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モワレについて(その3)
下の写真は,工事現場のネットが折り返されて2重になっているために観察されるモワレ縞です.このモワレ写真は,https://note.com/sgk2005/n/n544058788758 に掲載しましたが,もう少し言及したいのでここに続けます.
私は,子供のころ家にあった織物検査器というもので遊んだことがあります.これは,標準となる格子模様がガラスに刻んであり,織物にこのガラスを重ねると繊維の格子周期と干渉し生じたビートでモワレの縞模様が観察できます.その織物(例えば,このサランネットは何メッシュ(本数/1インチ)かとか,織り方が均一でなくどの程度乱れているかなどが,モワレ縞から評価できます.
工事現場の2重幕を通して壁に投影されたこの縞模様の写真から,昔見た織物検査器の干渉縞を思い出しました.
■実験
(1)2つの同一な1次元格子(間隔λ)がわずかに傾いているときに生じるモワレ縞
2つの格子の傾き2θが,生じるモワレ縞の間隔dからわかる.
交差角2θが微小であるほど,モワレ縞の間隔変化は鋭敏になる.
(2)2つの格子は互いに傾いてはいないが,わずかに格子間隔が異なるときに生じるモワレ縞
1つの格子を標準にして,もう一つの格子間隔を測定する織物検査器などに利用されます.
2つの格子の周期をそれぞれλ_1,λ_2とすると,モアレ縞の周期Lは,これらの最小公倍数になる.
1/L=1/λ_1−1/λ_2
■格子というのは,並進群(並進ベクトルの作る群)の”図的表現”です.
2枚の格子の干渉で生じた新しい格子の周期は,もとの格子の粗いサンプリングになっているわけで,新しい格子は,もとの格子の超格子(あるいは部分格子という)になります[元の並進群の部分群になります].
格子が重なって,拡大された(粗い)格子が見える現象は,干渉(ビート)と同じことです.(カバーの図をご覧ください)
実際に,2つの原子網面が重なって,このようなビートが見えることは,
電子顕微鏡で格子像の観察をするときにもよく起こります.