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2021年7-8月に読んだ本

未来の記憶/田根剛

実際の建築そのものではなく提案内容に焦点が当てられていて資料的価値も高く面白い。クライアントへの提案というよりも研究成果発表のようなまとまり。

深き心の底より/小川洋子

小川洋子さんのエッセイ。第二章『言葉の力に導かれて』が他章よりもだんとつで面白い。幼少期のささいな出来事や、たまたま見た風景をまるで宝物を隠すように心の中に置いていることに作家としての凄さが見れる。

歌集 滑走路/萩原慎一郎

掻きむしるような感情の塊が歌になっていて、読んでいてヒリヒリする。

歌集 海蛇と珊瑚/藪内亮輔

かっこいい。とにかくかっこいい。目の荒い紙ヤスリみたいにザラッザラに読み手の感性を研いでくる。

シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々/J・マーサー

「見知らぬ人に冷たくするな、変装した天使かもしれないから。」というコンセプトが最高。破天荒な登場人物達に導かれるように、読んでいるこちらまでボヘミアンな夢想に浸れる。

ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力/帚木蓬生

心理学、脳科学、シェイクスピア…と様々な切り口から「ネガティブ・ケイパビリティの力」と本書内で呼ばれる内容が紹介されている中で、最も熱量高く語られているのが紫式部の『源氏物語』についてだった。いつか読んでみよう。

料理と利他/土井善晴・中島岳志

料理を作る際に「美味しい料理」を目指して色々な調味料や料理法を行うのではなく、ただ清らかにつくることが大事なのではと問う。それで美味しかったら自然の恵みだし、美味しくなかったら旬じゃない、不作というだけのこと。特別な何かではなく「日常のふつうさ」に美しさを見出す、ものづくりへの一番大事な心がけが料理を通じて語られていた。

ゆっくり、いそげ/影山知明

利用価値で人を判断しない。中心点を2つもって楕円のイメージでビジョンを広げていく。ビジネスの場ではたびたび冷たくなりがちだけど、一歩引いて考えると、当たり前にそっちの方が良いよねってことを実践されていて、温かさに溢れる本だった。西国分寺のクルミドコーヒーも静かで温もりがあってよかった。

土偶を読む/竹倉史人

土偶は「植物像」説、信じます。仮設を様々な角度から検証していくその過程がとにかく面白い。ゆるきゃらとの完全一致説も最高。いずれ子どもの教科書に土偶が出てくる時期になったら、こっちの説も教えてあげたい。

クララとお日さま/カズオ・イシグロ

一つずつ言葉とストーリーを積み上げていって、気がついたら見たこともない風景に自分が放りこまれていて驚愕する。すごすぎてもはや怖い。

精霊に捕まって倒れる/アン・ファディマン

1人の子どもの病気をめぐって、アメリカの医療と、モン族という、全く異なる文化的背景を持つそれぞれが、最善の治療を与えようとして対立していく。正しさや善き行いがすれ違い、衝突していく過程を内側から丹念に描いていて学ぶものが多い。最終章にあたる『第十九章 供犠』に描かれる祈りの何という強さか。今思い出しても心が震える。

観察力を磨く 名画読解/エイミー・E・ハーマン

絵画を通じて、タイトル通りまさに「観察力を磨く」実例が豊富に紹介されていて興味深い。本の中で紹介される様々なデータや引用が、著者の説を補強するためだけに使われているので文章は気になるところが多いが、名画と呼ばれる絵画を通じて観察力を磨くその方法は面白い。

知覚力を磨く/神田房枝

上記の『観察力を磨く』に書かれている内容と類似しているが、よりビジネスにおける応用が中心に書かれている。紹介されている事例が、トヨタ、アップル、IDEO、ザッポスなど、すでに既知のものが多く、新しい視点の学びはあまりなかった。

工夫の連続 ストレンジDIYマニュアル/元木大輔

IKEAの家具の組立図のような「DIYマニュアル」として紹介することで、「完成しない家具」や「都市をHACKする」という考え方を開いていくという手法が秀逸。

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