世界選手権参戦記
1. 世界選手権を終えて
文字通り全てをMTGに捧げた3週間だった。新セット「エルドレインの森」発売後(正確には9/1のプレリリース以降)、使える全ての時間をMTGに費やした。夢にまで見た世界選手権の大舞台、後悔したくないという気持ちよりはむしろ、全力で立ち向かって自分がどこまでやれるのかを確かめたかったんだと思う。
結果は13位と自分の実力からしたら上ブレ過ぎた成績である事は疑う余地もないのだが、こうして振り返りの記事を執筆するにあたり浮かんでくるのは、もっと上手にプレイできたなというもの。どこかであと1勝できていればTOP8に入り、来年開催される3回全てのPTと世界選手権への出場権を獲得できたし、何よりもチームメイトのテルテルさんと一緒にTOP8に残って俺達がジャパニーズハンドシェイクだって言いたかったよとても。
だからといってこれからもやる事は変わらない。今以上に実力をつけてまた予選を突破してPTに出場する、それだけだ。
この記事では筆者がチームメイトと取り組んだ練習内容と大会の反省点について纏めた。日記と思って読んで頂ければ幸いだ。
2. 練習方法について
<メンバー紹介>
■世界選手権出場メンバー
テルテル
JV
佐藤啓輔
テルテルさんJVさんは前回のPT機械兵団の進軍からの調整メンバー。筆者は権利が無かったが2人はPT指輪物語でもチームを組んでおり共に頑張ってきた仲間である(当人同士はもう少し長い付き合い)。Hareruya Prosの佐藤さんは今回が始めてだったが、正確なプレイと冷静な分析で存在感を発揮しチームを引っ張ってくれて、筆者としてもとても勉強させてもらった。
お互いに気を遣いつつも言いたい事をきちんと言い合う事が出来、調整中の雰囲気がとても良かったことが今回の成果の一因かもしれない。
■協力メンバー
出場者以外にAkio Pros、明星Hive、石黒軍団の連合チームを結成、合計19人の協力メンバーを加えて大所帯での調整を行った。
日付を超えるまで練習に付き合ってもらい、様々なデッキ案を提案してもらい、彼らの協力無くして今回の成績はあり得なかった。本当にありがとう!!
ここから練習内容について触れる。
<ドラフト編>
■練習内容 ※①③は個人、②はチームで
①紙でのリアルドラフト(卓ドラ)×13回
②MTGA実装後はオンライン練習でピック、対戦、ピック譜検討
③石黒軍団ドラフト講師陣による補講
①リアルドラフト(卓ドラ)をやる
カットが存在しないMOやMTGAと卓ドラは似て非なるゲー厶。時間や人のリソースに制約がある中、可能な限り卓ドラで練習。
森山JAPAN(本人は不在)のドラフト練習に混ぜてもらったほか、石黒軍団ドラフトでは2日間で22名に参加してもらい今回から初めて2卓を立てる規模となった。感謝感激。
卓ドラの場合カードが不足気味になるため、不人気色のピック技術や余ったカードを上手に組み合せる技術が重要となる。上手い人のピックを参考にしつつ引き出しを増やす事を意識して反復練習。
②オンライン練習
平日はオンラインでドラフト練習。チームの人数が多い利点を活かし都合のつくメンバーで集まり連日開催。ピック譜を遡って確認できる仕様になっているのが個人的に一番気に入ってるポイント。点数のすり合わせや自分とは違うカードをピックする意見によりピックの安定度を高め幅を広げた。
③補講
何を隠そう筆者は石黒軍団ドラフトで2勝7敗という圧倒的な成績を叩き出した。この時点で本戦まで2週間をきっており自分よりも周りが焦っていたのを明確に覚えている。
そこで石黒軍団の中でもリミテッドが得意なメンバーが講師を名乗り出てくれて補講が開始。②と平行してMTGAドラフトを連打、ピックした画像を送り見直す箇所を赤ペン先生してもらうというもの。レア〜コモンの点数表の最新版を作成してもらったり、ピック指針をまとめたメモ(通称:まれノート)も作成してもらう等フルサポート体制により本戦まで研鑽を積んだ。
ドラフトの勝率を向上させるためには
①エキスパンション特有の知識
②リミテッド全般に共通する知識
が必要であるが、筆者は①②ともに不足している。分かっているつもりではあったが実際にプレイしてみてより実感した。
これらは一朝一夕で身につくものではないのでこれからも継続してリミテッドに触れるしかないが、闇雲に時間を費やすのではなく上手い人の意見を取り入れながら効率的な練習をしたい。
幸いにも石黒軍団では普段からリミテッドの構築について活発に意見交換が行われており、今までは時間を言い訳に一通り目を通すだけになっていたが、積極的に参加して疑問点や自分の意見と異なる部分のすり合わせをするよう心掛けたい。
<構築編>
■チーム調整ルール
・チーム調整デッキを大会で使用する際のリスト非公開の制約は設けない
・チーム調整での対戦中に観戦者を入れて周りが意見する
今回の新たな取り組みとして、デッキリストの秘匿性をなくした。これは発売直後にオンライン大会が控えている事から、協力メンバーのメリットを損なわないようにするためだ。これにより協力メンバーのモチベーションは参加メンバーへの協力+大会に向けたデッキ調整となり、より活発な意見交換がされたのではないかと考えている。
またルールという訳ではないが、チームメンバーの対戦は画面共有し複数で検討する方法を取り入れた。リアルタイムで解説やプレイの意図を共有する事でプレイのレベルが上がるだけでなく、デッキは微妙だが腕だけで勝ってしまう、という事例を減らせたのではないかと感じている。
また、これは結果論かもしれないが、新環境スタンダードという未開の地を開拓するにあたっては参加メンバー以外を加えた大人数での調整がうまく機能したのではないかと考える。もちろん人数が増えるにつれ色々な意見が出て取捨選択する側の負担も増えるし、意見が割れた時にどのような決断を下すのかなど大人数であるが故のデメリットもあったと思う。
しかしながら(少なくとも参加メンバーとしては)それ以上のメリットがあったと感じている。最終的にエスパーミッドレンジに4枚採用した《忠義の徳目》は、茂里さんが熱心に調整していたボロストークンから着想を得ているし、チーム練習ではAkioさんの青単アガサと何度も対戦をして、世界選手権では筆者もテルテルさんも青単に2-0での勝利をあげている。
母数が増えチーム全体として色々なデッキの感触を確かめる事が出来たおかげで、デッキパワーの劣るBadデッキを早い段階からデッキ候補から外し、その分の時間をミラーマッチの練習やサイドボード選定に掛ける事が出来た、という好循環である。
これはあくまでも新エキスパンションによって環境が大きく変動するスタンダードだったからこそ効果的だったとも考えられる。
パイオニアであれば各デッキを極めたマスタークラスに各デッキを担当してもらい対戦する事で自分の選択したデッキの練度を上げる方法が良いかもしれないし、その際に人数が多過ぎる弊害も発生するかもしれない。
モダンの調整については個人的にはまだよく分かっていないが、どのようにすればチーム調整の結果として緑トロンに四肢切断を入れる事が出来るようにだろうか。
今回の成功体験を絶対とせずに常に良い方法をチームで模索したい。
3. いざ世界へ
■最終成績
成績についてはハイライト形式で紹介。
スタンダード
デッキ : エスパーミッドレンジ
成績 : 6-2 (1日目4-0, 2日目2-2)
ドラフト
成績 : 3-3 (1st 2-1, 2nd 1-2)
合計
成績 : 9-5
順位 : 13位
■大会を振り返って
1日目の成績が良かったのでフィーチャーに映る機会が多かったが、そこでの成績は1-3と負け越し。緊張はしてないと思っていたが知らず知らずのうちに力んでいつも通りのプレイが出来ていなかったのかもしれない。
2日目のフィーチャードラフトのピックでも、リスクが高いと分かっていながら白緑に進んでしまい、結果として0-3してもおかしくないパワー不足のデッキを構築する事になってしまった。
配信を見返すと3つ上家のAnthonyと白緑の色がまる被りだった。彼は1-1《赤歯の執政、イェナ》をピックした後、1-2で《取り籠め》と《救世主、アーモント卿》の選択肢から除去である前者をピック、この2手目で流れたアンコモンが1-5で筆者の元にやって来たところから、それまで取っていた緑に合わせて白を意識するようになった。私の1-1は強レアである《ランクルのいたずら》。1パック目で黒はほとんど流れて来なかったがそれは下家も同じ。緑のカードは取れていたのでもう少し粘って黒を待てていたら、もしかしたら狙いたい色の組み合わせである黒緑のデッキを構築出来ていたかもしれない。終わった事はどうしようもないが、これは筆者のドラフトでの引き出しの少なさ、受けの狭さが如実に出た場面だったと痛感している。
ここから配信された中で特に印象深い場面について言及する。
【2ndドラフト vs Anthony(白緑)】
下の盤面、《王女、空を飛ぶ》で筆者の《赤歯の先兵》が追放され2章まで進んでいる。対戦相手のデッキにインスタントで協約するカードは《アルコンの栄光》と《ケランの光刃》の2枚。
ここで2マナ構えに対して筆者は2体での攻撃を選択。結果、当然といわんばかりに《ケランの光刃》を唱えられgg。
振り返ってみて、この時は対戦相手の方がデッキが強く焦っており、2マナ構えがブラフだった場合のリターンばかりに目がいきリスクリターンの計算を誤っていたのだと思う。ギリギリの盤面だからこそ冷静に。
【構築2戦目 vs Ken Takahama(エスパーミッドレンジ)】
配信は3本目から、貴重なミラー先手をいわゆる後手ハンドかつ3色出ない手札でキープし結果色事故負け。
キープした手札がこちら。
《地底の大河》
《地底の大河》
《天上都市、大田原》
《かき消し》
《否認》
《喉首狙い》
《敬虔な新米、デニック》
白マナこそ出ないが3枚のプレイアブルがあると思ってキープ。しかし唱えられるだけだ。ミラー先手は2ターン目から生物を展開して押し付けていくべきであり、どのように勝つかを全く意識出来ていない判断であった。
【構築4戦目 vs Wiley Edel(ドメインランプ)】
《砕かれた聖域》
《ラフィーンの塔》
《かき消し》
《策謀の予見者、ラフィーン》
《敬虔な新米、デニック》
《喉首狙い》
《切り崩し》
1本目はサイコロで負けて後手スタート、土地1枚さえ引ければうまく繋がると判断し上記の手札をキープしたが、その中には2枚の除去が。実質ダブルマリガンに近い手札かつ土地も2枚と心もとない。
総合的に考えてマリガンを選択すべき場面であった。
1本目を順当に落とした2本目は土地こそ2枚だが2ターン目から生物を展開出来る手札であったためキープを選択、一瞬土地は止まったもののカウンターも手札にあり許容範囲であった。しかしながらEdelも《金属の徒党の種子鮫》、《放浪皇》とマストカウンターを連打し筆者のカウンターを2枚消費させる。それにより筆者の2マナ構えに対しEdelが渋々放った《太陽降下》は打ち消される事なく解決。これにより長期戦に突入。
結果、この2本目はお互いライフを削りきる事なく終幕、1勝0敗1分でEdelに軍配が上がる。TOP8まで後2~3歩といったところか、この数歩は近そうに見えてあまりにも遠い。
机のすぐ横に時計はあり残り時間は見えていたしプレイスピードには気を付けていたつもりだった。しかし最初から出来ていただろうか。少なくとも1本目はもっと早く投了出来たし、ブラフで考えるふりをしている時間もゼロではなかった。それらの積み重ねで迎える事が出来たかもしれない3本目を、勝利を手放してしまったのではないだろうか。
今回多くの失敗をしたが、それはまだまだ成長出来る余地があるという意味だと前向きに受け取っている。幸いにもとても恵まれた環境で練習が出来ているので次のPTも遠くないと確信している。
4. 終わりに
夢のような時間はあっという間に過ぎ、気づけば日常が戻ってきて既に2週間が経過しようとしている。溜まった仕事や家事もそこそこに週末にはモダンでのプレミアム予選に参加を予定している。
何度も述べているがやはり競技MTGは最高に楽しい。たかがカードゲームを本気でやれる事、同じ目標に向かうチームメイトがいる事、もうしばらくこの環境に身を置いて頑張りたいと思う。
最後までお読み頂きありがとうございました。
これからもっと活躍出来るように頑張りますので、テルテルJAPANおよび石黒軍団の応援宜しくお願いします。
※我々を導いた【まれノート】をご紹介。ご一読のほど何卒。
以上