“クトゥルフ神話TRPG”って何?!(正気度と狂気編)

こんにちえ。ほぼ元探索者の星野チエです。

前回の記事にて「プレイヤーで遊ぶ場合はこんな感じ!」という解説をしたので、「じゃあ今回はキーパーかな?」とおもわれるかもしれませんが、ここで一度、“クトゥルフ神話TRPG”の象徴的なシステムでもある「正気度」と「狂気」について解説していきます。

よく「SAN値ピンチ」や「SAN値直送」、「SANチェック」など、「SAN(Sanity)」という言葉を目にすることがあるとおもいますが、このSANというのは“クトゥルフ神話TRPG”における正気度のこと指しています。

探索者の創造やセッションの流れなど、ほかにも多くの要素はありますが、この正気度というものこそがもっとも“クトゥルフ神話TRPG”をそれたらしめるものであり、ほかのTRPGシステムとは違った要素だと私は個人的におもっています(私自身あまりほかのシステムで遊んだことないので強くは言えない)。

また、この記事に限ったことではないですが、このマガジンは“クトゥルフ神話TRPG”を知らない人に興味を持っていただくために「こんな遊びです!」というのを解説していく趣旨のものであって、「このマガジンさえ読めばすぐ遊べる!」というものではなく、それなりに端折ってわかりやすくしている反面、明確なルールやデータについては言及しないので、遊びたいとおもっていただけた場合はやはりルールブックをご購入していただきたいとおもっております。


1.探索者の正気度

正気度とはそのまんまですが、探索者が現在どれほどの正気を保持しているかを表す数字で、探索者にはあらかじめPOWを5倍にした数値分の正気度ポイントというものが用意されています。

(例1)
星野チエのPOWは8ポイントなので、正気度が40ポイントある。

しかし、この“クトゥルフ神話TRPG”というゲームでは、探索者がひどい目に遭い続けます。それはたとえば目の前で友人が殺害されたり、得体の知れない化け物に遭遇したり、知らない間に自分の部屋に誰かが忍び込んでいたり。探索者がこうした精神的なショックを受け、混乱を招きかねない状況に直面したとき、正気度ポイントの喪失が発生します。

正気度を喪失する多くの場合、現在の正気度を成功値として1D100を用いて「直面した異常に対して気を強く持っていられるか」を判定します。これを正気度チェックやSANチェックなどと呼んだりします。この記事では便宜上、正気度チェックとしておきます。

この判定に成功した場合は正気度の喪失具合が軽かったり、あるいはそもそも喪失しなかったりしますが、失敗してしまった場合はそれ相応の正気度を喪失してしまう可能性があります。

(例2)
星野チエが黒いゴミ袋を開け、鼻がひしゃげてしまうのではないかとおもわせるほどひどい腐臭を放つ、おびただしい数のネズミの腐乱した死骸を目の当たりにしてしまい、正気度ポイントを失う。
星野チエの正気度チェック1D100の結果は78、現在正気度の40を上回ってしまったため失敗した。

また、正気度チェックはこの1D100の判定のあとにも、実際に何ポイントの正気度を喪失するかをダイスで判定する。この喪失具合は出会してしまった出来事によってそれぞれです。

(例3)
この大量のネズミの腐乱死骸を目の当たりにしたときの正気度の喪失は成功で1ポイント、失敗で1D3ポイント。
星野チエは失敗してしまったので1D3ポイントを判定し、結果は3ポイントだった。現在正気度の40ポイントが3ポイント喪失し、37ポイントになってしまった。

例3で挙げた「正気度の喪失は成功で1ポイント、失敗1D3ポイント」という文言は多くの場合「1/1D3」と省略されたりします。

そして、次にまたなんらかの正気度を喪失する出来事と対面したときの正気度チェックは減ってしまった現在の正気度で1D100を判定しなければいけない、つまり正気度を大きく喪失すれば喪失するほど、どんどんと正気でいられる可能性が低くなっていきます。シナリオ内で正気度ポイントが回復することはほとんどなく、ジリ貧になる一方というのが一般的です。

(例4)
星野チエはそのネズミの死骸たちのなかにさらに異常をみつけてしまう。それはかつての友人の首だ。その首さえもほかのネズミたち同様に腐乱しており、それが友人であることに気づいたのはある意味では不幸なことだったかもしれない。
星野チエはこの出来事に対して現在正気度の37で正気度チェック1D100を判定しなければならない。


2.探索者の狂気

さて、前章では「探索者の正気度ポイントは減る一方でやばいです!」みたいな雰囲気で解説していますが、「正気度ポイントが減ってなんか悪いことがあるの?」という疑問を持たれるかとおもいますが、当然、悪いことがあります。

探索者が正気度ポイントを喪失したとき、狂気に陥り、正常な判断や行動ができなくなり、それがきっかけでその探索者が帰らぬ人となってしまう可能性があるからです。

・一時的狂気
探索者がある一度の異常な出来事によって強い精神的ショックを受けた場合に生じてしまうのが「一時的狂気」です。

この一時的発狂気の狂気の症状は短くて数秒、長ければ数分(あるいは数時間)という極めて短期のものであり、極限状態でもなければ放っておけば自然と狂気から帰ってこられますが、その症状は動けなくなったり、殺人衝動に駆られたりと過激なものが多いです。

これを引き起こす条件は、一度の正気度チェックで5ポイント以上の正気度ポイントを喪失した探索者は<アイデア>の判定をおこない、成功してしまったら「気づいてはいけないことに気づいてしまった」ことによって発生します。

(例5)
星野チエは生臭さを纏った人と似て非なるもの、魚と似て非なるもの、いわば魚人というべき存在と遭遇し、正気度チェック1/1D6に失敗し、結果は6ポイント。一度に5ポイント以上の正気度ポイントを失った星野チエはただち<アイデア>の判定をおこない、これに成功してしまったため一時的狂気に陥る。

狂気の症状やその時間はダイスによって決定されますが、これらはルールブックに載っているのでそちらを参考にしましょう。

・不定の狂気
一時的発狂を引き起こすほどの正気度喪失をしていなくても、正気度の喪失が積み重なるとそれが強いストレスとなって精神に深い傷をつけ、「不定の狂気」に陥る可能性があります。

この不定の狂気は数カ月間という長期に及ぶ狂気ですが、ダイスの判定でランダムに過激な症状を決定する一時的狂気と違い、キーパーとプレイヤーが話し合って現状にふさわしい狂気を決定します(場合によってはこれもダイスで決定したりしますが、一時的狂気ほど派手なものではないはずです)。

これを引き起こす条件は、ゲーム内時間で1時間以内に探索者が現在正気度の1/5を累積で喪失してしまった場合に発生します。一時的狂気と違い、こちらは<アイデア>の判定をおこないません。

(例6)
13時を起点とし、星野チエは現在の13時45分に至るまで3度の正気度チェックを失い、それぞれで2ポイント、2ポイント、1ポイントを喪失し、そしてたったいま4度目の正気度チェックで1ポイント喪失。1時間以内に6ポイントの正気度を喪失した。
星野チエの13時時点での正気度は31ポイント、これの1/5は6ポイント。1時間以内に6ポイントを喪失した星野チエは不定の狂気に陥る。

・永久的狂気
その探索者のなかから完全に正気が消え失せてしまった、つまり正気度が0ポイントになった場合に発生するのが永久的狂気です。

これもキーパーとプレイヤーによって内容を決定してしまった方がいいとおもいますが、多くの場合は廃人がいいところでしょうか。狂信者として悪しき神を崇めるために社会からひっそり姿消すかもしれません。なんにせよその探索者は二度と探索するとができなくなるでしょう。

・狂気への対処
狂気に陥った探索者への対処としてもっとも手頃におこなえるのは、正気のある探索者からの<精神分析>で即席でメンタルケアを受けることです。多少の時間を費やして判定に成功すれば狂気は落ち着きをみせますが、不定の狂気などの強く心に傷をつけたことによって生じた狂気は完全に回復することができず、これはシナリオをクリアしたあとにその探索者を精神病院などの然るべき機関に通わせてしっかりとメンタルケア受けさせれば正気度を回復しながら正常な生活へと戻してあげることができます。


3.最後に

“クトゥルフ神話TRPG”のシステムの一部の解説だったので短めではありますが、今回はこの辺で終わりにしようとおもいます。

この記事を読むと「狂気になるのはやばい!」と感じて、実際にプレイする際になにがなんでも正気度チェックが発生しそうな出来事を回避したくなるかもしれません。

しかし、“クトゥルフ神話TRPG”において正気度の喪失、狂気は華や旨味であり、「狂気に追い込まれながら、それでも生き残る」ことが面白いのです。喜んで正気度を喪失しようとは言いませんが、正気度チェックや狂気のロールプレイを楽しんでやろうという意気込みでいればより“クトゥルフ神話TRPG”を楽しめるかもしれません。

ちなみにほぼ元探索者の私としては二度とあんな目に遭いたくないですし、できる限り平穏無事な生活を送っていきたい所存です。プレイヤーには感謝してますが憎んでもいます。

それでは、また次回の記事もよろしくおねがいします!!!



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