空間を充填する多面体の組み合わせ
1.立方体(角砂糖)を積み重ねて,空間を隙間なく周期的に埋めることができます.下図の出発点にある黄色い立方体(シュレーフリの記号で{4,3})を並べた図がそれです.このときの空間充填では「立方単純格子」ができます.
2.立方体の頂点を切り落とした(切頂といいます)立体を考えましょう.頂点の切り口は正3角形で,立方体の正方形の面が正8角形になる位置で切頂します.すると,下図の2番目のように,切頂正6面体(シュレーフリの記号で[3,8,8])と正8面体{3,4}が組み合わさって空間を充填することがわかります.
3.下図の3番目は,立方体の切頂の切り口がさらに大きくなった場合です.立方体の正方形の面は45°回転した小さな正方形になります.このときは,正8面体{3,4}と半正多面体[3,4,3,4](あるいは6・8面体と呼ぶ)とで空間を充填することがわかります.
4.切頂でできる正3角形をさらに大きく,切り口が正6角形になる位置で切頂します.このとき,組み合わされる2つの立体は同じ形になります.つまり,切頂正8面体(あるいは半正多面体[4,6,6],ケルビン立体とも呼ぶ)だけで,空間を充填できます.このときの空間充填では「立方体心格子」ができます.
■図の3番目,半正多面体[3,4,3,4]と正8面体{3,4}の組み合わせの図で,正8面体だけを抜き出すと,以下のように頂点でつながっています.
このような構造は,ペロブスカイト CaTiO3 という物質の結晶構造に見
られます.正8面体の頂点に酸素原子Oがあり,正8面体をつないで骨組みを作っています. 正8面体(青色)の中心にはチタンTi原子,骨組み中の空いた穴(黄色)の中心にはカルシウムCa原子があります.
ペロブスカイト構造は,強誘電体や酸化物高温超伝導材料などの結晶構造に見られます.また地殻を作るケイ酸塩鉱物MgSiO3(カンラン石など)はマントル下部の超高圧下でこの構造になることが知られています.
美しい幾何学,p.63,64をご覧ください.