【日記】山梨と観劇の思い出
先日、兼ねてから応援している劇団「鳥と舟」さまの山梨公演に観劇に伺いました。
私にとっても大変貴重な経験になったので、日記として残しておこうと思います。
誰かに読んでもらうためというよりは、
未来の私が読んで激しく共感することが主目的なので、
上記なりふり構わない文章になっているのでご容赦ください。
【公演を知って~当日までの話】
鳥と舟さまの『一本の槍』という作品は、初めて劇団さんを知るきっかけでもあり、公演映像もくり返し観るほど舞台作品として好きでした。
青森の八戸公演の成功など、この作品が評価されていることを知る度、なんだか元気をもらっていました。
そんな個人的にも思い入れのある作品が、劇中で取り扱う題材の現地で上演されると知ったとき、「すごい!!!これは観たい!!!」とひとり勝手に大喜びしておりました。
とはいえ「中学校公演」や「地域の人々に向けた公演」という開催趣旨を見て、これは私が居合わせていいものなのか……?とすぐに頭や肝が冷えました。
恐る恐る主宰の青井さまへ連絡した結果、先方さまにもご確認いただき、快く受け入れてくださることに。本当に頭が下がります。
青井さまより、こちらへ予約の電話を……と案内された連絡先が、「山梨県昭和町教育委員会生涯学習課」。
ここで私はようやく「本格的に町ぐるみの催しだ!?」と驚愕&理解しました(アホ)
ドキドキしながら電話をすると、担当の方に「東京から!遠いですね~」と驚かれつつも優しく受付していただき、ついに観劇が確定したのでした。やったー!!!
早速いそいそと山梨来訪の計画立て。
せっかくだから前日は前の公演を見直すか~!などと浮かれつつ。
観劇自体は夜なので、それまでの時間はどうしよう……まあ朝早くせずゆっくり向かってもいいか🤔なとど考えていたのですが。
劇団さまのX(旧Twitter)に活動近況として、「杉浦醫院」の写真がアップされたのが目に留まり。
劇中題材の「地方病」に関する資料館かあ、どこなんだ?と何気なく調べると、なんと公演会場のすぐ近く!
これは行くしかないでしょう、と計画に組み込んだのでした。
余談ですが、杉浦醫院の閉館時間に間に合わせるにはホテルの本来の可能時間より早くチェックインする必要があって、ホテルへ電話したらスマホからめっちゃ地域のおじいちゃんって感じの声。
何とかなりませんかね……と聞くと「いや~当日次第だなあ」と言われたけど、いざ当日着いてから連絡したら「あ、蒼月さん?もう準備できてますよ」とあっさり受け入れてくれた。圧倒的感謝……
そのおじいちゃんには事前にタクシーをとりたいと伝えてあり、どこまで行くの?と聞かれて答えたら、「ああ杉浦醫院!あそこ僕の家の近くだよ!いや~仕事がなかったら僕が車で送ってあげたのに~」って言ってくれて笑った😂
さらにタクシーの運転手がサングラスがオシャレなおばちゃんで(人生初だった)、公演のこととか話したら「ええ!今日19時から?仕事終わったら私も行こうかな」とか言ってくれて、超絶あったかい人しかいないじゃんこの町……😭と心が洗われました。
【当日の話】
■杉浦醫院にて
到着してすぐ目に飛び込んできた、今回の公演ポスター!
趣のある木造の古い佇まい。劇団さんの写真でも見た石碑。
価値ある場所としても、劇団ファンとしても興奮しながら、中に入る前から既にエンジョイしてました。笑
入口の引き戸を開けると誰もおらず、自動で鳴るチャイム音。あ、入館費払わないと……と思いつつ風情ある空間を眺めていると、奥から緑のカーディガンが素敵なお姉さまが登場。
受付をしながら「訪問のきっかけは?」と聞くお姉さま。
予想していたとはいえ、あー……🫨と狼狽える私。
重苦しいファンが聖地巡礼にきたってドン引きされたらどうしよう……とめちゃくちゃ緊張しました。(実際そうなんだけど)
正直に経緯を話すと、目を丸くしつつも大変好意的に捉えてくださったようで、資料館の案内以外にもたくさんお話を聞かせてくださいました。
これを書き起こしている今もちょっと泣きそうなくらい、いろんな意味で貴重な言葉が聞けて本当に光栄でした……。
その後、お姉さまから施設案内や解説を受け、「あ!作品で登場したやつ!」と進●ゼミの如く楽しく勉強していると、入口が開く音。
「あ!たぶん館長が中学校公演から帰ってきました」とお姉さま。
それからすぐ後に館長さま登場。まさに町内会とかにいそうなフランクなおじさまでした。
開口一番、「いやー今観てきたけどね、うん、良かったよ😄」。
その反応を見るだけで、ああ中学校公演も大成功だったんだなと察することができてとても嬉しかったです。
くり返し「よかった」と口にしながら、そんな話を楽しそうに教えてくれました。
きっとすごい景色だったんだろうし、本当に嬉しかったんだろうな……。
お姉さまはそろそろ夜公演のお手伝いとのことで、その後は館長さま直々に案内してくださることに。
(閉館日ではないことはネットで調べてたけど、今思えば公演のお手伝いも忙しい中で対応させてしまって申し訳なかった……事前に連絡してみれば良かった)
館長さまからも非常に詳しくお話いただき、実際の診療室や劇中で登場するミヤイリガイの本物を見せてもらいながら、肌で地方病の存在を体感しました。
時折、館長さまが「これ、前の作品とか今日の芝居でも出てきてたな。うまく説明してたよ」とファンにも嬉しい解説をしてくださいました。
作品外ですが、館長さまから聞いて個人的に印象に残ったエピソード。
『山梨県はぶどうやももが有名だけど、この辺り(甲府盆地周辺)で栄えたのは、地方病があったからなんだよ』
「山梨出身の人でも知らない人多いんじゃないかな。ワイン飲むとき、うんちくとして語るといいよ~」なんて冗談混じりに話してくれましたが、身近さがすごかったです。
きっと私が山梨出身の人間だったら、知れて良かったってもっと感じただろうな。
余談ですが廊下を歩きながら、ふと館長さまからファンになった経緯を聞かれ簡単に話すと、へえーという反応をしながら「今時珍しいよな、正統派でいい劇団だと思う」と口にされたので思わず「そうですよね!!!」と全面同意しました(急にスイッチを入れるな)
ひととおりの解説を受けた後は、二階で新聞記事や劇中の杉山なかさんを題材にした昔の小説などに目を通しつつ、夜の公演に思いを馳せながら杉浦醫院を後にしました。
街並みが見たかったので、行きはタクシーでしたが帰りは歩きで。
高さも横幅も広い空、刈った稲がまとめて放置されてる田んぼ、太陽が低くなって少し冷たい風など、作品を観る度想像していた風景を生で感じて、とても感慨深かったです。
■いよいよ会場入り
そうしてとうとう、待望の公演本番!
立場上あんまり早く行くのも気が引けたので、上演30分前を目指して出発。
いざ着いてみたら会場の広さと、既に7割ほど埋まった客席に驚かされました。
(あとから聞いたら200人近く集まっていたそう。まじですごい……)
(受付で緑のカーディガンのお姉さまと再会し、「こんにちは~」と知り合いっぽいやりとりが出来たのはちょっと安心した😂)
高い天井とツヤツヤのフローリングが広がる、いわゆる体育館の景色。その中心に、円形に組まれた舞台が鎮座。
それを囲むように、入退場に使うのか、十字の道を空けながらパイプ椅子がズラリ。
もうこの光景だけで、ファンとしても高校演劇部だった身としても大興奮の私。笑
どんな風に使うんだろうとわくわくしながら席につくと、観客席の様子が目に入り。
付き合いの長そうなおばちゃんの団体、
赤ちゃんを抱っこしたお母さん、
荷物をもってあげるお父さん、
ワンカップが似合いそうな近所のおっちゃん、
あたたかそうな膝かけを整えるおばあちゃま、
はしゃいで走り回る小学生たち、
それを見守りつつ自分の席を確保するお兄ちゃんお姉ちゃん、などなど。
そんな地域の人たちの光景を眺めていると、教育委員会の方により開会の案内がスタート。
町長からのご挨拶(!)と、鳥と舟さまのご紹介。
恐らく普段は演劇を見ない人が、こんなにたくさんこの場に集まって、鳥と舟さまの概要を聞いている……!
散々自覚していたつもりでしたが、まずこの光景を目の当たりにしていることがとんでもないな、と改めて身震いしました。
司会の方の挨拶が終わり、観客席からの拍手、BGMのフェードイン、照明が落ちてとうとう上演がスタート。
ほんの一瞬、何ヶ月も前から楽しみにしていた時間が始まってしまうのが寂しくなりましたが、次の瞬間には忘れていました。
■舞台『きみは愛を忘れている』
脚本の構成としては『一本の槍』を基礎にしつつ、新たに登場した「みさき」という少年を中心に据えた物語。
転校先に馴染めず悩むみさきくんは、観客が自分に重ねて感情移入しやすくて、さながら思春期ならではの学生演劇で見るような導入でした。
時空を越えて過去を追体験するとかちょっぴりファンタジー要素が入っていたり、歴史的な解説台詞がはっきりしていたりとかも、学生演劇みを感じてちょっと懐かしかった……笑
事前に知っている身として気がかりだったのは、題材の性質上、難しい漢字や専門的な単語が続くので、1回聞くだけだとイメージしにくいんじゃないか……ということ。
しかしさすがそこはきちんと考慮されており、「その時代に生きた人々が見つめていたもの」は、直前の台詞が拾いきれていなくても充分伝わるよう、丁寧に構成されているのを感じました。
(実際、杉浦醫院の館長さんも「あれなら中学生にも伝わると思う」と仰ってた)
それにしても、体育館という特殊なフィールドをものともしない演出やお芝居は本当におもしろかった……。
特に冒頭の田植え歌やホタルのシーンは、心躍ってつい感嘆しまいました。笑
杉山なかさんチームが遊んでいる場面などでは、私自身も一面の稲穂の中へ立った感覚になり、子供たちが走っていく風を頬に感じるまでありました。ああこれです、私が欲している感覚は……🥲(泣くの早すぎ)
とはいえ全方位にある客席に芝居を届けるために、全キャストさまが体育館全体を駆け巡ったり移動しなければならないのは、うわ~大変だ~!と思いながら観てました。
広さゆえに求められる声量とか、独特な音の反響とか、観客の視線とか、役者さま方はあらゆる要素へ大いに気を配る必要があったのではないかと。
ただでさえエネルギーがいるお芝居だっただろうに……本当にお疲れ様でした……。
そんな特殊な舞台がゆえに、音響証明を場面転換のきっかけ以上に凝ってた気がして、観客にとっても各シーンが非常にわかりやすくて助かったなと感じます。
歌パートとか、四季をあらわすシーンとかは特に綺麗でしたね。
(そういえば劇中歌、もしかしてほとんど自作……?一体どなたが……才能が恐ろしい……)
(↑公演後に知りましたが、杉山なかさん役の渚乃さん作曲とのこと。初めての作曲と知りひっくり返りました……)
稲穂や農具は何かしら登場するだろうなとは思っていたのですが、小道具といえば傘の扱いも面白かったです!川の勢いから心の隔たりの表現まで。
アイテムが既に「雨」を連想させますが、2列に並んた人々が傘を差して直進して去っていくことで「葬儀」をあらわしていたのはなるほど……と。
あと終演後、小道具眺めてたら桶に「杉浦醫院」の字を見つけて、さすが細かい~!とひとり喜んでました。笑
そんな要素を楽しみつつ、物語は佳境に。
みさきくんが失っていた、妹の「あい」との約束。
『きみは愛を忘れている』というタイトルの意味にようやく気づき、「で、出た~~!やられた!」と滝の涙。😭
役者さまごとの感想は別に書いたので(!?)ここでは割愛しますが、特に主役のお二人が本当に懸命にお芝居をされていて、「生きて」「繋げて」というメッセージが、心の真ん中に深く刺さり、震えるようでした。
私は根がネガティブな人間なので、楽しい時間が終わってしまうのをすぐ嘆いてしまうのですが、今回は少しちがう心もちでした。
寂しいけど、これでいい。
この素晴らしい公演が無事に成功してほしい。
終わった後の景色がみてみたい。
そんな不思議と穏やかな気持ちで、エンディングを見つめていました。
■終演後
今思えば周囲の人々の反応とかもっと耳を傾ければよかったんですが、感情揺さぶられまくり泣きまくりの私にそんな余裕はなく……笑
唯一、終演直後に前の席のワンカップが似合いそうなおっちゃん(ド偏見)が、腕で大きく目元を拭っていたのが見えて「おお……」と嬉しくなりました。
このおっちゃんも今、私と同じ気持ちなんだろうな。
あとたまたま関係者席側にいたようで、後ろに町長とか司会の方がずっと座っていたのですが、「いやあ、大盛況でしたね!」とやりとりしていて「そうですね!!!!!」と激しく同意してました。(※心の中で)
少ないながら差し入れを持ってきていたので、それだけは渡したい……と混雑を見計らいながら出口に向かうと、桂田先生役だった鍵山さんが気づいてくださり(いつも率先して気を回してくださる)(優しい)(泣く)、みさきくん役だった佐々木さんへも直接ご挨拶させていただけたのですが。
ここまでの分量からお察しいただけるであろう、激重感情の濁流に呑まれ、全ッ然ろくなこと喋れませんでした……。
他の役者さまとご挨拶させていただけた時も、ただひたすらクソデカ感情オタクを露呈してしまってて己を恥じた……。
(なんなら地元新聞の人に取材されたときも、感情爆発させてて記者さんを困らせたと思う)
この場を借りて謝罪したいです。大変失礼しました……。
終演後でお疲れな中、そんな私にも皆さまあたたかく接してくださってまた泣けました。
会場を出た後は、まだまだ勝手にこぼれる涙をよそに、外灯より多い往来の車のライトを明かりにしながら、ホテルまで夜の田んぼ道を帰りました。
【結び】
今回の催しに参加した人たちは、地域の歴史に興味があるとか、こどもたちのいい経験にしたいとか、そんな理由がほとんどだったと思います。
こういう取組って日頃から「伝統継承」や「教育」に勤しむ団体さんが扱うわけで、関心がない人が参加できる機会は滅多にないわけで。
(だからこそ今回も教育委員会が主催ですが)
まずこのテーマをすくい上げ、玉のような作品へ仕上げた、鳥と舟の皆さまの感性や実力。
その素晴らしさを感じ取り、共感し、この場を実現するために動いた人がたくさんいたということ。
劇団さまの理念である『時代を越えて語り継がれる物語をつくって世界を変える』が、作品を通じてしっかり実現されており、また他の人々へつながる機会が生まれている。
この日出会った方々を通して、何度もその尊さを思い知らさせられました。
これこそがこの公演の本質的な価値であり、成功であり、奇跡と呼べるんだろうなと思います。
この奇跡を、奇跡だとかみしめることができるしあわせで、これを書いている今も胸がいっぱいです。
……などとやたら興奮している私は、関係者さまからしたらめちゃくちゃアウェーな部外者に他ならないんですが……。
そんな私までこのような特別な機会に立ち会わせていただけたのは本当に光栄で、そういう意味でも大変貴重な経験でした。
本当に本当にありがとうございました。
最後に改めて、この大きな公演を成功させた「鳥と舟」さまと、実現に携わったすべての方々へ、
更なるご活躍と益々のご多幸を願って。
ここまで読んでくださった方(いるのか?)、
ありがとうございました!
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