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浮標
ぼんやりと漂う。
僕はただ、なにもせずにぷかぷかと漂っていた。
海に。
思考の、意識の海に。
僕の肉体は静かに空を向いて横たわり、黒く染まった空と、ばらまかれた砂糖のような星たち。
その星たちに混ざっているのは、大きく存在感を放つ丸々とした月。
なにも考えていない。
肉体は脱力し、緩みきって。
思考は放り投げ、意識はどこに。
考えないようにしている、とはまた違う。
それだと、"考えないようにする"ということを"考えている"
ことになるはずなので、簡単なようで難しい。
眠りにつきたいわけでもない。
客観的にみれば、僕はただ大地に横たわっていて。
眼前に広がる景色のどこにピントを合わせるわけでもなく、ぼんやりとした視界の中、脳味噌を空っぽにする。
漠然とした心地よさを感じる。
その心地良さは、身体とも、心ともいえないところに、あやふやに。
人から話しかけられたとするならば、意識は1度では反応できないだろう。
幽体離脱でもしているかのような、気持ちの浮き具合。
何も生み出さず、消費もしない時間。
こんな時間も、時々欲しくなる。