ネットワーク・パターンの対称性1
対称性というと有限図形の対称性が教科書にでて来ます.有限図形の対称性(例えば,正6角形を思い浮かべると)では,対称操作の不動点となる1点(特異点)があります.もし,図形が正6角形の場合なら,正6角形の中心がこの特異点で,この点を通過する6回回転対称軸があります.
これから,このような特異点は存在しないが,特異直線を持つ図形,すなわち,棒状,片面帯,両面帯の図形について,その対称性を調べていくことにします.今回はその第1回目です.そのような特異直線は図形の並進軸と一致します.図形に並進対称性のある場合の考察を始めましょう.
1つの点●Aと並進ベクトル➡aが与えられたら,上図のように,Aと同価な点が,aの間隔で一列に無限に並んでいる点系が得られます.この並進軸は特異直線と一致しています.この直線上に無限に繰り返し点Aが配列している状態は,点Aが並進ベクトルaの整数倍naシフトしても,無限に並んだ点系全体としては,始めの状態と一致しています.結局,並進の方向が特異直線と呼べるのは,これが不動直線を思わせるからです.
下図は,平行でない並進軸が2本ある図形で,並進ベクトルbを,始めの1列に並んだ(1次元の)点系を,bの方向に次々と繰り返し並べて行くので,2次元の点配列が得られます.3次元への拡張も同様で,一つの平面上にない3つの並進ベクトルで,1つの点を無限に繰り返し配置し,3次元の点系(格子と呼びます)が得られます.
ただし,点の形は理想的な対称性∞・m(∞の回転対称軸をもち,その軸を含む鏡映面がある.点は位置だけを示し,その大きさは意味がありません).点系のすべての点は同価(1つの点を並進で並べたものなので)です.
同価点系を生み出す並進軸(並進ベクトル)の組みは,同じ点系のすべての点を生み出せればよいので,1種類とは限りません.
例えば,上図a,b,cの3つとも点の配列(点系)は同じです.しかし,点の結び方(並進ベクトルの組み)は違います.それぞれの図の点は,異なる2種類の直線の上に乗るように整理されています.点の配列は同じでも,点を結ぶ直線まで入れると対称性が変化することに注意しましょう.
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