司法試験合格後のインハウスローヤー就活(Q&A形式)

私は令和6年司法試験に合格した後、企業内弁護士(いわゆるインハウスローヤー)一本で就職活動をしていました。
法律事務所の就活事情については情報収集が比較的容易である一方、インハウス就活については依然として情報が少なく、私も苦労しました。そこで、今後就職活動をされる皆さんのお力になれればと思いこちらの記事を書きました。

以下では、私が就職活動をしていた際に疑問に思った事項について、Q&A形式で情報をまとめました。情報量が多いため、敬体ではなく常体を用いています。

なお、noteには先に合格された先輩方による素敵な記事もございますので、こちらに添付しておきます。



1.  情報収集について

Q. 情報収集にはどのような媒体を利用したか?

A. アットリーガル、東京三弁護士会オンライン就職合同説明会(三会合同説明会)、企業法務革新基盤、ほかにはLegal Job Boardやビジネスアンドロー
一番重要なのは三会合同説明会

Q. 三会合同説明会はなぜ重要か?

A. 誰もが一度は聞いたことのある企業がたくさん参加している。また、三会合同説明会に参加しなければそもそもエントリーすることができない企業がほとんど。さらに、筆者の調べた限りだと、中途採用をしている企業も少ない。

2.  東京三弁護士会合同説明会について

Q. 三会合同説明会のスケジュールについて知りたい

A. 2024年は11/21〜11/25の5日間にわたって行われた(土日も開催)。期間中に複数回説明会を開催する企業も多いが1、2回しか開催しない企業もあるため、できるだけ予定を入れない方が良い。

Q. どれくらいの数の説明会に参加すべき?

A. できるだけたくさん。少しでも興味を持った企業があれば迷わず参加した方がよい。(筆者は20社近く参加した。かなり疲れるが会社ごとの雰囲気の違いを掴むことができたので非常に有意義だった。)

Q. 参加できるのは合格者のみ?

A. 会社によっては合格者でなくても説明会への参加および本選考へのエントリーができる。また、説明会の時点ですでに修習生の人も参加できる企業もある(例:78期だけでなく77期も応募可)。

Q. 三会合同説明会の流れが知りたい

A. 説明会1回あたりの時間は45分だが、30〜35分で会社の事業内容や法務部の紹介が行われ、残りの時間が質疑応答に充てられていることが多い。

Q. 三会合同説明会の参加者数はどれくらい?

A. 説明会1回につき1人〜30人。とくに参加者が少ないときは質疑応答で時間が余りがちなので、気まずい時間が流れないように質問を考えておいた方が良い。

Q. 説明会に参加する社員はどのような人か?

A. 説明会には必ず法務部員が参加している。新卒インハウスで入社した人、法律事務所から中途で入社した人、弁護士資格を持たない人等様々いた。また、人事の人も参加している企業があった。

Q.説明会の際の服装

A.スーツ

Q.メモは取った方が良いか?

A. 必死に取った方が良い。ネット上では手に入らない情報ばかりであることに加え、志望動機の形成に役立つものもたくさんある。

3.  選考について

Q. 選考時期はいつ頃か?

A. 会社によって異なる。12月初旬から選考が始まるところもあれば、1月に入ってから始まるところもある。司法修習が始まるまでに内定が出る企業がほとんど。

Q. エントリシートには何を書けばよいか?

A. 企業によってはエントリーシート(履歴書)が配布されるため、その内容に従って記入すればよい。形式自由の場合は、就活サイト等で履歴書をダウンロードして、自身の経歴(学歴)、職歴(アルバイト歴)、資格(語学など)、自己PR、志望動機などを記入すればよい。

Q. 自分の強みはどのように見つけるか(自己PR)?

A. 自身のこれまでに体験したエピソードを振り返る。面接でも、「〇〇した経験から自分の強みは□□であると考えました」、といった風に話すことで面接官が頷いてくれたことがあった。

Q. 志望動機は何をもとに形成する?

A. 説明会の内容・雰囲気、会社のホームページに載っている情報(事業内容の紹介、ニュース・プレスリリース欄、決算資料など)。多数の説明会に参加したうえで複数社の選考を受けた経験からすると、説明会の雰囲気は会社の雰囲気をよく表していると感じた。

Q. 志望動機にワークライフバランスは盛り込んでよいか?

A. 志望動機は会社で働く熱意を示すものなので、あまり書かない方が良いと思う。もっとも、企業としては、入社した人に長く働いて欲しいと考えているはずなので、例えば、女性の応募者が、出産後も働き続けられる環境に魅力を感じた、といったことを記入するのは問題ないと思う。

Q. 何社ほどエントリーしたか?

A. 筆者は4社

書類選考に通過すると、面接複数回(オンラインまたは対面)、適性検査(SPIやC-GABなど)を受けることになる。大学の新卒採用と比べて応募者数が多くないため、書類選考は通過しやすい印象。複数社の選考を同時並行で進めるとなると、かなりタイトなスケジュールになるため、エントリー数は慎重に考えた方がよい。
また、12月は可能な限り予定を入れない方がよい。選考を通過した場合、数日後に東京の本社で面接を行う旨の連絡が来たりする。

Q. 語学力(英語力)は必要か?

A. 必須ではないが、TOEICやTOEFLのスコアが高い方が有利に働く印象 

4.  面接について

Q. 面接の交通費は支給されるか?

A. 自分がエントリーした会社については、新幹線での移動が必要な場合は、一次面接から実費で支給された(新幹線代のみ)。

Q. 面接では何が聞かれるか?

A. 
・簡単な自己紹介
・弁護士を目指した理由
・法律事務所ではなくなぜインハウスか
・なぜこの業界・業種か
・なぜ弊社か
・長所、短所
・チーム活動経験
・他社の選考状況
・就活の軸はなにか
・入社したらどのような仕事をしたいか
・入社して◯年後どのようなキャリア歩みたいを考えているか
・第一志望か 

(筆者はTOEICのスコアを提出したためか、英語での簡単な自己紹介を求めてきた会社もあった)

Q. 選考で課題やグループワークがあるが、どのようなことが問われるか?

A. 法的知識の有無が問われるようなものは少ない。どちらかといえば現場思考が問われるようなものが多い。対策方法はほとんどないが、法律事務所のサマークラークやエクスターンに行くなどして法律実務のイメージを膨らませておくとよいと思う。

Q. 逆質問はなにを聞けばよいか?

A. これに関しては明確なものがないと思う。説明会では業務内容が簡単にしか紹介されないため、より具体的な内容を聞いてみる、どのようなキャリアを歩んでいる人がいるか、どのような人に入社してほしいか、法務に求められる機能はどのようなものかを聞いてみる 等が考えられる。

一般論としては、入社して実際に働くイメージを膨らませるための質問や、入社意欲・モチベーションの高さを示すための質問をすれば良いと思う。

5.  その他

Q. 内定(内々定)を保持しながら他社の選考を継続してよいか?

A. 面接の際に他社の選考状況をしっかりと伝えておけば、ある程度返事を待ってもらえると思う。筆者は最終選考を通過した後、最長で2週間弱返事を待ってもらえた。もっとも、大学生の新卒採用と異なり、法務部では毎年1〜2人しか採用しないため、内定に対する返事を保留する期間が長くなればなるほど、会社に迷惑がかかることには留意すべき。

Q. やっておいてよかったことは?

A. 法律事務所のサマクラ、エクスターン
面接では、法律事務所ではなくインハウスを志望する理由がほぼ必ず聞かれるが、法律事務所でのサマークラーク経験等を踏まえたうえでインハウスの強み・魅力を答えることができれば、説得力が増す。

Q. 給料はどれくらい?

A. 1年目は500万円台後半〜600万円台が多い印象。総合商社はプラス200〜300万円ぐらい。


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