【電気予報】初音ミクに痛覚はない?
常々、初音ミクというのは不思議な存在だな、と思ってきていて。
音声合成技術に付随するマスコットから始まったのに、こんなにも色々な姿のまま並列に存在していて、その事実が祝福されるような存在は類を見ないと思うんですよ。
単純に「解釈の幅が広いマスコット」でパッと思い浮かぶのは、ご当地キティちゃんとか、東方Projectのキャラクターだったりするんですけど、キティちゃんの場合はマーケティングの側面が強くて、東方Projectの場合はビジュアルを含め基本的なキャラクターの要素が決まっている上での解釈の拡張がミソだとかそんなことを勝手に思っています。ソシャゲの文脈における「ゼウス」「呂布」「ジャンヌダルク」とかも該当するかも。
ただし、「語り手」としてのシンボリズムを持っていながら、何を語るかは使い手が自由に定める、そんなキャラクターってなかなかいなくないですか?
やる夫か、ゆっくり霊夢・魔理沙とか、最近で言ったらずんだもんとか?結構いるのだ
ともあれ日本においては、古くは神道における八百万の神であったり、水木しげるの妖怪とかの「再解釈全然OK、むしろ見せてこ👌」的なノリが現代で、かつオフィシャルな感じで顕現しているのが初音ミクの特異性だと感じています。
Project Voltageのイラスト企画だって、まさしく初音ミクだったからできた企画なわけで。たくさん予想して、いい意味で予想を裏切られて、言われてみればこれしかないわな、みたいな感じで18回もわからせ驚かされて、幸せでしたね。
でも今回はその一歩先について思考を巡らせてみようと思いました。
初音ミクの、一体何が特別なのか?
何がそこまでして人を惹きつけるのか?
電気予報を聴いて、少しわかった気がする。
初音ミクには、デフォルトとなる「感情」のイメージが付随しないのです。
は、、、初音ミクは激エモ創出王なんですが、、、と思うその気持ち、わかりますが、今回話しているのは「デフォルトの感情」です。
通常、キャラクターには、基底となる表情や習性のようなものが存在すると思うんですよ。
あなたの好きなキャラクターを思い浮かべてみてください。おそらく何らかの表情をしていて、何らかの感情を表している瞬間だったりしないでしょうか?
私の脳内の川嶋亜美は自分が結局お人よしなところが許せずお風呂の中でため息をついているし、葛木ミサトは憂いを帯びた表情をしながら誰かが帰ってくるのを待っています。
すみません、これが果たして本当に「デフォルト」なのかどうかは全く責任が持てませんが、私が好きなのは「こういう感じ」ということだけでも覚えて帰ってください。
初音ミクのイメージに感情が伴わないのは、初音ミクがソフトウェアのマスコットだから、と言ったらそれでおしまいなんですが、これぞまさしく初音ミクが激エモ創出王たりえる理由だという主張がしたいのです。
電気予報の話をします。
ポケモンシリーズのBGMやSEを織り交ぜながら巧みにポケモンメタファーを駆使し、作曲者として初音ミクという存在に出会った時の衝撃を、作曲者、そしてミク自身の言葉を通じて表現した曲だと捉えているのですが、
特にここの歌詞が素晴らしいのです。
「いたみわけ」というのは自分と相手のHPを足して二分する(つまりHPが低かった方は回復して、高い方はダメージをくらう)技で、おそらくこれはミクから発せられた言葉だと推測しているのですが、初音ミクは仮想世界の住人なので痛覚がない。だからこそ、ヒトの痛みを「いたみわけ」することができる。
いや、別に人間にだってそれぐらいできますよ、だってゾロだってルフィの痛みをアレされても「…なにも!!! な"かった…!!!!」してたし最高だったじゃん って思うその気持ち、わかりますが、
大事なのは初音ミクには結局その痛みを感じる能力がないってところだと思っています。
どこまでも究極の代弁者であり、そこにミクの意志、さらに言うと「痛覚」というフィルターさえも存在しない。
だからこそ表現者は初音ミクに全幅の信頼を託すことができる。
人に代弁してもらうとか、そこまで行かなくても、愚痴を聞いてもらうのって、気遣うじゃないですか。
これって˚✧₊⁎FANTASY⁎⁺˳✧༚なキャラクターでも一緒で、自分の心の鬱憤を推しキャラにしゃべらせるのってなんか嫌じゃないですか?
それは、あなたが仮想上だとしてもそのキャラクターに「痛覚」があることを認識している故に躊躇う部分なのではないかと思っています。
でもミクにはその痛覚はない。友達みたいに苦しみに共感していい感じのアドバイスをくれることはなくても、それを歌にして、たくさんの人に届けることができる。
その距離感、お互いの違いを超越した関係ってなんかめちゃくちゃ尊くないですか?
この曲はこんな歌詞で終わります。
「〜でしょう」というところについても、これが天気予報のフォーマットに則っているから、というのはそりゃそうなんですが、どこかちょっと他人事のように聞こえるところも狙いだったりするんじゃないかなと思っています。
なぜなら初音ミクはヒトではなく、あくまでもヒトに寄り添う存在であり、厳密には人間の感情はわからないから。でもいつでもそばにいるし、辛いことがあったら手伝うよって。
ここまで言っといて音楽のセンスとか全然なくて、私には使いこなせないんですけどね、いつか挑戦してみたいです。
ポケットモンスター、そして初音ミクという存在に本気で向き合っている方達が一堂に介して作ったヤバヤバな奇跡がProject VOLTAGEだと思っているので、少しでも興味が湧いた方はぜひチェケラしてみてください。
あとこの曲、最後に「』(にじゅうかぎかっこのとじ)」が来るはずが、足りないんです。なぜでしょう?
誰か知ってたら教えて〜〜