2021年6月に読んだ本
進化思考/太刀川英輔
もし学校に「創造」っていう科目の授業があったら教科書になるだろうってほど充実した内容だった。技術や道具の進化と生物の進化を「創造性の進化」にクロスオーバーさせながら紹介していて、ひとつひとつ面白く、同じ章を何度もくり返し読んだりした。
海をあげる/上間陽子
普段はあまり意識していないが自分の中にも確実にある「怒り」に否応無しに共振してくるので読むのが辛かった。というよりちゃんと受けとめられずに辛かった。
考えの整頓 ベンチの足/佐藤雅彦
認知症になりかけている母親を前に「なぞなぞ」をだして笑わせるくだりには感動した。「人間は何を持って、人間なのか。哲学的でもあり、答え方も沢山あるような無いような、そんな問いである。しかし、もうはっきり言ってしまおう。それは笑いである」と結ぶ強さもあり、一冊の中でもとびぬけた話がいくつかあって心うたれた。
物語のものがたり/梨木香歩
「あとがきにかえて」の文章がとても素敵だったので感想の代わりに一部抜粋。梨木さんはいつだって最高。
いつの頃からか、私はファンタジーという言葉を使わないようになった。自分がものを書く上で一番大切に思っていることは、人間性の奥深く、森羅万象とリンクするような普通の流れがあるところまで、当の書き手を含む、読者を導いていくような「何か」であり、その「何か」はかえってさりげなく差し出したほうが、「普通の流れ」を見つけやすく、そして自分の性にも合っているような気がしたのだった。
果報者ササル/ジョン・バージャー
後半は難解というか、よく意味が分からない文章になっているように思える。ジョン・バージャーが田舎の医師の観察を通して、どのようなことをひきだしていくのかという点に興味があったがいまひとつ読みきれなかった。
南総里見八犬伝/曲亭馬琴
日本文学史上最大の長編小説らしい。完全翻訳も未だ出ていないらしい。だけど物語の筋はもともと自分にとってはどうでもよく、とにかく文章のテンポ・リズム感が素晴らしく、この小説を読んだあと七五調に収まらない文章がすべて気持ち悪く見えた。
神々は繋がれていない/ケン・リュウ
ケン・リュウ短編傑作集の6巻目。石川慶監督による『Arc』の映画化が楽しみ。ってもう公開されているのか!!
ふすま - 文化のランドスケープ/向井周太郎
ふすまとは「伏す間」つまり寝室に設えるものであるところとか、障子によって「気に障る」つまり、湿気や冷気(またはもののけ)などのケに障れてもらうことにより、その奥の間を守る技術だったところとか、紙と木で作られた日本家屋の魅力を設えから解き明かす一冊。
ジーノの家/内田洋子
痺れた。文字通り、つま先から髪の毛までぐるりと一周超えて背骨に到達するまで痺れた。タイトルにもなっている「ジーノの家」、それから「私がポッジに住んだ訳」「船との別れ」はすごかった。
ミラノの太陽、シチリアの月/内田洋子
ジーノの家の続編にあたる一冊。とにかく良すぎて何も言えない。「鉄道員オズワルド」「海の狼」「シチリアの月と花嫁」どれもすごかった。
旅と料理/細川亜衣
旅も料理も好きなので、旅と料理の本とかないかなと思っていたらドンピシャのタイトルで突然目の前に現れた本。海外旅行に行けるようになったらどこに行こうかと想像しながら一晩に一章読むのが楽しい一冊だった。
ビジネス・フォー・パンクス/ジェームズ・ワット
「死ぬ気でやれ」か「死んでもやるな」のどちらかで基本的に書いてあるので、これ以上ないくらい論旨明快。クラフトビール飲みたくなるね。
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