政策保有株式または純投資よりも問題なこと
A:金融庁は有価証券報告書の開示が適正か、全上場企業を調査しますね。
T:うん。実態は政策保有株式のままなのに、純投資目的に切り替えることで、政策保有株式を見かけ上減らしている上場企業は多いから、その実体調査。
A:これは悪質ですね。いわば粉飾決算であり有価証券報告書の虚偽記載。
T:それにも関わらず、多くの企業がそうした疑わしい処理を行っている。
A:純投資であれば売買目的有価証券となり、流動資産に計上されるため、流動比率の向上につながります。実質的に現金とみなすこともでき、豊富なキャッシュがあるようにも見せかけられます。
T:にもかかわらず、実際には売却する意思がない。意思はあっても、被保有者が売却に合意せず、売るに売れない。となると、流動資産の中に流動性を失っている架空の資産が混在していることになる。流動比率が高く、財務の安定性、健全性が高いと思ったら、嘘だったということになる。
A:とんでもない不正会計のように思えます。
T:会計基準には継続処理を前提に、いくつかの方針を選べる余地が残されているけれど、保有株式の区分の差異は、そんな程度のものではない。
A:保有する額にもよりますが、インパクトが桁違いに大きいです。
T:金融庁には、こうした調査を厳格に行ってほしい。
A:嘘の区分変更を行っている企業には、重い罰も与えてほしいと思います。できれば上場廃止くらいまでに追い込んでほしいです。何しろ、会計基準、会計処理の根幹を揺るがす大問題ですから。
T:上場企業の経理、連結決算に従事したことがあればわかると思うけど、「こんなの誰が理解できるの」という細かな論点までち密に処理を重ねている。こんなことが許されれば、すべての努力が水の泡になる。
A:アクティビストにも徹底的に追求してほしい論点です。
T:政策保有株式か純投資かの違いは、会計上の見積もりを誤ったというようなこととはまったく異なる。あくまで恣意的な処理であると思う。
A:どちらかに分けていいかわからないというケースはほとんどなくて、単純に売りたくない、売ることができない。あるいは社内でまともな議論がなされておらず、ただそうなっているだけのいずれかだと思います。
T:ここで改めにわかる問題点は、売ることさえできない有価証券は、それが仮に上場企業の株式であっても、流動性が無効化されているという時点で、果たして有価証券と言えるのかということだよ。
A:なるほど。そうなると、純資産の中に含まれる含み益相当も、実は幻ということになりますね。
T:仮に、含み益相当をゼロとすれば、純資産はそれだけ減少し、PBRは上昇する。でも実際には極めて低いPBRのまま。
A:ちょっと混乱してきました。
T:このように考えると良いと思う。PBRが低いということは、一般的には割安。けれど、多くの場合、バリュートラップ。そして、地銀はその典型例で、含み益相当で純資産が膨らみPBRは低くかった。でも実は、含み益相当は流動性が無効化された幻の部分であった。つまり、本当は存在しない純資産によりPBRが低く見えていただけ。
A:つまり、政策保有株式というものは、PBRをゆがめる幻だったわけですね。政策保有株式を取り除き、その対価で自社株買いを行えば、PBRはすぐに改善する。政策保有株式の駆除が必要ですね。
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