経済指標よりも注目したい、とある企業の時価総額。
A:本年10月に事業会社で最低のPBRになった日産自動車(7201)が火の車ですね。
T:11月7日に、中間決算を公表。連結純利益は前年同期比93.5%減の192億円。同時に多数の開示を行った。「業績予想の修正に関するお知らせ」「人員削減等の合理化に関するお知らせ」「三菱自動車の株式の一部売却について」を公表。具体的には、営業利益を70%の1,500億円へ下方修正。グローバル生産能力を20%削減、グローバルで約9,000人を削減。また、販管費、製造原価も削減し会社資産も合理化。さらに提携している三菱自動車(34%保有)の10%を売却との内容。
A:本年3月には世界販売を100万台増やすと表明していました。わずか半年で正反対の結果です。
T:グローバルでの生産能力は2020年の段階では約700万台。現状は500万台弱。2割削減すると400万台弱となる。売る車がないというのだから深刻。
A:9,000人削減とはどの程度のインパクトなのでしょうか。
T:連結従業員数は約13万人。よって、約7%相当の削減規模。
A:以前にも大規模なリストラを発表していたと思いますが。
T:2019年の際は、世界14拠点における工場の閉鎖または縮小。約1.25万人の削減だった。
A:内田社長は報酬を50%返上するとのことですよね。
T:2024年3月期の内田社長の報酬は6.57億円。半減しても、3億円超。
A:キャッシュ・フローは大丈夫なのですか。
T:2024年上半期における自動車事業の純現金収支は約4,480億円のマイナス。9月末でのネットキャッシュは約1.36兆円。
A:プラス材料が見当たらず、ネットキャッシュの1.36兆円はすぐになくなりそうです。
T:何しろ下方修正は今回が2度目。3度目があってもおかしくないと思う。
A:日産は北米でハイブリッド車(HV)を投入できておらず、競争力を失ったとのことですが、すぐに売れる車を製造できるわけではないため、キャッシュが持つか心配です。
T:同感。ちなみに、2018年にカルロス・ゴーン氏が解任されたけど、他の経営幹部は当時からほとんど変わっていないというのも凄い話だと思う。
A:カルロス・ゴーン時代の指示待ちの習慣が染みついていると言われていますね。
T:それに加えて、業界関係者から日産自動車の有価証券報告書を見てみるといいと言われた。
A:日産は委員会等設置会社ですよね。それにしても、取締役の経歴が多彩というか、多様性に富んでいますね。パッとみただけで、コミュニケーション・コストが大きそうな印象です。
T:自動車業界は意思決定が非常に早い中国勢との戦い。コミュニケーション・コストの大きさは致命的。
A:ちなみに、内田社長は日産のプロパーの方ですか。
T:もともと日商岩井(現在の双日)に入社。37歳の時に、ヘッドハンティングではなく、自らの意思で日産に転職されたとのこと。
A:本年11月下旬に米MSCIの全世界株指数(MSCI ACWI)から除外されるマツダの時価総額は11月8日時点で約6,300億円。提携先の三菱自動車(7211)は約6,800億円。一方で、日産は1.4兆円です。
T:日本企業は最高益更新を続けてきた。各社の実力値が向上しているから、日本経済のファンダメンタルズは悪くないと思っていた。けれど、日産の時価総額は、今後の注目指標になると考えている。