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海外アクティビストによる初の追加型公募投資信託に関して

A:日本で活発に活動する代表的なアクティビストの米ダルトン(Dalton Investments)が2024年12月から、日本の個人投資家を対象にした追加型の公募投資信託の運用を始めるそうですね。

T:海外アクティビストによる個人向けの公募投資信託は初めてだと思う。

A:国内では、マネックス・アセットマネジメントが委託会社、カタリスト投資顧問が投資助言を行う「マネックス・アクティビスト・ファンド(MAF)」が有名ですよね。運用資産残高は約216億円。マネックス証券など14社を通じて販売。ちなみに受託銀行は三菱UFJ信託銀行です。

T:MAFは特化型運用の投資信託で集中投資型。米ダルトンの投資信託も集中投資型で20~30社の日本企業への投資を想定。株主提案やエンゲージメントを通じて企業価値の引き上げを目指すとのことで「還元要求で一辺倒の強行派とは一線を画し、投資先との友好的な対話を重視する」らしい。

A:MAFは交付目論見書(投資信託説明書)で「投資対象企業に対しては、エンゲージメントや提案を行い、企業価値と株主価値の中長期的な向上を目指します」と記載しています。

T:そうなると、まだ詳細は分からないけれど、新たなMAFが誕生するようなイメージだろうかね。

A:ちなみに、米ダルトンの運用資産残高はどの程度あるのですか。

T:同社HPでは本年6月末で約6,450億円(43億ドル)。米Dalton investments Inc.、英LSEに上場するNippon Active Value Fund plc(NAVF)、米NAVF Select LLCの3社が共同で大量保有報告書を提出することが良くある。これら3社がいわゆるダルトングループ。

A:ファンドの設定と運用は明治安田アセットマネジメントで、ダルトンはMAFにおけるカタリスト投資顧問のように、投資助言という形で実質的な運用を行うようですね。

T:追加型の公募投資信託ということで、気になるのは受託会社。多数の日本企業へアクティビスト活動を行うダルトンが組成するファンド。この受託銀行となる信託銀行はどこだろう。

A:販売会社に関しては、SBI証券、千葉興業銀行、丸八証券、三田証券の4社という情報があります。

T:販売会社も取り扱いには慎重になるよね。自分たちの顧客でもある企業にアクティビスト活動を行う可能性があるファンドを販売することになりかねない。受託銀行(主として信託銀行)も同じ。アクティビスト活動の活発化を受けて、アクティビスト対策指南などが信託銀行の重要なビジネスになってきている。このような中、ダルトンのアクティビストファンドの受託銀行となれば、マッチポンプ、利益相反になるかも。

A:だから、受託銀行の名前が出てきていないのだと思います。

T:ダルトン創業者のJames B. Rosenwald Ⅲ氏は「我々のようなアクティビストファンドを日本の多くの金融機関が取り扱うのは10年前では考えられなかったことで、日本企業の意識変化を感じている」と述べられている。

A:本当に凄い話です。もはや、アクティビストに過剰反応をしている時代ではなくなりました。

T:ちなみに、本年9月17日にトランコム(9058)は米PEファンドのBain Capitalと組んでMBOを行うことを発表。同社の18.09%を保有するのがダルトングループだった。ダルトングループはMBOに伴うTOBに応募し全株を売却したのだけど、ダルトングループはMBO後のトランコムの親会社の株式の14.40%を取得することになっている。つまり、アクティビストとPEファンドが連携しているようにも見える。

A:MBOやTOB後もアクティビストが存在し続けることになるわけですね。

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