3角空間の世界
«Квантик» No1, 2021に,アレクセイ・パノフ,ドミトリ・アル・パノフ,ピョートル・パノフらによる表題のエッセイがあります.この問題を発展させると,私の興味に関わりのある分野へつながりそうなので,まず,基本的事項を簡潔にまとめておくことにします:
■正3角形の内部の1点から,それぞれの辺に下した垂線の和は,常に一定であることを証明しなさい.[各自試みてください]
つまり,△ABCは正3角形で,内部の任意の点Tから,各辺に下した垂線の長さの和 a+b+c=正3角形の高さ(一定) ということを証明してください.
■長さa,b,cの3つの線分が,3角形を構成できる条件は,
どの1辺についても,残りの2辺の和の方が大きくなることです.
もし,そうでなければ,3つの線分が繋がることができません(あるいは,三角形がペチャンコになります).
つまり,以下の3つの3角不等式が同時に成立することです.
a < b + c
b < c + a
c < a + b
この3つの3角不等式が同時に成立する点が存在できる領域は,
下図に示したような4つの合同な正3角形の真ん中の小さな正3角形の内部であることは明らかでしょう.この真ん中の小さい正3角形の内部を”3角空間の世界”と,このエッセイでは呼んでいます.
■”3角空間の世界”の地図作り
簡単のために,△ABCの高さを1とします.従って,a+b+c=1です.
”3角空間の世界”の内部の点を,a,b,cで表すことにします.
以下の図では,このような点を3点ほど表示しています.
次に,a,b,cの数字を入れ替えることを,このエッセイでは順列と呼んでいますが,私は対称性と呼んだ方が適していると思います.対称性を考慮して,”3角空間の世界”の点を色で分類した図が以下です.
赤い点(中央):a=b=c で作れる3角形は正3角形
緑の点:a≠b≠c≠a で作れるのは一般の3角形
青い点:a=b or b=c or c=a で作れるのは2等辺3角形
[訳者注)ここで,現れる点の数は,結晶点群でいう,特殊点と多重度の関係と同じです.つまり,緑の点は一般点で,多重度は1,同価点の数は6個.青い点の多重度は2,同価点数は3個.赤い点の多重度は6,同価点数は1個です.]
■次に,a,b,cの数値を(R,G,B)の色と考えることにします.
点は△ABCの内部にあるとし,0≦a,b,c≦1です.
(1,0,0)は赤,(0,1,0は緑,(0,0,1)は青です.(0,0,0)は黒,(1/3,1/3,1/3)はグレー,(1,1,1)は白などです.△ABCの点を,このような色(a,b,c)に基づき着色することが自然なのですが,このようなカラーリングは,残念ながらコントラストが低く,明るさも足りません.そこで,(1-2a, 1-2b, 1-2c)と計算した色で着色するとうまく行きます.[訳者注)この変換の意味は,△ABCの点を,"3角空間の世界"△RGBの中に反転して写像するようなものです]
■さらに2つの地図
さまざまな種類の地図は,私たちを取り巻く世界の理解を広げてくれます.”3角空間の世界”を均等に埋める点のネットワークを示す別の地図が以下の図です.
次の地図では,色のついたドットが,そこの形に対応する小さな3角形アイコンに置き換えられています.
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