見出し画像

X線で見る表面・界面zoom講演へのお誘い

暑い日が続きますね.いよいよ,7月22日から始まった数学月間(7/22~8/22)の最終日です.ZOOM講演会4回目は:8月22日,15;00~16:30,「X線や中性子で見る表面・界面」,桜井健次(元物質・材料研究機構)を開催します.
社会と数学の架け橋=数学月間の期間は,22/7=3.14・・と22/8=2.71・・に因みます.
数学月間の会会員でなくてもどなたも無料で参加できますが,参加登録が要ります.http://sgk2005.saloon.jp でオンライン申し込みができます.
事前登録されると,ZOOMのURLをご連絡しますので,ZOOMをインストールしたpcやスマホでご参加ください.

これまでのZOOM講演のビデオのリンクは,数学月間の会
http://sgk2005.saloon.jp/youtube でご覧になれます.

■8月22日は,X線(あるいは中性子線)と物質の話です.
X線は物質の内部に非破壊で入り,物質を構成する原子とさまざまな相互作用をしますから,これを観測すると物質のさまざまな情報が得られます.
観測した情報の解析では,数学が使われることは言うまでもありません.

X線は,光や電波と同じ電磁波の仲間です.私たちの目に見える可視光のエネルギーは,赤~紫で1.6eV~3.3eV程度ですが,X線では数keV~数十keV程度というエネルギーの領域です.電磁波はMaxwell方程式で記述され,ここから得られる平面波の解から,電場や磁場の振動方向は互いに直角で,進行方向の波数ベクトルに対して直角である(横波)ことがわかります.
物質によるX線の散乱現象は,物質を構成する個々の原子が,入射X線の振動電場に置かれると,個々の原子に束縛されている電子が振動します.こうして,原子の位置に振動する双極子(入射X線と同じ周波数)ができ,入射X線と同じエネルギーで,各原子が新たな発生源となって球面波が放射されます.これを物質によるX線の散乱といいます.この散乱はエネルギーの変化のない弾性散乱です.物質を構成する原子の位置が結晶構造に従って,周期的に無限に繰り返しているなら,散乱X線は干渉を起こします.これをX線回折とも呼び結晶構造の情報が得られます.

入射X線のエネルギーが丁度,電子と原子核の結合エネルギー付近ですと,X線の吸収が起こり,電子が結合を切り光電子が放出され,放出された光電子波が放出原子の周囲の原子で散乱され,吸収原子とまた相互作用をし吸収を変化させるなどの現象も起こります.

このように,物質にX線が入射した時には,さまざまな現象が起こります.現象の対称性には,それが起きた物質舞台の対称性が反映されるべきです.また,物質と入射X線(プローブ)相互作用は,それぞれ有用な測定技術として発展しています.これらの現象の記述,同じことですが解析にはいろいろな数学が使われます.

さて,物質を巨視的にとらえると,光と同じくX線に対しても,反射率や屈折率,吸収率のようなマクロな実験ができます.関連する物質の巨視的量は誘電率や複素屈折率です.光学の時と同様,複素屈折率の虚数部は線吸収係数に関係がありますし,反射率と吸収率はK-K変換で互いに結びついている量です.

物質の表面にすれすれに入射するX線は全反射し,物質内部にはほんのわずかしか侵入しませんので,非常に表面に敏感な測定ができます.
また,物質に斜めに入射したX線の振幅反射率は,光と同様フレネル反射係数で記述でき,薄膜や多層膜の深さ方向の内部構造や,界面粗さを知ることが非破壊でできます.



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?