NSC東京(お笑い養成所)で学んだこと
30歳で脱サラしてお笑い芸人を目指すために吉本のお笑い養成所であるNSC東京に入学し、先月無事に卒業した私がお笑い養成所で何を学んだか書いていきます。
これからお笑いの養成所に入ろうとしている方、必見です。
授業内容
まず、授業内容ですが、大きく分けて以下の3つでした。
(カッコ内は授業全体に対する割合)
① ネタ見せ、ネタ作り(約6割)
② トーク、大喜利、座学(約2割)
③ 演技、ダンス、発声、その他(約2割)
ネタ見せの授業はとにかく手厚かった。
6〜8名ぐらいの講師がそれぞれ月1回ずつネタを見てくれて講評をくれます。様々な角度からネタに対するダメ出しやアドバイスをくれるので伸びる人は伸びます。単純にネタだけでなく、芸人としてどういった良さがあるのかという部分も見てくださる講師もいるのでとにかく熱い授業です。
また、ネタ作りの授業では、どういう切り口でネタを考えるとアイディアを出しやすいか等、かなり実践的な発想法を学ぶことができました。
その他、座学としてはYouTubeに関する授業もあり、YouTubeで稼いでいる芸人さんが講師として講義をしてくれたり、養成所としてどんどん進化しているんだろうなと実感しました。
その他にも特別講義として、めちゃくちゃ売れている先輩芸人さんのお話を聞いたり質疑応答する授業もありました。丁寧に質問に答えてくれたり、かと思ったら不意に笑わせてきたり、プロの空気を肌で感じることができました。
そして授業ではないですが、在校生ライブを約20公演ほど開催して頂き、私達タンドリーランドリーは7回ほどライブに出演させて頂きました。
お客さんからのアンケートや観てくれた友人からの意見などももらえて、在校中からとても貴重な経験をさせて頂きました。
ネタ見せ授業で学んだこと
続いては皆さん気になるところだと思いますが、ネタ見せ授業で学んだことを書いていきたいと思います。
ここでは、細かいお笑いのテクニックなどではなく、ネタ見せの授業を通じて私自身が学んだ「芸歴0年目のネタ作りプロセス」について赤裸々に書いていきます。
こちらも大きく3つに分けて説明したいと思います。
① 自分のお笑いレベルの把握
② お客さんに伝わるネタであること
③ 笑いどころの提示
①についてですが、まず大前提として、何かを創作する時に気をつけなきゃいけないのは自分が面白いと思うことが必ずしも観てくれた人全員に面白いと思ってもらえるわけではないということ。そりゃ100人が観て100人全員が面白いと思えるネタなんて結構無理に近いよねって話。それを理解した上で自分と世の中のズレがどれぐらいあるのか把握しておくことはめちゃくちゃ大事。これを把握しないまま自分だけが面白いと思うものを作っても評価されない日々が続きます。そんなのお笑いに限った話じゃないんですけどね。
自分が世の中とどのぐらいズレているのか、あるいは世の中とズレていない部分はどこなのか、そこを明確にしておく。例えばすごく尖ったネタとか理解しがたいネタをやる時に「世の中とはズレてる」と分かった上でやるのとそうでないのとでは雲泥の差が生まれてくるんですよね、多分。
あとは、シンプルにお笑い芸人として自分が何ができるのかも把握しておきたいですね。話が上手いのか、変顔が面白いのか、演技が上手いのか、声がデカいのか、かっこいいのか、特技があるのか、自慢できる過去があるのか、などなど。そういった自己分析がまずは大事ですね。何が笑いにつながるかはやってみないとわからないですけど手札は多い方が良いです。
②お客さんに伝わるネタであること、これが意外と難しい。声の大きさから始まり、テーマ選び、話の構成、セリフ選び、演技力などなど。お客さんに話の内容や設定・状況などが明確に伝わるかどうか。かなり丁寧に伝わるように工夫する必要があります。これに関してはネタ見せの授業でどの講師からも何回も言われます。難しい言葉やマニアックな単語とか非日常過ぎる状況とかってなかなか伝わらないんですよね。お客さんが世界に入り込めなかったら笑いは起きづらいんです。
③笑いどころの提示、これも意外と見落としがちで陥りやすい気がしてます。
話のテーマも良いし面白いこと言っているんだけど、なんとなく雰囲気が面白いだけで笑えないネタとかって笑いどころの提示が弱かったりすることを学びました。
じゃあ笑いどころってなんやねんって話なんですけど、答えはいくつもあってパワーワードだったり、裏切りだったり、“あるある”だったり、とにかく「ここが笑いどころです」っていう提示がうまくできていると笑えるんですよね。
①〜③は漠然とした話で、実際にネタを考えたりアイディアを出す時にはあんまり使えないんですけど、ネタを作った時にこういったポイントを抑えてないとまじで通用しないんですよね。。。
NSCに通う3つのメリット
ここで、私が思う「NSCに通うメリット」を3つ挙げてみました。
① 相方を探す効率が良い
② 吉本興業に所属できる
③ ネタ作りせざるを得ない環境に身を置ける
まず①ですが、当然大手のお笑い事務所の養成所なので入学者は多く、私たちの代(NSC東京26期)は300名を超える入学者がいました。
コンビで入学してくる人が約2割で、残りの約8割は相方を同期の中から探します。もちろんピンとしてやっていく人もいますがほとんどが相方を探します。これだけ人数が多い中で相方を探すので効率は間違いなく良いです。
入学して最初の頃に、相方を探している人が全員で自己紹介する「相方探しの会」が丸4日間行われました。今年はコロナの影響でオンラインでの相方探しだったため良い相方を見つけるのに時間がかかった人も例年に比べて多かったと思います。それでもなんとか私も今の相方とコンビを組むことができました。
続いて②ですが、NSCを問題なく卒業できればそのまま吉本所属のお笑い芸人になれます。吉本の強みはなんと言っても劇場の多さ。もしかしたら聞いたことがあるかもしれませんが、M-1などの賞レースで吉本の芸人が多いのは、ライブでお客さんの前に立つ回数が圧倒的に多いからと言われています。もちろん所属する芸人の数も多いのでその分勝ち抜いていくのは険しい道のりですが、個人的に成長できるチャンスが多い事務所だと思います。
最後の③に関してですが、この1年間とにかくネタ作りの授業に向けてネタをひたすら作りました。私だけでなく大多数の人がそうだと思うんですが、人間は追い込まれないとやらない生き物なんですよ。だからうまいこと自分を追い込む必要がある。ネタを作らないといけない環境に身をおくのは、まじで手っ取り早いです。「ネタ作りせざるを得ない環境に身を置くこと」に関しては、もしかしたら他の事務所でも可能かもしれませんが、講師の数が多いことやネタ見せの厳しさなどを考えると、より「せざるを得ない」の要素が強いのがNSCなのではないかと思います。
入学金と授業料合わせて1年間で四十数万円かかりますが、個人的にはコスパめっちゃ良かったと思います。
最後に
そして、最後になりますがこのコロナ禍で例年とは違う様々な準備・対応をしてくださったNSCの社員さん・スタッフ、講師の方々、一期上のアシスタントの方々には本当に感謝しています。ありがとうございました。
オンラインでの相方探しの会やオンラインネタ見せに始まり、対面授業が始まってからは教室に入る前の生徒全員の体温測定やサンパチマイクや床の消毒に加えてフェイスシールドの着用などなど、初めての事ばかりだったと思います。会社からもおそらく色々と制限や注意事項がある中、めちゃくちゃ忙しかったと思います。少ない人数でよく回せるなーと、生徒ながらに頭が下がる思いでした。
ここまでコロナ対策してる養成所、他にないんじゃないかと思います。
大手だからこその義務や責任のようなものを感じました。
これを見てくれる関係者の方がいるかどうかわからないですが、「本当にお疲れ様でした、あなた方のおかげで無事に芸歴1年目を迎えることができました。」と改めてお伝えしたいです。
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