クロスオーバー・ファンドを組成する新興運用会社
A:最近、非上場・上場の垣根を越えて投資する「クロスオーバー投資」あるいは「クロスオーバー・ファンド」に関する記事が目立ちます。大手だけでなくfundnote(旧社名はKxShare)という新興の資産運用会社も。2024年12月にも非上場株式にも直接投資する公募投資信託を世に出すそうですね。
T:fundnoteの非上場株の投資対象は、2年以内のIPOを視野に入れる「レイターステージ」のスタートアップ。組入割合は運用資産の5〜10%。残りの運用資産は中小型の上場株。もしかしたら、独立系の第4世代かもしれないと思い注目している。
A:昨年末に「資産運用立国実現プラン」が公表され、本年8月末には「アセットオーナー・プリンシプル」も公表されました。政府としても新興の資産運用会社を育成したい中、頼もしい存在ですね。
T:しかも、投資信託協会が本年24年2月に自主規制ルールを改正。純資産総額の15%を上限に非上場株の投信への組み入れを可能とした。こうした制度変更を即座に掴み、早速商品化するのだから、凄い会社ではないかと思っている。私募ではなく公募。そして驚くのは直販ということ。
A:私募のほうが簡単に儲かるでしょうし、直販を行うのは相当に大変ですよね。
T:直販とは信じ難いでしょ。新興の運用会社の多くはプライムブローカーに頼るヘッジファンドで運用に専念。あらゆる分野でその時代ならではの新星が誕生する。fundnoteがそれかもね。
A:先輩にしては相当な想い入れですね。
T:設立は2021年8月。創業者で代表取締役社長は渡辺克真氏。早稲田大学を卒業後、2014年に野村證券に入社。同社で様々な経験を積んだのち、小さなアパートの一室を拠点に3名のメンバーで創業。「投資し甲斐のある日本企業を見極め、個性あふれるファンドを匠と共に」というコンセプトのもと、これまではヘッジファンドを展開。投資信託をローンチすることは起業当時から目標にしてきたとのこと。
A:公募かつ直販、しかもクロスオーバー・ファンド。なぜでしょう。
T:「魅力あるアクティブファンドを直接、個人投資家に届けたいという気持ちが強くある」とのこと。
A:独立系ファンドの第1世代は、直販投信に伴う累損を解消するまでに相当時間がかかりました。
T:渡辺社長は「将来的には、自分自身が投資したいと思える運用者の運用する投資信託を複数ラインナップしていきたい」と述べている。つまり、マルチマネジャー型の資産運用会社。あるいはヘッジファンドで言えば、プラットフォーム型のヘッジファンドを目指しているようでもある。
A:直販ということは、出来たばかりのまだ小さな所帯に、販売部門も持つということですよね。
T:そう。渡辺社長はその点にも強いこだわりを持つ。自社のセールスは社内の運用者の人間性や投資哲学なども理解。けれど外部の販売会社では限界がある。また諸外国と異なり、日本ではファンド・マネージャーやアナリストの情報がほとんど公開されていない。このあたりの情報開示にも力を入れていく方針。
A:日本だけ非常識です。ぜひ業界を変えてほしいです。それにしてもなぜ、クロスオーバー・ファンドなのでしょうか。
T:2021年の創業時からクロスオーバー・ファンドに拘ってきたようで、これまでは投資事業有限責任組合(LPS)の形態で私募ファンドを運用。どうやら、この運用経験を通じて、いわゆる上場ゴールの問題(VCなどが持分を売却することで需給が悪化し株価が下降していくこと)の解消にも貢献できると考えているようだよ。
A:非上場から上場というのはあくまで通過点であり、死の谷みたいなものが存在するのは変ですよね。
T:将来のスパークス、レオス。いや、海外の巨大プラットフォーム型ヘッジファンドくらいに成長してほしいね。