08 雨のリグレット

一体何人会えば彼氏ができるんだろう…。

『圧倒的写真詐欺事件』から両手で数えきれないほどいろんな人と会った。
メッセージのやりとり→日程調整→アポの繰り返し。昼と夜、東映アニメ祭り並みの2本立ての日もあった。

ニコニコしながら興味のない人の興味のないことを聞く。
『あれ？こんな人だっけ…？』と思ってもプロフの写真すら覚えてない状態。ひたすら「へー、すごいですねー」「そうなんですかー」のローテーション。発言することに困ったらご飯食べながら笑っていた。

おかしいなぁ…こんなハズじゃなかったのに…。

目の前の興味のない、どんなメッセージをしたかすら覚えていない男性と2時間ご飯たべて帰るだけの週末。

お会計は絶対に(あと腐れないように)割り勘にしていたのでメッシーくんというわけではないが、私が割いているこの何時間かには意味があるのか…？
正直、プロフィールの写真すら覚えていない状態で、きっと別人が来ていても気づかないでご飯食べて解散していてもおかしくない。

このあたりで、しがないの中でふと疑問が出てきた。

『そもそも、自分はどんな人が好きなんだろう…？』


皆さんは、お相手にどんな人を求めていますか？

当時の、結婚願望0のしがないは、
①趣味を理解してくれて(重度のヲタクなので)
②働いていて(ヒモはちょっと…)
③かわいいタイプの年下
④ありのままの自分を好きになってくれる人

たったこれだけの条件。なぜ出会えないんだろう。
マッチして、やりとりして、会ってみて良かったら付き合う。たったこれだけなのに。

出会いさえ作ればすぐに彼氏ができると思っていた。
少女マンガでは自然と恋に落ちるじゃん？それだよそれ。アナ雪よろしく、ありのままの しがないを好きになってくれる人がいい。

凍結されたマンモスよろしく、婚活の波にも世間の波にも晒されなかった奇跡の30代半ばの童顔めの女子、それがしがない！

しがないは、決して売れ残りではない。在庫整理していたらぽっと出てきた、ほこりはちょっと被ってるけど払えばなんてことない、売り場に出したら即完売。
今までは、「重度のヲタクだから」「婚カツとかしてこなかったから」「出会いがなかったから」「仕事も激務だったから」「他人に興味ないから」彼氏が出来なかっただけ！

ちょっと本気だせば彼氏なんてすぐ出来るはず！
だって、社会人1年目までずっと彼氏いたし！コミュニケーション力は世の中の婚カツ女子よりあるし！関西人だし面白いねってよく言われるし！男友達もそこそこいるし！

世間の恋愛市場価値？私にはそんなの関係ないね！世間とか知らないし。
だって、現にいいねの数は500+だよ？誰が決めたかわからない世間でいう婚期とかいうやつ関係ない、それが私！30代半ばで500+とか奇跡でしょ？ネットで調べたら平均150とか書いてるよ！平均以上じゃん！私はまだまだいける！

このような、傲慢はなはだしいことをぼんやりどこかで思っていた。

･･･あぁ、当時の私はなんて愚かだったんだろう。

この、何処からともなく来る根拠のない傲りは、後に跡形もなく叩き壊されることになる。