タクシーばあちゃんメモリアル酸漿
ホオズキというのは植物で実(み)は明るい橙色をしている。橙は柑橘類の果実で実際のホオズキの色は赤橙色に近い。その外見は横から見るとハートのようにみえる立体で、ぼんぼりの和紙のような薄い皮の中は空洞になっている。ぼんぼりは紙や布がシェードになっていて、その中で豆電球やロウソクの光が灯される。その薄皮を破るとプチトマトのような実があって、それをよく揉んで柔らかくしてから中身をだして、口に含んで上手に吹くととてもいい笛になるらしい。
たしか山と海とだかの2種類があって、いいやつは長持ちでピィーといい音がして持っている子がうらやましかったという。
墓参りのタクシーの中でこんな話を聞いた帰り道
、聞いた通りに真似してみたがよく揉む以降の手順が不明で、何がどうなったらピィーにたどり着くのかは助手席の祖母本人にも最早わからないようだった。ほころびてなお安らぎと在りし日の輝きだけの結晶となった思い出のかけらを受け継ぎ、手元にはお供物の柔らかな赤橙の酸漿の実だけが残った。