極性と非極性,電池と棒磁石の対称性
n回対称軸に垂直な対称面がある状態 n:m
機械の回転部分●結晶●ボルタ電池と円柱磁石の対称性
このタイプの対称は,n回対称軸とそれに直交する対称面mをもつ状態です.n=1の場合は,ただの鏡映mですが,n=2, 3, 4, 5, 6, ・・・,∞に対して
2:m,3:m,・・・・・・,∞:m があります.
対称性n:mは,回転するように設計された物体に最も自然に現れます.回転の要請は,技術では頻繁に発生します;例えば,上射式水車,フライホイール(はずみぐるま)など(図).
ただの対称軸nとn:mの対称性の違いに注目しましょう.前者の対称軸nは極性軸ですが,後者の対称軸nは非極性軸です.
極性の対称軸nのある物体は,軸に沿って「前」と「後」で,回転が本質的に異なります(プロペラ、タービン).
一方,上射式水車に限らず,一般的にn:mの対称性を持つ物体ではnは非極性で,右手側と左手側が鏡映対称になります.
n:mの対称性は,3次元の回転体の特徴ですが, 装飾品や建築,彫刻などに使われるのは稀有です.結晶では,6:mの対称性が,例えば,アパタイト(図)に見られます.
n:mタイプの対称性の極限対称∞:mですが,この対称性を持つ図形の例を(図)に示します.それは,軸を中心に回転する貼り合わされた2つのコーンの形(ソロバン珠の形に似る)です.
単一のコーンの側面に布を巻き,その布が一方向にブラッシングされている状態を思い浮かべましょう;対称軸を含む縦の対称面がない対称軸は,静止(回転がない)状態で存在するのですが,回転状態には存在できません.
したがって,軸を含む対称面がないなら,何らかの回転が見出せる可能性があります.
その顕著な例が,円筒磁石です.磁石の真の対称性を発見するには,それを電気分野の類似物,ボルタ電池と比較することが有用です.
ボルタ電池とは,亜鉛の円盤,希硫酸を染み込ませた布の円盤,銅の円盤を交互に並べた電池のことです.この電池の構成要素を順にアルファベットA,B,Cで表すと,電池を構成するそれらの配列を次のように表すことができます.⊖・・・・・ABCABCABCA・・・・・⊕
この配列を左から右に読む場合と,逆に読む場合とでは,文字の順番が異なります.これは,ボルタ電池の軸が極性であることを示しています.軸の極性は,積層部分の順序だけではなく,電池の両端の電荷の違いにも現れます.もし,両端だけに同じ円盤,例えば亜鉛の円盤が出てきても,電池の極性は変わりません.電池の極性は,両端の素材ではなく,積層部分がどのように相互配列しているかにかかっています.ボルタ電池の軸は極性なので,電池の軸に垂直な対称面はありません.もちろん,電池に対称心は存在しません.
電池の軸を中心に任意の角度回転させても特性に変化がないことから,電池の回転軸は無限位数の対称軸∞とみなすことができます.これに加えて,軸に沿って(軸を含む)無数の対称面があります.∞・m この仮定は,ボルタ電池について分かっていることと何らの矛盾もありません.
磁石にも "極 "があるので,一見すると円筒磁石もボルタ電池と同じ対称性を持つと思うかもしれません.
磁石の真の対称性を見つけるためには,電磁気学や磁気光学などの多くの現象を利用します.
ここでは、そのような現象の一つに注目してみましょう.極を導体で短絡している円筒形のボルタ電池を考えましょう.電流は,電池軸に沿って流れます.電池内部の電流の方向は,マイナスからプラスへ向いています.この電流に可動式の円筒磁石を近づけてみます.円筒磁石は電池の軸に垂直になるように回転します.電池のプラス端を上に向けた配置で,円筒磁石が電池の前に見える観測者から見ると,円筒磁石の南極Sは左に向きます.
その全体像を(図)に示します.
磁石の軸が極性であった場合,すなわち,磁石の2つの「極」が互いに等しくない場合,電池の対称面の1つに対して,極が鏡像の位置に配置されることはありません(図ではこの面が破線で示されています)*.
むしろ,実際に存在する状況は,磁石は,軸に垂直な対称面を持っており,その軸は対称軸∞と一致していると仮定することで説明できます.この仮定は,磁石のすべての既知の特性によって支持されます.
したがって,円筒磁石(図)は,∞:mの対称性を持っており,回転する張り合わされた2つのコーン(図)と同じ対称性です.
まさにこの対称性があるからこそ,磁石の中では回転運動が行われていると考えざるを得ないのです.磁石の北極と南極に全く同じ方向に素環状の電流が流れるというアンペールの仮説は,この運動のモデルとなっています.
磁石の真の対称性は,鏡映対称になる磁石の両端を「極」と呼ぶことを支持しません.磁石には,私たちが受け入れている意味で「極」はなく,磁力線は極性ではなく軸性であります.偏光の性質をご存知の方のために,光学的性質に関して言及すると,強力な電流を流したソレノイドの中にガラス棒を入れても,同じ∞:mの対称性があります.偏光をこのガラス棒の軸に沿って照射すると,電流の方向によって,偏光面の回転を,右回りや左回りに変化します.こうして,対称性と運動の係わりがより明確な形になりました.
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