見出し画像

色(性質)空間の対称性へ拡大

■折り紙箱の対称性
■正6角形箱
2つの箱をユニット折り紙で作りました

画像1

どちらの箱も正6角形です.色の見分けのできない眼鏡をかけて見れば,どちらもおなじで6回回転対称(点群6)です.対称操作を書き下すと,
6={6, 6^2,6^3,6^4, 6^6, 6^6=1} ,鏡映対称はありません.
今度は色の違いにも気を配りましょう.
左の箱は,6回回転軸の60°回転ごとに,色が,赤⇔緑 と入れ替わります.
このような2色(一般には黒/白という)の交代と結び付いた6回軸を6’と書きます.
右の箱は,6回回転軸の60°回転ごと(左まわり)に,色は,赤→黄→緑 の順に置換します.このような3色の置換と結び付いた6回回転軸を6^(3)と書きます[(3)は上付文字です].左のような,2色(黒/白)交代と空間対称操作の結合は,シュブニコフ,右のような色置換と空間対称操作の結合は,ベーロフによって研究されました.空間対称操作(空間群)はフェドロフにより研究されましたのでフェドロフ群と呼ばれるように,これらの拡張された空間群は,シュブニコフ群,ベーロフ群と呼ばれます.(注)フェドロフ群,シュブニコフ群,ベーロフ群は,それぞれ周期的空間を記述する空間群ですが,ここでは,簡単のために有限図形を記述する点群を例にしています.
■シュブニコフ群の仕組み
左の点群を結合された対称操作を用いて6’={6',6'^2=3,6'^3,6'^4=3^2,6'^5,6'^6=1}と書きます.
図形を見てわかるように,色の変化を起こさない対称操作のみの集合,点群3={3, 3^2,3^3=1}が,部分群[実は正規部分群]として含まれています.したがって,対称操作の集合は次のように2つの集合の和(剰余類展開)になります:
 6'=6’・3+1・3={6'(mod3), 1}・3
これは,点群6'が,色を変えない正規部分群 3を法として,より単純な商群6’/3={1,6'(mod3)}に写像[準同型写像]されるということです.
(注)群3を法としてという意味は,点群3に含まれる操作で動くものは,すべて同じものと思えということです.
■ベーロフ群の仕組み
右の点群は6^(3),色を変えない正規部分群は 2={(6^(3))^3=2, 1}ですから,6^(3)/2={6^(3)(mod2),(6^(3)(mod2))^2, 1}
つまり,mod2というのは,2回軸で移るものは同じと思えということで,考察は図形の半分に帰着できます.例えば図形の右側だけ見ると,赤→黄→緑 の置換が起きることがわかるでしょう.

■正8角形の箱ー(非結晶点群)

画像2

左の箱は前回登場した正8角形のものです.点群は 8'
この中に含まれる色を変えない部分群は,正規部分群で 4
商群は,8'/4={8'mod(4), 1} です.
(注)ただし,正8角形のタイルで平面のタイル張りはできませんから,
有限図形の点群としての8はありますが,8回軸が周期的に並ぶと矛盾が起きます.つまり,結晶点群として8は存在できません.
例えば,正8角形の分子(オクタテトラエン)が,周期的に配列して結晶を作ったとしても,並進周期はせいぜい4回対称か2回対称でしょう.

(注)右の正6角形の箱はすでに取り上げたものと同じです.

■空間の対称操作と色の置換が結合された対称操作が作る黒白群(シュブニコフ群)や多色群(ベーロフ群)の概念を紹介しました.ここに現れるのは,空間の次元と異なる性質空間の次元が加わり高次元の対称操作です.色というのは性質の代表として使われます.実際には性質としていろいろなものがあります.例えば,結晶を構成する原子の位置は空間の対称操作ですが,原子に付随するスピンは空間と別の次元です.磁性体にはシュブニコフ群やベーロフ群が応用できます.

いいなと思ったら応援しよう!