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アトリエを設計する #2 敷地を見て考え始める
前回、敷地はすでに決めてありますと言いました。今回は、その敷地について簡単にご紹介しようかと思います。
建築設計の仕事というのは、”ある場所を意思をもってつくりかえること”と言い表すことができると考えています。有限な地球の地表面のある点は、1億年前も100年後もその場所自体は存在しています。建築をつくるということは、悠久の時間の流れの中に人間の意思を浮かべるような行為だと思っています。
気持ちよく浮かんでいられるように周囲との調和を図ります。地形や植生、風景といった大きな周辺環境(大きな時間の流れ)や、ご近所さんとの距離感や道路との接続位置など小さな周辺環境(小さな時間の流れ)といった、すでにそこにあるものを分析します。
そうして、どんなふうに”つくりかえ”をすればその場所をいっそう楽しめるかなと考えます。
計画地は十和田市の中心市街地から少し南西寄りの位置です。
比較的内陸部で海へも山へもほぼ等距離、地形的には開けた場所です。
敷地周辺を大きめに捉えて与件を整理すると、
・道路沿いで長辺が東西方向
・西側と南側に開ける
・西側に奥入瀬川の音(見えはしない)、遠くに八甲田山を望める
・南側は田んぼの風景が広がる
もう少し拡大するとまた違ったものが見えてきます。
・敷地の大きさ 約19m×5.5m程度
・南側の田んぼとは60cmほどの段差がある
・既存の植栽に囲まれている
・アプローチは水路を越えなければいけないため、1箇所に限られる
・隣家の生垣があるので北側も閉じる必要はない
・動線は東西方向、細長い敷地の奥へ進むような動き
現状はこのような状態です。(写真は3月)
1枚目正面のイチイの木を切ると、気持ちよく山が見えますね。
僕はいつも敷地を見るときには、上述のように三段階ほどの敷地図を見比べ、同時にアイレベルで何が見えてくるかという情報を整理します。敷地に立ったときに見えてくるもの見えないもの含めて、総合的にこの場所がどんな場所なのかということを考えたいからです。
視点を変えてひとつのものを見る意識を持つことで、出来上がったものがより大きな共感につながり、長く生きながらえる良い建築になると思っています。
さて、敷地の情報を簡単にまとめると、
・西側の八甲田山の景色を活かしたい
・南側の田んぼの景色も活かしたい
・細長い敷地で動線空間を効率的に計画したい
といったところかなと思います。
最後に、この辺は十和田市内でも中心市街地から車で15分ほど離れた農村です。山や田んぼがあることで、季節ごとに植物や光の状態が異なり、風景の変化を楽しめることが土地の魅力だと考えています。ここにつくる建築設計のためのアトリエは、なるべく屋外との接点を持ち、考えが外に開かれていくような、開放感のある仕事場にしていきたいなと考えています。
次回は検討はじめのスケッチをご紹介していきます。