会が自然と一体化になる事、これを目指して進まなければなりません。

地球環境問題をどう解決するべきか?この講義の主テーマです。その心は、皆さん学んでいるスポーツ健康特殊講義(スポーツボランティア論)の核心の一つであるボランティア精神と同じです。スポーツボランティアを楽しく行い社会貢献することというのは、地球環境を守るために私たち必要な精神です。


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