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2024数学月間(第3日目)1「算数・数学と生活や社会のつながりを実感 体験できる授業」
2024数学月間(第20回)の第3日目(2024.08.05)は,東京大学数理科学科棟002教室で開催され,最初の講演[13:40-15:10]は;
「算数・数学と生活や社会のつながりを実感 体験できる授業と,Do MATH 同志社中学校数学博物館」園田毅(同志社中学校)でした.数学月間での園田氏の講演は,2020年に続き2回目です.2020年の数学月間懇話会は,Covid19の流行拡大のために,リモートで,7月22日,23日,29日,8月22日の4日開催し,園田氏の「Do★MATH同志社中学校数学博物館の紹介」は,2日目の7月23日でした.その時の講演録は数学文化No.35(2020) にあります.
■ 同志社中学校数学博物館
Do★MATH同志社中学校数学博物館は2016年5月に開設されました.2010年のキャンパス移転で,教室の余裕ができ,全ての授業を教科専門の教室で行える教科センター方式(生徒が移動して来る)ようになりました.数学科には6つの教室があり,ふさわしい数学者の名称が付いています.2階3階の教科オープンスペースに,Do★MATH数学博物館があります.展示内容は,中学生の学習内容を中心に,教員と生徒が作成したものが多くあります.
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数学博物館展示物や各教室のパネルなどで,学習する数学テーマにふさわしい教材に,いつでも生徒は触れることができます.
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この廊下は,距離と縮小(相似遠近法)を体験実感できる教材になります.
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数学の本質は抽象化にありますが,具体的な場に立ち,そこから生まれた抽象化前の数学概念のイメージをつかむことは,非常に大事なことです.
◆講演録筆者のコメント----------------------------------
これは数学月間の思想と同じです.我々の社会や自然に足場を置き,そこからの視点で数学の働きを紹介するのが数学月間です.同志社中学校は,算数・数学と生活や社会のつながりを実感 体験できる授業を実践しておられます.社会への応用能力を重視するロシアの数学教材にも同様な思想が見られます.以下を参照ください.
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■ 教材例: ひと裁ち折り
折り紙を教材に使う.近年では,折り鶴の方法も知らない人が増えているらしい.
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■ 数学教育の問題点
OECD実施のPISA(2012)数学についての国立教育政策研究所資料によると,
65か国中,興味関心60位,道具的動機づけ64位,自己概念(自信があるか)65位と低い.数学を自分のものではなく別の世界のものと感じていて,避けられている実態がわかる.数学の本質は抽象化にあるのだが,その前に,具体的な場に立ち数学の役割に触れ,概念のイメージを把握する教育が必要である.
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■ どのような数学授業をするか
絵を描かずに基本規則だけ習う絵の授業,音楽をやらずに楽譜規則だけ習う音楽の授業のような授業を数学はやっているのではないだろうか?
同志社中学校で行ったいくつかの授業教材が紹介された:
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■ 教材例: 素数ゼミ
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12~18年周期のセミの最小公倍数を調べる.素数が入ると最小公倍数が大きくなり,13年セミと17年周期セミが残る結果が得られた.
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(参考)最大公約数を見つける互除法の図形的解釈
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■ 教材例:アイドルと統計
60本の中に,大吉,吉,中吉,小吉,末吉,凶の入っているおみくじを作った.生徒が2人組になり,おみくじを引き,その結果を記録する作業を繰り返す.これらの結果から,それぞれの札を引く相対度数を求め,おみくじを構成するそれぞれの札の本数を推定した.
■ 教材例:地球を測る(エラトステネス)方法と比例
エラトステネス(紀元前200年ごろ)は,アスワン(北回帰線上)の町の深井戸は夏至の日の正午にだけ太陽の光が底までさし込むということを知り,アスワンから北に920km離れたアレクサンドリアで,夏至の正午に太陽の高度を測定し7度傾いていることを得た.これから,地球の円周を46,400kmと推定した.これと同じ方法で地球の円周を測定することを課題にした.
京都の同志社中学とパラオ高校は,ほぼ同じ経線上にあり,パラオは赤道に近いので,エラトステネスの方法で地球の大きさが測れる.9月3日の正午にパラオでは太陽が真上に来て街灯支柱の影が失せる.この瞬間に同志社中で垂直に立てた1mの棒の影の長さを測定し,52cmを得た.これから,太陽の位置が頭上から62.5度にあることが分かった.つまり,同志社中とパラオとは地球中心から見込む角として27.5度離れている.googl earthによる両地点間の距離3,073kmを用いると,地球の円周40,225kmが得られた.
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◆ 講演録筆者のコメント--------------------------------
地学には数学と連携できる良いテーマがたくさんある.教科の連携は,人間生活に足場のある身に着く知識の拡大ができる.講演録筆者は,地学の教員だったことがあり,宮沢賢治の「楢の木大学士の野宿」を用いて国語科と連携したことが思い出される.
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■ 数学博物館の展示物のいくつかをお持ちいただいたが,触れる時間が十分にとれずに残念だった.これらは,動画の最後の部分をご覧ください.