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ノルウェー政府(上) ~巨大投資家~

A:上場企業の大株主を見ていると、ノルウェー政府の名前を見ることがあるのですが、なぜでしょうか。

T:ノルウェー政府年金基金のこと。世界有数の政府系ファンド(SWF:Sovereign Wealth Fund)で、その運用を行うのが、NBIM(Norges Bank Investment Management)。

A:運用資産残高はどのくらいなのですか。

T:2024年5月の日経によると、約260兆円。

A:GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用資産額は254.7兆円(2024年度第1四半期現在)ですので、ほぼ同規模ですね。

T:NBIMは保有する全ての個別銘柄を開示していて、71カ国の8,763社に投資。またポートフォリオのうち5%強が日本株。2023年末のデータでは約1,480社の日本企業へ投資。投資額は約11兆円(7,900億クローネ)。トヨタ自動車(7203)、ソニーグループ(6758)、信越化学工業(4063)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、日立製作所(6501)、伊藤忠商事(8001)などが主な投資先。各社の保有比率は2%前後。

A:とんでもない存在ですね。

T:ファンドのベンチマーク・インデックスは70%が株式、30%が債券で構成されている。大部分はFTSEの指数に基づいたベンチマークとほぼ同じ割合でのパッシブ投資。但し、ファンダメンタルズ分析に基づく銘柄選択も行う。よって、純粋なパッシブ運用でも、アクティブ運用でもない。

A:これだけ巨大ですと、完全なアクティブ運用も、完全なパッシブ運用もコストがかかりすぎますよね。

T:そうだね。NBIMはHPで運用戦略などの詳細も開示している。

A:日本のGPIFは年金積立金の運用ですが、NBIMが運用するファンドの資金源はどこですか。

T:NBIMが運用しているファンドの正式名称は「The Government Pension Fund Global」。北海油田が発見されたのちに、ノルウェーは急遽、大産油国になった。北海油田から原油と天然ガスの収入を保全し、将来のために有効活用するために作られたのが、このファンド。

A:運用はうまくいっているのですか。

T:2023年における株式の年間収益率は21%。時価総額でいうと、米国株は43%、日本株は25%増。2023年は日本株相場の上昇も貢献したとのこと。

A:NBIMというか、このノルウェー政府年金基金に関して、ほかにどんな特徴がありますか。

T:北欧の代表的な機関投資家ということもあり、ESGなど責任投資に力を入れている。議決権行使などを通じて世界に大きな影響を与えている。また、日本では新興の運用会社を発掘してきた歴史もある。

A:どちらも非常に興味深いです。

T:NBIMは今年2月に香港系のジャーディン・マセソンの株式売却を決定。鉱山開発が環境破壊につながるからとの理由。2016年には石炭火力発電への依存度が高い北陸電力や中国電力を外した。

A:世界的にESGは下火になってきた印象がありましたが。

T:2023年10-12月期に世界のESGファンドは初めて資金が純流出。一方、欧州では12四半期連続で資金が純流入。NBIMのCEOは「長期でリターンを向上させるには企業が環境を考えることは避けられない」と述べている。

A:次回は、日本の新興運用会社を発掘する側面のNBIMを教えてください。 
(「ノルウェー政府(下)」に続く)

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