2022年1月-4月に読んだ本
新版 コーチングの基本/コーチ・エィ
ここ最近いくつかコーチングを受けてみて、その聞く技術や話題の拾い方に感心することが多く、メソッドを知りたくて手にとった1冊。ビジネスの場におけるコーチングメソッドの活かし方を中心に書かれていて、まさにいま知りたいことをよく知れる本だった。
働くことの人類学 活字版/松村圭一郎・コクヨ野外学習センター
どのエピソードも面白く読み応えがあるけれど、特に気になったのはアフリカ・カラハリ砂漠でフィールドワークを行ってきた丸山淳子さんがゲストの第2話「ひとつのことをするやつら」。現地のブッシュマン達にとっては「ひとつの道を極める」という考え方は、謎そのものであり「お前まだそれやってんの?」という感覚だという。日本には茶道や華道や剣道といった「道」という価値観があるので、ブッシュマンの価値観とは相容れない部分が多くあると思うけど、そうした違いを軽妙なユーモアで笑いとともに紹介してくれて、自分の抱える当たり前がガラガラと壊れていくのが気持ちよい。
まとまらない言葉を生きる/新井裕樹
政治やSNSなど生活を形づくる場において言葉が乱暴に使われ壊されている現状に対して、怒りではなく憂いと悲しみを中心に据えた批判が書かれている。怒りが表立っていないからか尖ったシャープな批判ではないかもしれない。でもそのしなやかで確かな反抗の手付きにとても共感した。
低空飛行 この国のかたちへ/原研哉
日本の風土が連綿と培ってきた美意識を、どのように衣食住の全てを含むホテルという場に結晶化して提供できるのかを思索する一冊。隅々へのデザインの提言以上に、第1章や2章で語られるこれからの社会の様相のイメージと、近代史の振り返りに納得が多かった。
かざる日本/橋本麻里
この著者の書いた本は全部読もうと思えるほど刺激的な内容だった。ただ削ぎ落とし、引き算をしただけの「貧しい簡素」に比べて、千利休の茶の湯に代表されるような徹頭徹尾、周到に計画された「豊かな簡素」がある。その「Less is more」とも呼ばれるような、圧倒的な強度を持った「豊かな簡素」に対して、もう一方の極にある「かざり」とは何だったか。視覚的なものだけにとどまらず、嗅覚、聴覚、触覚、味覚、とあらゆる感覚における「かざり」の本質を探求する一冊。
モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語/内田洋子
イタリア中部トスカーナの山奥のモンテレッジォ村。その地にはかつて富山の薬売りならぬ、イタリアの本売りがいた歴史があるという。15世紀頃モンテレッジォ村では売るものがなく、農産物や薬を行商する代わりに、“本”を行商する村人たちがいた。彼らは山奥にある村から大量の本を抱え、山を越え、街道を歩き、各都市へ本を運び、市場で本を売っていた。やがて、彼らはただ売るだけでなく、本の目利きとなり、希少本の流通を支え、作家や編集者へのアドバイスも行うようになった。その行商人たちの子孫は、イタリアの各都市で今も本屋を営んでいるという。本を愛する人にとって胸熱の一冊。
からだのためのポリヴェーガル理論/スタンレー・ローゼンバーグ
「自律神経」というと、交感神経と副交感神経がそれぞれ覚醒状態とリラックス状態を担っているというのは有名な話。本書では近年明らかになってきている「迷走神経」という全く異なる3つめの神経回路にアクセスすることで、身体の回復を促せるという「ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)」についてエクササイズと合わせて展開している。後半で紹介されるエクササイズが、物足りないと感じるほど簡単にできるうえ「この動きをするとあくびが出ます」と書かれている動きをすると、身体がゆるむのか本当にあくびがでるから驚く。
地球でいちばん過酷な地を行く 人類に生存限界点はない!/ニック・ミドルトン
地球上で最も「寒い」「暑い」「乾燥した」「雨の多い」それぞれの地を訪ね、そこに住む人々の暮らしぶりを紹介してくれる旅行記。どの地域でも、環境への驚きはありつつも、飄々とブラックジョークをつぶやき楽しそうな面を多く見せてくれる明るい一冊。気候が極限的に厳しいこと=世界でいちばん過酷な地ではないことが逆説的に分かる本でもある。
新しい文章力の教科書/唐木 元
簡潔に伝わる文章を書くための実践的な方法が紹介されていて、特に仕事で資料をつくるときなど役に立つ内容が多い。『日本語の作文技術』と合わせて、ときどき読み返したい一冊。
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