ゆらゆら揺蕩いゆめ宿in myヘッド
客夢(かくむ)というのは「旅先で見る夢」という意味なんだと。家と違って外で見るのは他所行きの夢ってことなのかな。
他所行きっていうと”他所行きの服”とか親戚なんかの家に行く時とかに着る服のイメージで、普段あんまり着ないから綺麗めだけど礼服やら正装ほどじゃないみたいな。そんな感じ。だからその親戚の家ではおとなしくしちゃうだろうなって思うと、文字通り他所他所しい感じで、すっかり”借りてきた猫”だという言葉が浮かぶ。
本当は、客夢という文字を見た瞬間から直感的に借りてきた猫が登場して頭の中をよこよこ歩いていたんだけど、自分でもその理由がわからなくて。客夢と借り猫をつなぐ激細の糸をなぞってみたらこんなことをどうやら感じてたみたい。こういうのって誰かと共有するの難しいから困らせることも多いけど、たまにぴたっとはまると気持ちいい。「わかるの!?嬉しい!」ってなって、よくよく話を聞いてみると「あぇ!なんだそれ!全然違うこと考えてるじゃん!」みたいになってもむしろその方が楽しい。
10時ごろとか早めに眠ると夢をみることが多いけど、昨日は遅くても今朝ゆめみてたしな。そういえば、起きてても特に楽しいこともないのでとにかく眠れるだけ眠っていた時期があったのを思い出した。夢をみて、途切れて目が覚める。もちろんみないこともあるけど。それでもまた眠る。どんなに楽しくてもつまんなくてもまた覚める。そうするとまだ夢のことが思い出せる空間にいて目がしぱしぱして、水のみたいとかトイレ行きたいとかこれからやることみたいなのを一つ考えるごとに夢のことを致命的に忘れてしまう状態になる。どんな夢でもまだまだ続きが見たいから完全に覚醒する前にもう一度眠りにつく。戻れることもあるし、そうならないこともある。よく見たのはどんなにブレーキ踏み込んでもぬるぬる進み続けてゴッとかドゴッとかガッとかいって前にいる車にゆっくりぶちあたっていくのと、身体に力入れるとじわじわ上に浮かんだりして立体的に散歩するやつ。最近見ないな。もう眠れないってなって仕方なくトイレにいくと見たことない色のがでてきてビビる。今何時?朝方?夜?外薄明るいけど。まあどっちでもいいか。
ところで客夢は普段見る夢とはひと味違うかな。たのしいものなのだろうか。旅先で客の気分で見る夢。お客さんのようなどこかよそよそしい夢。じゃあ、たとえば「夢」にとって人間の頭が「宿」みたいなものだったとしたらどうだろうか。そうなれば「夢」は頭の「宿」に泊まりに来る「客」みたいなものだ。普段はその辺をゆらゆら揺蕩っていて、座りの良さそうな頭を探しているのかも。夢はどんな姿にでもなれるんだけど、普通がなんだか分からなくって、真似する見本を探してる。今夜の宿が決まったら、頭の中はおもちゃのブロックのバケツみたいだ。散らばる記憶を組み立ててイヌや車やお城をつくる。形の都合で組み合わせると荒唐無稽な夢にもなるし、あれこれこちらが注文すればくたびれるけどいい夢にもなる。最後はなんだか気に入らなくてガチャンと壊すと目が覚める。夢の終わりはいつも唐突だ。客夢は「また、だめだった。」と呟いて次の頭を探しにいくんだろう。
だいたいいつもは家に住み着いている知り合いみたいな夢が泊まりにくるというか住み着いてるから、似たようなやつだったり、こちらの好みや嫌がる悪夢も心得ていて、上手にブロック遊びをしてくる。こいつらはさっきの寂しげな客夢じゃなくて知人夢(ちぢみ)だ。読み仮名的には(ちぢむ)が妥当だが、打ち間違えた結果かわいかったのでそのままにする。良くも悪くも知人夢とは心の距離が近いので、たまには旅行にでも行って客夢を見るのはいかがでしょうか。