ここがヘンだよブリット・アワード
今年3月2日(現地の日時)に開催予定のイギリスで最も権威のある音楽の賞の1つ、ブリット・アワード。
その年に活躍したミュージシャンを讃え新たな才能を見出すだけでなくジェリ・ハリウェルのユニオンジャックドレスみたいに新たな音楽文化が生まれる場でもあります。
そんな権威ある賞ですが色々ツッコミたくなる所があるのもブリット・アワードの醍醐味。
今回は過去「ん?」と思ったブリット・アワードの変な所を紹介します。
その1 Viva la Vida不遇過ぎ
2008年世界中でヒットしたコールドプレイの名曲"Viva la Vida"。
その翌年の授賞式ではその年最多4部門ノミネート、会場でライブパフォーマンスをしたにも関わらず何一つ受賞できませんでした。
同じく4部門ノミネートしていた新進気鋭の女性歌手ダフィーは3部門受賞した上にそのうちの1つ『最優秀ブリティッシュアルバム』はコールドプレイから勝ち取っていました。
その他コールドプレイの代わりに受賞したのは『最優秀ブリティッシュグループ』がエルボー、『最優秀ブリティッシュライブアクト』がアイアン・メイデン、そして『最優秀ブリティッシュシングル』が我らがガールズ・アラウドのザ・プロミスとなっています。
ちなみにグラミー賞は2部門受賞しています。
その2 アデルに賞あげ過ぎ
女性歌手の中で歴代最多受賞者なのがアデル。
2008年に受賞してからものすごい勢いで記録を更新し続けており、男性最多受賞者のロビー・ウィリアムズの13賞に迫る12賞を受賞しています。
しかしアデルがアルバムを出した年は他のミュージシャンが確実に賞を取れなくなります。
例えばフローレンス・アンド・ザ・マシーンはアデルとアルバムリリースする時期が被りがちなためノミネート数の割に受賞数が少なく過小評価されています。
受賞者が偏っていて実績があるのになかなか受賞できないミュージシャンがいるのもブリット・アワードの問題の一つです。
実はイギリスロック界の重鎮ローリング・ストーンズやピンク・フロイドはブリット・アワードを受賞していないんです。
今年ローリング・ストーンズがノミネートされているので彼らが初受賞するかどうか見所の1つとなっています。
その3 マジョリティが強過ぎ
女性ミュージシャンが最多受賞する年もありますが基本的には白人男性が優位なのがブリット・アワード。
その代表例が長年女性グループが受賞してこなかった『最優秀ブリティッシュグループ』でした。
過去の受賞歴を調べてみましたが1987年に男女混合バンド『ファイブ・スターズ』が受賞しただけで後は白人男性バンドが圧倒的に強い部門となっていました。
しかし2021年遂にリトル・ミックスが受賞し41年の歴史を塗り替えました。
彼女達がスピーチでスパイス・ガールズ、オール・セインツ、シュガーベイブス、ガールズ・アラウドの名前を挙げましたが彼女達はかつてノミネートされたものの受賞できなかったガールグループです。
リトル・ミックスの受賞に彼女達をはじめたくさんのUKガールグループのメンバーが祝福しており最高のガールスクワッドとなっていました。
2020年代になると様々なミュージシャンが人種の壁を壊していきます。
2020年、リナ・サワヤマがイギリス国籍が無いのを理由にブリット・アワードだけでなくマーキュリー賞のノミネート資格が無かった事をSNSに投稿し問題提起しました。
そこからリナを支持する人達の力で世論が動き彼女はブリット・アワードとマーキュリー賞へのノミネート資格を勝ち取りました。
また2022年にInfloが白人以外で初めて『最優秀プロデューサー』を受賞しました。
彼はアデルの『30』やリトル・シムズの『サムタイムズ・アイ・マイト・ビー・インドロヴァート』をプロデュースしておりリトル・シムズも彼の受賞を祝福しています。
ブリット・アワードは多様性に配慮して2021年に男女別にしていた賞を統合しました。
ノンバイナリーのミュージシャンへの配慮ですが受賞者数がこれまでの半分になるためより受賞が難しくなります。
また『最優秀ブリティッシュグループ』みたいに男女の枠組みが無かった賞が圧倒的に男性優位だったため同じ目に遭わないかという疑念もあります。
ブリット・アワードはどこへ向かうのか
個人的にブリット・アワードに注目し出したのがコールドプレイが何も受賞できなかった時ですが色々変だなと思う所を掘り下げてみたらイギリスの音楽界ってまだまだ保守的な所があるなと思いました。
本来人種や性別に関係なく良い音楽は評価されるべきですが、ブリット・アワードがこれまでの保守的な体制から変われるのかまだまだ疑問が残ります。
受賞者への偏りを少しでも減らし、才能のある人達が正当に評価される場となってほしいです。
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