バクウこまの実験
<東京おもちゃまつり>は,東京おもちゃ美術館にて,毎年10月半ばに開催されています.今年は,新型コロナウイルスの感染拡大のために開催は困難でしょうね.
2017年10月14,15日に開催された<東京おもちゃまつり>は,両日とも冷たい雨の降るあいにくの天気でしたが盛況でした.私は10月15日に出かけ,バクウ研究所の富川義朗先生と佐藤芳弘先生にお会いしました.
振動で廻すトントン・コマなどの,いろいろな「バクウこま」の展示を拝見しました.その原理はなかなか奥が深い.富川先生たちは,振動を回転運動に変える超音波モータの発明者です.
■私は,ミラクル・ツインという「バクウこま」に興味をもちました.左右の回転子の回転は互いに逆回転で,右の回転子は5回対称の模様が見え,左の回転子は3回対称の模様が見えます.不思議です.
私自身,考えれば考えるほど疑問が沸き上がります:
①なぜ,左右の回転子は逆回転するのか?
②なぜ,台座の回転モーメントと軸芯の回転は逆回転なのか?
③なぜ,4回対称の図形が,5回対称や3回対称に見えるのか?
納得できない現象ばかりです.高速度撮影をして観察することにしました:
高速度撮影・解析1
右側の回転子の軸芯は回転子と接着しています.一方,左側の回転子の軸受け穴と軸芯は接着されておらず,回転子の軸受け穴径は,軸芯径の1.5倍程度で”ガタ”があり歳差運動を起こします.
回転の向きを観察すると,中央の偏心回転子の回転方向に対して,左の回転子は逆回転,右の回転子は同方向に回転します.そして,右の回転子には静止した5回対称の模様が見え,左の回転子には静止した3回対称の模様が見えます.
高速度撮影・解析2a
解析2の写真は,撮影前に,左側の回転子の軸受けに細工をして,回転子の軸受け穴と軸心が固定されるようにしました.すると予想通り,左側の回転子の運動は右側の回転子と全く同じになりました.どちらも5回対称の模様が見えます.
■解析1の観察に基づき仕組みを考察
中央の偏心した回転子が生み出すのは単純な振動ではなく,台座全体の回転モーメントです.台座全体(台座の左右にある軸受け穴も載せて)が公転と言われる軌道を描き平行移動します(決して,軸受け穴が回転するわけではありません.平行移動です).
左右の軸受け穴の中には,軸芯が通っていますが,少しの”ガタ”があります[軸受け穴径は軸芯径の1.2倍程度].軸芯は公転の向きと逆向きに自転をします(これはコペルニックスの定理).軸芯は歳差運動もするはずです.
軸芯の自転と歳差運動の位相との相互作用が,軸芯に結合した回転子の上下波打ち運動を生じ,5回対称模様が静止して見えるのではないかと推理します.
左側の回転子については,軸芯と回転子は一体ではなく,回転子の軸受け穴径は軸心の1.5倍ほどあり,かなりの”ガタ”があります.軸芯の歳差運動の位相は,軸芯の回転と逆方向で,回転子への回転の伝達は,ちょうど皿回しと同じ現象で,歳差運動の位相により伝えられます.左側の回転子の軸受け穴の”ガタ”は大きいため,大きな上下波打ち運動になり,3回対称が現れるものと思います.
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