真の王者、それは覚悟の結晶 〜TFリベンジBurgerKing ミールトイ〜
皆さんは「トランスフォーマー/ビースト覚醒」をご覧になったでしょうか。様々な感想があると思うのですが、私個人としてはひとつ、総司令官と星帝のマネジメント対決映画でもあったなと感じています。
恐怖や痛みのような超惑星級パワハラでスカージらテラーコンを動かすユニクロン。反対に覚悟や信念(あと相変わらずの凄まじい殺意)によって周囲を巻き込み共に成長していくオプティマスプライム。
失敗や挫折を乗り越える姿が信頼を創っていく、そんなメッセージが込められていたような作品だったとも思います。パワハラ、ダメ、ゼッタイ。
とはいえ一流の指導者や君主、すなわちキングは、目的の為なら手段を選ばない冷酷さも時には必要だと言われています。優しさや強さだけではキングにはなれんということなのでしょう。あのセンチネルも言ってました(あいつが一流だったかは怪しい)。
ところで、「トランスフォーマー玩具の王者」となると、皆さんは何を挙げるでしょうか。造型や再現度の良いものや、触っていて面白く、変形が楽しいもの、中には思い出深いアイテムを想像する方もいると思います。
しかし、そんな一般的な基準には当てはめられない、超イレギュラーなキングも存在するのです。
犠牲なくして、勝利なし。1作目以降すっかり忘れ去られたウィトウィッキー家の家訓を思い出しながら、このおもちゃ達に与えられた使命を共に感じていこうではありませんか。
というわけで今回はTFトイ界のインチキ王者軍団、バーガーキングミールトイ・トランスフォーマー/リベンジを紹介します。
ebayを巡回中、うっかり手が滑ってウォッチリストに入れてしまった結果、
「20%オフでいいから買ってくれ!」
とセラーに半ば押し付けられてしまいました。最高に良い迷惑をありがとう!
では早速行きましょう。まずは“CONSTRUCTIN DEVASTATOR”から。
デカくね!?重くね!?素材がズッシリしていて非常に触り甲斐があります。ちなみにビー覚SSバンブルビーの重量は77gでした。ボリュームだけならデラックス以上です、ボリュームだけなら。
ギミックはなんとスクランブル合体!
あらゆる実写デバステーター玩具の中でもちゃんと手足を入れ替えられるのはこいつだけな気がします。とはいえそれだけです。それ以外は間違いなく全部他に負けています。
続いては“FALLEN FLIP OUT”。何やらフォールンの横にディセプティコンインシグニアの看板が立っていますね。
かかったな!俺たちもフォールン様だ!
プライムともなればインシグニアになって隠れるんですねぇ。複雑な造型をステッカーで再現するというチートっぷりもプライムの強さの表れなのでしょうか。
そんなお二人に向かい合って頂きました。この薄っぺらさ!たまりません。もう何の写真なのかすらわかりません!
変形の恩恵で(←トランスフォーマーのレビューでよく見る文言ですがこいつに至っては恵みどころか寧ろ呪い?)可動部は多いです。
薄さを活かしてドミノにしたり、サムと並べてマトリクス授けごっこしたり、バタバタとヘドバンさせたり。このフォールンはイマジネーション次第で多様な遊びを生み出せます。
ちなみに“FLIP OUT”は「怒り狂う」といった意味でも使われるそうで、訳すとしたら「激昂するフォールン」とかになるのでしょうか。看板がお怒りになられても…
さてこのバーキンリベンジ、1週間ごとに2種類ずつ入れ替わるスタイルだったようです。
全8種なので1ヶ月にも渡ってこんな狂気の玩具を配り続けていたんですね…恐ろしい企業だバーガーキング。あと初週からこの2体はさすがに攻め過ぎ。
第2週の1つ目はCHANGE UP BUMBLEBEE。
ようやくまともそうなおもちゃが来てくれましたね。ぱっと見なんの分割線もないですが…果たしてトランスフォームするのでしょうか!
素晴らしいと思いませんか?バンブルビーのトランスフォームを音とスプリングとステッカーを組み合わせて表現してるんですよ?天才の所業ですよこれは。
限られたコストをどこまで輝かせるのかがデザイナーの腕の見せ所だと思うのですが、ここまで型破りだと逆に名作ですよ。関節ひとつないのに変形してんだぜ。ディテールの細かさといい、やっぱ玩具デザイナーってすげぇよ…
お次は“RAVEGE RAVEAL”。
ぱっと見は隕石モードっぽい謎の球体キーホルダー。強く下に振ると可愛くお座りしたラヴィッジくんが出てきます。もう一度振ると引っ込みます。
イロモノだらけのミールトイの中では随分まともなおもちゃ。ストラップ部分がディセプティコンっぽいの、可愛い。造形も両形態共に細かく、動きもシンプルで楽しい。まあまあオススメです。
さて、ここから魔の第3週目。こちらは“LAUNCHIN' ARCEE”。ボタンを押すと箱からバイクが射出されます。
動きはラヴィッジ同様シンプルで面白いです。しかし、何故車庫の扉にアーシーの生首が印刷されているのでしょうか。
「シャコモード(新概念)のアーシーからビークルモードにトランスフォーム!」ってこと?まぁ仮にロボからバイク射出されてもねぇ…劇中のアーシーのロボットモードは一輪車だから射出させ難いだろうし…あれ、やっぱこの看板芸最適解なんじゃね。
来ました。今回最も欲しかったアイテムです。こちらは“SEEKING SOUNDWAVE”という商品。こちらなんとバーキン流のリベンジサウンドウェーブなのです。
サウンドウェーブといえばG1から登場する悪の情報参謀で超人気キャラクター。リベンジの劇中では大気圏外からディセプティコンを諜報サポートしまくる有能っぷりを見せつけてくれました。
リベンジでは宇宙空間で活動する「サテライトモード」としての登場だったのですが、これをバーガーキングのデザイナーは「エイリアン衛星」ではなく「人工衛星」にトランスフォームすると勘違いしてしまったのかなぁと思ったり。あまりに人工的なデザイン…しかも何故かボロボロ…
ギミックはミールトイにありがちなショボめの望遠鏡構造。諜報員っぽくはありますが、だいぶ近くの物にしかピントが合わないので遊び難いです。大気圏外から情報集めるのに近眼レンズ…
ちなみに頭部らしき造形は何億回探してもありません。パネルの角度を変える以外に可動部分もありません。
レンズにコストを割き過ぎた結果なのか、ここまで変形を放棄したトランスフォーマー玩具も珍しいですね。いやぁ面白い。最高。ありがとうバーガーキング。
締めの第4週目です。こちらは“RISE OF MEGATRON”。所謂プルバック走行ができるエイリアンタンクです。造形は悪くないですね。キャタピラとか相当頑張ってると思います。
しかもこいつ、サウンドウェーブと違ってロボットモードがあります!素晴らしい!
ではトランスフォーム!ギゴガゴ!
カンタンガチタンワンステップ変形!どういうポージング?これで走行したら空気抵抗ヤバくね?
しかしよく見ると魅力満載。まずほとんどの肉抜き穴をうまいことモールドに昇華させています。コスト削減で培ってきた造型技術が垣間見えますね。更にリベンジメガトロンらしく左右で腕のデザインが異なります。ちゃんと右腕はデスロックピンサーっぽい。すげぇ。
最後は“ULTIMATE PRIME”。可動もせず単体では何のギミックのないオプティマス人形です。とはいえ頭がデカい以外は特に文句も出ないくらいに良い造型と塗装。
メガトロンにリベンジされ、何とか復活したオプティマス。そこに現れたのはインチキ王者、フォールン等身大パネル!
絶対絶命のピンチに駆けつけるのはブラックバードっぽいミニジェット!そう、このおもちゃはジェットファイアとの合体を再現できるのです!
自らボディを真っ二つに割り絶命するジェットファイア。背面と胸部にパーツをジョイント!
「さぁ出動だ!」
これがバーガーキングの考える究極のプライムの姿です。別にそのままの顔面でいいのに上からマスクすることで無理矢理インチキパワーを付与されています。初期案では顔色も変わる予定だったりしたのか?そんなわけねぇな…
突然日焼けするのも謎だしジェットファイア割ったら黒司令官の顔が出てくるのも超面白い。魚類みたいなヌルっとした機首部分のせいでオプティマスの胸の造型が台無しになるのもめちゃくちゃ良い。
圧倒的インチキパワーでディセプティコンを蹂躙だ!ショボいとはいえ最終決戦を6割くらい再現できるのは楽しいポイントですね。
というわけで、TF玩具界のトンチキインチキ部門キングの一角を紹介しました。どいつもこいつも面白過ぎて厄介でしたね。
どうしてここまで微妙な玩具ばかりなのか。これは痒い所に手が届かない微妙な玩具で不足感を与え、ちゃんとしたトランスフォーマー玩具の購買欲を唆る為だと言われています。
貧富の差が激しい米国ではミールトイだけで育つ子供も珍しくないそうで、それだけで満足されるとハズブロは売上が下がって困るわけですね。
ハズブロ関連のミールトイには高確率で割引券が同梱されているそうで、ミールトイで製品を知ってもらい、割引券で買ってもらうという手法を取っているようです。玩具メーカーらしい方針だ…
ということは、今回紹介したおもちゃ達はわざとショボく作られた可能性があるということです。
これらを作ったデザイナーは、自分の作った製品がすぐに飽きられても良い、所謂ホンモノの踏み台にされても良い…そんな覚悟を持っていたのかもしれません。
これらの憶測を踏まえてもう一度眺めてみるとどうでしょう。限られたコストの中で企業のニーズに最大限応えた素晴らしいオマケおもちゃに見えてきませんか?
また、手加減というのは熟練者の特権でもあります。意図的にパワーをセーブした、自分の創作物をショボいモノにした、そんな冷酷とも言える行動を取ったデザイナーがいたとすれば、その人物もまたキングに相応しいと言えるでしょう。
シモンズ家の豚ではありませんが、トランスフォーマー成功の裏には我々の知らない悲しぃ〜物語がまだたくさんあるのかもしれませんね。まさに犠牲なくして勝利なし。我が家の家訓にもするか。
昨今の玩具界は、技術の進歩で良いものが氾濫しています。もちろん良いことではあります。しかしその分、次の商品への期待値も上がります。劇中そっくりで、ヒーロー着地出来るくらい動いて、触り心地良くて、ギミック満載で、値段も高過ぎなくて…
でもそんな大人視点の完璧ばかりを遊びに求めるのは、矛盾しているような気がしますし、求める側は苦しいと思うのです。確かにそういった商品に触れた時は楽しいし嬉しいですが、そればかりを求めるのは、健全な玩具の楽しみ方ではないと思います。
数日前に「トランスフォーマーの低価格帯商品は必要ない」という意見を目にしましたが、絶対に必要です。前述した通りアメリカでは貧富の差が激しく、ボイジャークラスはおろかデラックスクラスすら買ってもらえない子供がたくさんいるのです。私はトランスフォーマーに限らず低価格帯のおもちゃは絶対に必要だと思います。
デザインの面白さも視点を変えるともっと見えてきます。低価格=制約が多いということにもなります。その分デザイナーの腕が試されているのです。そんな中でフリップチェンジャーとか考えてる人達、めちゃめちゃすごいと思いませんか?
また、たくさん玩具を買ってもらえない子供達に少しでも楽しんでもらう為、一層の魂を込めて低価格帯商品を製作しているデザイナーもいらっしゃることでしょう。玩具メーカーに勤務する方の多くは、子供達に楽しんでもらいたいという志を持って入社しているはず。その愛や魂を読み解くというのも、我々玩具オタクならではの楽しみ方のひとつではないでしょうか。
まぁ、この境地に至るまでは大量の傑作トイを所持して心の余裕を創造しなくてはならないんですけどね!みんなも買おう!バズワージーオプティマス!
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