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童貞おじさんリバーシブルムーブ

「はじめまして。いや、なんてことないですよ。そういえば今日は広島からですか?あ、いや、はい。そうなんですよ。そうなんですよ。さっきも別の場所でこの話はしたんですけど、もちろん。なんていうかその、まだ知らない感じというか初耳みたいなフリしちゃいました。さすがにちょっと無理ありましたかね。指摘してくださってありがとうございます。あぶないあぶない。この人なんか知らないフリしてる…ってバレた状態でこの後の会話を繰り広げることになるところでした、ふ、やっぱり知ってること知らないフリして聞くのっておかしいんですかね。
SNSって魔窟みたいなとこだと思うんです。僕は。好きな人やらモノのことが知れちゃうじゃないですか。なまじ。で、本人とはやりとりどころか会話もないのにこちらだけに思い出がつもりつもって完全に頭でっかち状態ですよ。知りすぎてても気持ち悪いかもですし、知らなすぎてもつまらないかもですし。かといって知ってるのに知らないフリするとさっきみたいなおかしなことになっちゃうじゃないですか。ネットストーキングってほどじゃないとは思うんですけど良くないなとは思いつつもみちゃうんですよ。どうしても。知りたくなっちゃうんで。これって僕が悪いんですかね?
部屋に置いてある漫画とか雑誌とかを別にかつて勧めたことがあるわけでもないのに、あ、これ、好きなやつでしょって言われて嬉しいのは自分のこと知って欲しい人からだけなんじゃないかなとは思うんです。あまり仲のよくない親からこれをされたとき、何勝手に見てんのかとか、今はもう好きでもないのにとか、そんな話したこともないのになんか気持ち悪いなとか、そんな感じしたんですよ。あれ嫌だったな。ん、まさかこれと同じこといまやっちゃってたりします?これ。や。
嗚呼。そんなつもりじゃないんです。信じてください。誰でもいいわけじゃないんです。こんなにおかしくなることないんですから。怖い?やっぱりそうですよね。いえ、いいんです。はっきりおっしゃって下さった方がこちらとしても気楽ですから。今まさにコミュニケーションが始まったのだと感動すらあります。ええ。はい。え、いいんですか。本当に。あは。こういうこと滅多にしないので。じゃあ。あーっと。これどうするんだっけ。あここのボタンを。なれないこ、じゃあ僕が読みとあいや、じゃ、僕がはい。いいんですか。よかった。助かりました。次の仕事決まったら教えてくださいね。知り合いつれてみんなで伺いますから。ええ。」
「そういえば今日は広島からですか?あ、いや、はい。そうなんですよ。そうなんですよ。さっきも別の場所で

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