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橙の燈【すりぬける】
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戦国時代の魅力は戦だろう。刀で切りつけ、火縄銃から火の玉が飛び、馬が駆け出す。今やられたらとんでもないが、面白い物である。
これは友達の博物館の館長がくれた戦国時代によく使われていた武器の10分の1スケールのレプリカだ。
橙の液は火薬を潰して裏漉しして片栗粉に混ぜたものらしい。そうすることで威力が上がるんだとか。先端の尖った所はぶつかると橙の液が吹き出す。そうするとあたりは燃え、一瞬、橙の明かりで包まれるそう。この武器の名前は安直に橙槍らしい。橙槍の使い手として名前が上がるのは垓曇だろう。友達の館長に聞いた垓曇の逸話を一つ。その戦は負け戦になると垓曇の軍は思っていた。それもそのはず。相手1800に対してこちらは300。普通の戦にしては規模が小さいが、比にすると6:1の戦いだ。皆が頭を抱える中、垓曇は行動した。
橙槍を二本同時に投げるという奇行を何百回も高速で行ったのだ。その橙槍らは敵の目の前に落ち、完璧なバリケードと化した。皆は喜んだ。しかし、垓曇は油断するなと一言言って、今度は一本ずつ橙槍を投げ始めた。ちょうどその時、敵は橙槍の間をすり抜け始めていたのだ。その上に完璧なエイムで投げられた橙槍。1が6を圧倒した戦いである。
僕は手に持っている橙槍レプリカを槍投げのように振りかぶって投げてみた。レプリカは壁にぶつかり、コテンと寂しく地に落ちた。
キュレーター 神野 祐介