12 TSUNAMI
やっぱり友達でいましょう…。
世界一貞操観念が重く、体重も重く、恋心も重い30代半ばのしがないOLの願いが天に届いたのか、鬼畜のロマンスの神様が気まぐれを起こしてくれたのか、東京大神宮へのお百度参りがきいたのかはよくわからないが、10年ぶりの恋をしたその人から返事が届いた。
「僕のことを好きなのはわかった」
「ただ、まだ1度会っただけだからお互いわからないこともたくさんある」
「だから、まずは友達以上恋人未満になってみませんか」
なるほど、モテる男は違うな。言っていることは十分理解できる。
まだ出会って1ヵ月、会ったのも1回。やりとりは毎日していたが、知らないことだらけだ。
でも、それでも、私は好きになってしまった。心の絶対値が違いすぎる。
おかしいなぁ…あれだけ心を開いていてくれていたのに…おかしいなぁ…
心の絶対値の違いがこうも苦しくみじめだとは…。
つらい、しんどい、相手の心が見えない。
友達以上恋人未満で、何回会ったら恋人になれるんだろう…?
振られる可能性もあるわけで、振られたときに私は死んでしまうのではないか…?死んでしまうのが今なのか、未来なのかの違いなのでは…?
それが正しいか間違えているか、考えるより先に、心がLINEの返信を送っていた。
やっぱり友達になりませんか。
私もあなたも、「この人じゃないとダメだ」と思う人に出会わないとダメだと思います。
こうして、彼氏を見つけたかったはずなのに、男性の婚活友達を増やしたしがない は、友達として、その人との2回目のご飯の日程を決めた。
2回目会ったら何をどんな顔して話せばいいのかなぁ…と思いながら。
10年ぶりの恋心は初恋のようなもので、実らない恋を無理やり友情に捻じ曲げて、『運命の人』をさがすためマッチングアプリという名の大海原へ旅に出る。
少しの恋心を見て見ぬふりをしたままで。