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【観劇】鳥と舟さま 『シェイミィ、貴方と野のすべて』(詳)

11/3、文化の日。
だいすきな劇団「鳥と舟」さまの新作公演、
『シェイミィ、貴方と野のすべて』を観劇しました。

全体を振り返った感想だけでは物足りなかったので、
それぞれの役どころやシーンにフォーカスして書き連ねていきたいと思います。

恒例にする気はないけど、話題がありすぎると役者さまごとに書く方が書きやすいらしい……。
今回キャストさまが多いのもあり、いつにもまして長文のため、お好きなところだけ閲覧ください。

こちらも前記事同様、

※大量のネタバレ
※野暮な作品考察
※どうでもいい個人の演劇観

上記の内容が散乱していますので、閲覧の際はご注意ください。

また誰かに読んでもらうためというよりは、未来の私が読んで激しく共感することが主目的なので、

※順序・表記・誤字脱字など文章の支離滅裂さ
※見当違いな内容、生意気な感想、濾過されてない表現
※演劇ド素人の分際であること、批評などできる立場でないことは総じて棚上げ

上記、なりふり構わない文章になっているのでご容赦ください。
(目次は原則、台本に記載の役名順となっております。)





【各役者さまの感想】

■エイビー (笹原 優李さん)

どもりながらはにかむ姿も、やわらかいピアノの演奏も、家族に触れるあたたかい表情も、なんて愛おしいのでしょう……。
生演奏はもちろんですが、その他にも笹原さんにしかできない役回りをたくさんされていて、舞台に大きな影響を与えていたように見えました。

そんなエイビーにすっかり癒されていた矢先、自身の父親に向ける表情があまりにも鋭くて驚きました。
普段X(旧Twitter)を拝見しててもそんなお芝居が見られるとは思わず、余計に動揺しました……。

以前からお芝居を拝見するのが楽しみでしたが、予想以上に大好きな役者さんになりました。
今後も、いろんな役どころを拝見してみたいです。




■アイリース (村川 彩名さん)

「劇中、メインで活躍している村川さんが見たい!」という欲求が以前からあったので、念願叶い嬉しかったです。
こんなに活発な役どころを拝見するのは初めてでしたが、舞台上で誰よりも等身大で演じられていたように見えて、ますます満足感がありました。

ダリア王女と対峙するシーンは、本当に胸を打たれましたね。
あそこでまくし立てる台詞、すべてが好きです。
アイリースのつぶらな瞳からこぼれていく涙は、私にはなんだか血の雫のようにも思えました。
公演としては3日目という、ある意味堪え所な回にもかかわらず……迫真のお芝居に脱帽しました。




■ルーナ (渚乃さん)

本当の本当に虎役!?と気付いたとき、飛び上がって喜んでしまいました。
だって!渚乃さんがネコ科の動物だなんて!!可愛いに決まってるじゃないですか!!!(※個人の意見です)
とはいえ「マスコット感」に振り切ったり甘えたりせず、お芝居の実力であの愛嬌を出せるのは、さすがの渚乃さんでした。

衣装が工夫されてはいましたが、動物であることを派手なメイクやしっぽで安直に示していないのが、個人的には好みです。
リリアナや観客の目線で見れば、ルーナもシェイミィもアイリースも「かわいい子どもたち」に変わりないですからね。
終盤、シェイミィやリリィと話して去っていく姿を、胸が引き裂かれる思いで見つめていました。
種族の違いすら感じさせない絆を、渚乃さんのお芝居で拝見できて最高でした……。




■リリアナ (中畑 翔子さん)

実は初見時、ミステリアスなお芝居に引っ張られて、「本当に悪い魔女の可能性があるかも……」と少し身構えていました。
学校のシーンまでくるとそんな疑念も晴れ、子どもたちの未来を見守るあたたかい眼差しに、「むしろ私の大好きな中畑さんを存分に満喫できる役どころじゃないか!」と気付いて安心しました。

「何故か彼女だけは不変の存在だと思っていた」
「神も人なのかもしれない」
そんなヘイデンの台詞は、リリアナをあらわす上で非常に的を射ていると思います。
聡明で貫禄もありつつ、おどけてみせる顔はチャーミングで、とても不思議な魅力に溢れた人。
私に演劇の可能性を教えてくれた恩師もそんな人で、私はリリアナの向こう側に、ずっと恩師の顔を思い浮かべていました。
そんな私情もあり、「最後の授業」のシーンはより心が震えて、ひどく感情移入してしまいました。



■オーキッド (三島 渓さん)

とっても舞台映えされそうだなあ、生粋の悪役もお似合いだろうなあ……とフライヤーを見ていましたが、いざ観てみたら頼りがいしかないおっかさんで、思わず唸ってしまいました。
直接的に信念を叩きつけてくる台詞とお芝居には、思わず身震いしました。

特にサーカスの前説シーン、大変感銘を受けました。
オーキッドの芯の太さや大仰な言い回しを、三島さんが存分に語りきってくださった後、私はたしかに「お芝居の観客」ではなく、シェイミィを品定める「サーカスの観客」として座席に座っていました。
客席を舞台装置に仕立てる演出はよくありますが、こんなにもはっきりと自分の視線が切り替わった感覚は初めてでした。




■ダリア/デイジー (瀬名 楓さん)

劇団さまへの入団報告を「は~別嬪さんだっぺ~」と間抜け面で拝見していたら、劇中で開口一番「だべ」って言われてひっくり返りました。
そんなギャップもありつつ、王女さまとして立つ姿は高貴で、芯がありましたね……。

個人的に、ダリアは王女という立場でありながら、聖人すぎないのが素敵だなと思います。
瀬名さんのお芝居も、どちらかというと「ひとりの人間」として発言されている場面が多いような気がしました。
とても好感がもてたし、物語の主旨や舞台上の空気にも合っていたなと感じました。




■ヘザー/ジンジャー (月長 綾さん)

序盤でジンジャーとして拝見してて、舞台というフィールドにあまりにも馴染んでらしたので驚きました。
初舞台って仰っていたような……?勘違いだったかもしれません。

ヘザー姫については、なんといっても休憩明けの登場シーン。
あ~!と、思わず駆け寄りたくなってしまう可愛らしさ。
音楽とあいまって、絵の具がぱちぱち弾けたみたく、空気の色味が変わったのを感じました。
時が進んで、シェイミィやリリィの成長を味わうの同時に、ヘザー姫も愛情をたっぷり注がれて育ったのがありありと伝わってきて、なんだか親戚の子を見守るような喜びがありました。




■マグノリア (田嶋 秋穂さん)

これはマグノリア以外の役も含めてなのですが、大変女性的な美しさのある方だなと随所で感じていました。
全く性格の異なる役どころで、演じ分けもしっかりされているのに……と不思議でしたが、田嶋さんという役者さまご本人に秘められている魅力の一つなのかもしれません。

それに関連して、ちょっとびっくりしてしまったのですが。
ヘイデンと再会する場面で、ふっと近づき夫の両手に指を絡めるシーン。
お芝居としてはほんの数秒ですが、その瞬間、私の席までぶわっと降りてきたんです。
凄まじい、熱っぽい、色気が。

次の瞬間にはコミカルな展開になっており、それを理解するのも一瞬遅れるほど衝撃でした。
マチソワ2回とも同じ感覚に陥り、文字通り痺れたシーンでした……。




■ヘイデン (岩崎 航さん)

観劇前に劇団さま企画のYouTubeをチェックしながら、
「なんて真面目な方なんだろう……きっと学者さまの役、ぴったりだろうな」と予想していましたが、やはり大当たりでした。

コーヒーの話や「自由」についてシェイミィに問うシーンは、個人的に興味深いテーマなのもあって、まず台詞がとても好きです。
更に岩崎さんの、低く通るお声とお芝居が非常に味わい深く、繊細な話題ながらつい聞き入ってしまいました。

以前拝聴したスペース朗読会では、大変のびやかなお芝居をされていて、それとは別人に思える程のハマり具合でした……。
普段出演されるのはコメディが多いと聞き、その一端が見られるシーンもあって嬉しかったです。
全力でコメディされている姿もいつか拝見してみたいです。




■リュー/オリバー (原田 優司さん)

オリバーの息子っぷりと訛り具合は、サーカス団の中で一番洗練されていたような気がしました。笑
それに対し、リューとして登場したときのスラっとした佇まいは、衣装とあいまって存在感がありました。

ルーナに手をかけてしまうシーンは、原田さんのリューから醸し出される実直さを見ていると、ルーナのあの台詞も頷けるなと。
仮にルーナの台詞がなかったとしても、私はリューを責める気にはなれなかったと思います。

……ところであの役回り、あのまま山賊にやらせたって全く問題なさそうなのに。
わざわざリューの手を汚すところ、本当に、いろんな意味で憎い演出だと思いました(褒めてる)。




■ラーク (髙橋 優司さん)

フライヤーにあった「カレーでいうところのチョコレート」、まさにといった表現で、劇中でばっちり効いていました。
個人的には、人売りの男も印象的です。ああいうシーン、悪役が安っぽくなってしまうと観る側もダレてしまいがちですが、肝が冷える不穏さと緊張感に背筋が伸びました。

飛行機の組み立てシーンでは、皆を豪快に牽引しつつも、笑い所ではまだちょっと素直になり切れてない所にラークの人柄が見えて、更にクスッとしてしまいました。
父としては不器用すぎた人ですが、彼なりに息子を想ってたんだな……というのが垣間見える瞬間も、絶妙な案配でした。




■リンクス (坂本 航平さん)

まず言いたいのが、リンクスを物語に盛り込んだの、本当にすごいなと。
「シェイミィの出生」の深堀りとしては、冒頭の鮮烈な表現だけで観客は十分満足できると思うんです。
その上、過去の象徴となるのが「実は生きていた兄」でも「当時同じ場所にいた奴隷」でもなく、トラウマそのものである雇い主。
非常に重厚かつ大変そうな役どころを演じるのが、坂本さんとわかり、大いに納得しました。

舞台に現れて座っているだけでも、その肩にかかっている影がありありと見えてきて。
最後にシェイミィへ問いかける台詞には複雑な滲みがあり、本当に、さすがのお芝居でした。
私が見たい坂本さんが見られて、大満足でした……。




■リリィ (千野 ナツミさん)

誰よりもシェイミィと観客に寄り添ってくれる、ハリのあるお声。
「あれ、こんなにわかりやすく説明するんだ?」と演出を意外に思ったことも、早々に忘れてしまいました。だから、まんまと油断していました。

「私は産まれた」。その台詞が、千野さんがリリィとして物語に加わったことが、本当に本当に嬉しかった。
しかもまた、リリィがかわいいのなんのって!
シェイミィやエイビーにくっついている時の、親子特有の「ぴっとり」感。たまらなかった……。

最終的に、「全てはシェイミィの半生であり、リリィが語る物語だった」というまとめ方も秀逸でしたね。
一人前な語り手として育ったことは観客が一番知っているわけですが、最後の最後まで「子どもらしさ」を残していてくれたのも、好きなポイントでした。




■シェイミィ (南 朱夏さん)

以前スペース朗読会を拝聴した時の印象から、シェイミィがどんな少女なのか、観劇前からなんとなく想像ができました。
もちろんその少女の一面は、南さんの屈託のない笑顔や豊かなお芝居が相応しく、まさに愛されるべきお姿でした。

その口から放たれた、「おかあさんになりたいんです」という台詞。
彼女が出会った者たちを振り返れば確かに頷けるのですが、初見時は驚かされました。
更に驚いたのは、リリィという娘を授かり、リリアナと3人で話しているシーン。
「なんだか実感がない」という言葉に反して、リリィを見つめるその姿は、すっかり母の表情。続くリリアナの台詞にもより重みが増し、目を見張った瞬間でした。

赤の他人である観客の立場で、大変おこがましいですが。
本当に本当に、立派に立っていらっしゃった。
シェイミィという、幅も奥行きも際限がない役どころを、南さんというお若い役者さまがここまでやり抜いたそのお姿が、私にはとても眩しかったです。
たくさん、たくさんエネルギーを分けていただき、ありがとうございました。




【結び】


大人になった主人公が、子どもの頃の夢を叶えてハッピーエンド。そんなありがちな物語は、王道だからこそ安心感があり、後味の良い結末。
しかしこの作品は、後味こそ最高ながら、そうならなかった。私にとっては、それも救いでした。

鳥と舟さまの公演は、今や私にとって、年に数回の一大イベントです。
そんな特別な日を、作品を通じて非日常的な刺激を存分に堪能したのち、帰り道で日常に戻っていく感覚には毎度苦しんでいます。

でもシェイミィが最後、夢を叶えず未来へ託し、そこに希望を見いだした姿を思い返して、そうだよね、と。

シェイミィの物語も、私の日常も「続く」んですよね。

シェイミィたちを通じて、素敵な物語を生み出してくださった方々の日常の先には、きっとまたこんな感動が生まれる機会があるはず。
再びそのご縁に恵まれるためにも、私自身もコツコツと日常を積み重ねていくべきなのだろう。

そう思えば、楽しい時間を見送る悲しみも、いくらか紛れるようでした。
……独りよがりな期待とは百も承知ですが、勝手にそう信じさせてください。
 

ここまでつらつらと、稚拙な文を書いている時間も、シェイミィたちに与えてもらった私の日常なわけですが。
あの日の感動をまた味わえる時まで、いただいた体験を抱きしめながら、私自身の日常をしっかり歩いていきたいと思います。

最後に改めて、こんなにも思い馳せられる物語を生きてくれた登場人物たちや、それを生み出してくださった製作者の皆様へ、最大限の敬意と感謝を捧げつつ。

ここまで読んでいただき、ありがとうごさいました!

お花をお贈りさせていただきました🌻
ご紹介ありがとうございました!

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