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セブン&アイ・ホールディングス(3382)を巡る一連の動きに関して
A:今日のテーマは主にセブン&アイ・ホールディングス(3382)です。
T:その前にまず日産自動車(7201)。2月26日にFitch Ratingsが同社の格付けをダブルBプラスに引き下げた。これで海外格付け大手3社すべて(他の2社はS&P Global RatingsとMoody‘s)が投資不適格を指す「投機的等級」とした。
A:翌2月27日に伊藤忠商事(8801)は「株式会社セブン&アイ・ホールディングス買収提案に関する検討終了について」を公表しました。伊藤忠商事の離脱が報道されてからの2日間でセブン&アイの株価は1割以上下落し、創業家による対抗案(カナダのAlimentation Couche-Tardによる買収提案に対する対抗策)が明らかになる直前の株価(2024年11月上旬)を下回っています。一方、伊藤忠商事の株価は反発しました。
T:セブン&アイの創業家による非公開化案は、買収防衛策として受け止められ、成長戦略を示せなかったと言われているね。
A:「買収提案がなければ、創業家が非公開化案を出すことは絶対になかった」とも言われています。
T:本田技研工業と日産自動車の経営統合の失敗に関しても、同じような文脈で語られているよね。
A:台湾の鴻海精密工業が日産自動車に触手を伸ばしたため、経営統合の協議を急いだと言われています。そのため、経営統合が企業価値、株主価値の向上にどのように結びつくのか、説得力ある説明がなされませんでした。
T:セブン&アイの非公開化案も本田技研工業と日産自動車の件も、経営者の利害や保身が優先され、従業員、お客様、株主の目線がなかった印象。
A:セブン&アイのケースは、悪しき前例になりそうです。
T:あえて外国の企業に買収されてほしいとは思わないものの、セブン&アイの一連の行動に関しては姑息な印象が強い。そのため、セブン&アイを応援したい気持ちはあまりない。
A:セブン&アイは2024年8月に、カナダのAlimentation Couche-Tard(ACT)からの買収提案を受けていることを公表し、ACTも拘束力のない友好的な提案を実施したとコメントしました。
T:同年10月にセブン&アイは、ACTからの再提案(買収額を7兆円規模に引き上げたもの)を受領していたことを公表。また、コンビニ専業戦略を表明し、新設するヨーク・ホールディングスにスーパーや外食などを集約し分離することも発表した。
A:はい。その後すぐ、ACTの社長はセブン&アイの全事業に関心があることを表明しました。
T:同年11月にセブン&アイは創業家から買収提案を受領したと発表。伊藤忠商事などへ参画を打診したとの報道もなされた。
A:その後すぐ、今度はACTの会長が、「敵対的買収は検討していないこと」を表明しました。
T:2025年2月にヨーク・ホールディングスの株式売却にあたり、米Bain Capitalに優先交渉権を付与する見通しとの報道がなされた。同月末に伊藤忠商事がセブン&アイの創業家による買収提案への参画を断念。とりわけ、ヨーク・ホールディングスの設立は姑息な印象だよ。
A:はい。足元ではニデック(6594)による牧野フライス製作所(6135)に対する同意なき買収提案、台湾の国巨(ヤゲオ)による芝浦電子(6957)に対する同意なき買収提案も存在しています。
T:この2件は、セブン&アイのようなことにはならないことを切に願う。